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第1話 魔法少女ルナ誕生(4)

 あの扉を通った後の事はよく覚えていない。気が付けば俺は、辺り一面にピンクの花が咲き誇っている花畑の真ん中で横になっていた。


 「ここが異世界なのか?」


 俺は起き上がり辺り一面を見渡してみる。


 周囲には特に異世界らしい変わった何かは見当たらない。


 俺はとりあえず適当な方角に向かって歩いてみることにした。


 しばらく歩き続けていると底が透き通って見えるほど綺麗な水で満たされている湖についた。


 「これだけ綺麗な水なら飲んでも大丈夫そうだな。」


 俺はそう思い、水を飲もうと水面に顔を近づける。


 その時水面に映る自分の姿を見て、俺は初めて自分が転生したんだと実感する。


 「おぉぉぉ…………。これが生まれ変わった俺の姿か。」


 あまりの変わりように俺は心の底から感動した。


 水面には14歳ほどの少女の姿が映っている。髪は黒色で長さは肩にかかるくらいのショートボブ。瞳はくっきりとしていて愛嬌を感じる可愛らしいを醸し出し、それが小柄な顔に綺麗に整えられている。


 そして服装だが白のワンピースに水色のカーディガンを羽織ったThe清楚系みたいな格好をしている。


 ここまで確認して今度は自分の目や実際に体を触ってみたりして、確認できる範囲の今の自分の様子を観察する。


 髪はとてもサラサラしており、肌はぷにぷにとした柔らかい触感。胸を触ってみると男の物とは違う柔らさを感じる。胸の大きさも年相応に相応しい大きすぎす小さすぎない慎ましいサイズだ。


 そして1番気になっていた手を見る。爪にはピンクを使ったネイルが使われており、左の人差し指には、ダイヤの様な宝石を加工して埋め込まれている指輪がはめられていた。


 「まんま俺の漫画の主人公の格好だな。」


 俺は再度水面に映る自分の姿を見てそう呟く。


 そう今の俺の格好は、俺が生前書いていた魔法少女系漫画に出てくる主人公の変身前の姿にそっくりであった。その為変わり果てた自分の姿を見てもあまり驚かず、むしろ親しみやすさすら感じている。


 「これは新しい自分に少しでも早くなれる為のエーリスなりの配慮なのか?」


 俺は空を見上げそう呟く。その声を聞いて改めて、自分の声も可愛らしい女の子になっているんだなぁ気づいた。


▽▽▽


 しばらく休んだ後、俺はせっかくなんだし魔法少女に変身しようと考える。


 今の俺が俺の漫画の主人公をモチーフにしているのなら、変身のやり方も一緒なのであろう。


 俺は主人公の魔法少女になりきって変身の呪文を唱える。


 「魔法変身(マジェリーゼ)


 そう唱え指輪の宝石にキスをする。


 すると指輪から白い光が解き放たれ、一瞬にして俺の全身を包み込んだ。


 やがて光は消えていき、湖の水面には魔法少女に変身した俺の姿が映っている。


 髪の毛は明るいピンク色でツインテールに結われており、顔も細かいメイクでより可愛らしく仕上げられ、両耳にはハート型の宝石が付いたイヤリングが着いている。


 服の方もピンクをベースにしたフリフリのミニスカドレスで、ヘソの所だけ切り抜かたメルヘンチックでとても可愛らしい。


 体の方も若干大人び、見た目は16歳ほどであろう。スタイルも変身前より断然良くなっている。


 靴はシンデレラに出てくるような綺麗なガラスの靴を履いており、ヒールタイプの靴なのに歩きにくさを微塵も感じさせない。


 そして最後に腰のところには魔法の杖ならぬ魔法少女のステッキが差し込まれていた。


 一通り魔法少女に変身した自分の姿を見て、


 「うん。予想通り変身方法も変身後の姿も一緒だな。」


 俺はこの結果に満足し、自分の姿を水面を通して見つめながら上機嫌に鼻歌を歌う。


 しかしその直後、


 ドドーン


 と遠くの方から爆発音の様なものが聞こえた。そして湖の右手にある森の方を見ると黒い煙が立ち上っていた。


 「おっ!早速イベント発生か?」


 俺は内心ワクワクし、様子を見に行こうと決める。


 「歩いていくのも面倒だし飛んでいくか!」


 俺はそう考え1回その場で目を瞑る。


 実は魔法少女に変身してから、自分の内からエネルギーの様なものを感じていたのだ。原作通りなら、この感じるエネルギーこそが俺の魔力なのだろう。そして魔力はわりと自分の意思で既に操れそうな状態だ。


 俺は魔力を自分の背中に集中させ、そのまま魔力の具現化を試みる。


 するといとも簡単に翼を作り出すことが出来た。


 上手く飛べるかなと不安に思ったが、それも杞憂に終わり、翼はまるで自分の体の一部みたい動かすことが出来た。


 俺は翼を動かして10メートルほど宙に浮いてみる。


 「おぉぉぉ、スゲェ!」


 初めての飛行に俺はテンションが上がり、


 「さて、音のした方へと向かいますか!」


 そう呟き、俺は煙が立ち上っているところに向かって移動を開始した。


▽▽▽


 「はぁ、はぁ……、もうなんなのよ!」


 森の中を必死で走りながら私はボヤく。


 走りながら後ろを振り返ると、変わらずゴーレムが暴れながら私の後を追いかけてきている。


 「ヤバいヤバいヤバい!」


 だんだんゴーレムとの距離が縮まってきている事に焦り、私は走るスピードを更に上げようとする。


 私みたいなエルフ族にとって森はホームに近い環境なので、森の中を走り回る事自体はそれほど苦ではない。


 しかし暴走するゴーレムの攻撃を躱しながら逃げるとなれば話は別だ。


 ゴーレムが時たま放つレーザは速度はそこまで早くは無いものの威力は凄まじい。一発でも直撃すれば私の体は吹き飛ばされてしまうはずだ。


 「もうどうすればいいの!」

 

 このまま逃げ続けていても埒が明かない。かといって今の私にはあのゴーレムを止める手段がないのだ。


 そもそもこの森には、薬草の原料となる癒し草を採取する為に来たのだ。なので今の私は、採取した癒し草を入れた籠と何かと便利な小型のナイフしか持っていない。こんな装備では当然ゴーレム相手には何の役にもたたないのだ。


 それ以前にこの森は我々エルフの一族が管理している、魔獣や危険な植生物が存在しない神聖な森だ。なぜこんな所にそもそもゴーレムがいるのか。


 「……まぁ、心当たりはあるんだけどね。」


 と大体の原因に目星をつけつつ、どうして今日に限って1人で来てしまったのかと後悔する。とはいってもこの異変に気づいた仲間達が助けに来てくれると信じ、逃げ続けるしか今はない。


 レーザにさえ気を付ければ、逃げることはそこまで難しくはない。スピード上げてからはゴーレムとの距離は広がらなくとも縮まることもないので、救援が来るまでは何とか持ち堪えられそうだ。


 「ふん、エルフの私を舐めるんじゃないわよ!」


 ある程度余裕が生まれてきた為か、私はそう息巻く。


 その時だ、


 ダンっ


 と発砲音の様な物が聞こえ、次の瞬間私の右足に激痛が走った。


 「!?ガッ……」


 突然の痛みに私は転んでしまう。


 右足からは血がドロドロと流れ、あまりの痛さに動かす事も出来ない。


 その間にもゴーレムは私に近づいてくる。


 やがてゴーレムは私の目の前で立ち止まると、私を見下ろし、レーザを撃つ為のエネルギーを貯め始める。


 「い、嫌…………、やめて、お願い!」


 一瞬で絶望に追い込まれた私は声を震わせながら、足を引きずりながら後ずさる。


 それでもレーザの射程範囲からは抜けれないだろう。


 やがてゴーレムが集めていたエネルギーは綺麗な円形にまとまった。それは即ちレーザ発射の準備が整った合図である。


「だ、誰か!誰か助けて!」


 私は泣きながら助けを求めた。しかしその声に答える者はいなかった。


 そしてゴーレムはレーザの照準をきっちりと私に定め、レーザを撃った。


 「………………………………くっ!」


 私は死を覚悟し目を閉じた。


 その瞬間


 「魔力弾ショット


 という声がどこからが聞こえ、私に向けられたレーザが何かと相殺された。


▽▽▽

 「ふぅ……、何とか間に合ったかな。」

 

 煙が立ち上っていた場所に向かって移動していたところ、女の子が何かに襲われている場面を目撃し、俺は咄嗟に魔力弾(ショット)を放った。


 魔力弾(ショット)を直撃した何かは衝撃でそのまま倒れ込み、その様子を見て俺は地上に降り立った。


 「あ、あなたは?」


 「うん?ただの通りすがりの魔法少女さ。」


 襲われていた女の子が、俺の方に顔を向け尋ねてきたので俺はステッキ片手にウインクをしてあざとく答えた。


 女の子は「魔法少女?」と聞き慣れていない言葉を聞いた時のようにオウム返しをし、


 「あ、ありがとうございます!お陰様で助かりました!」


 と頭を下げてきた。


 女の子は綺麗な緑色の髪に水色の瞳、そして耳がおとぎ話に出てくるエルフの様な形をしており、かなりの美人である。


 「お礼を言うのはアレを何とかしてからだよ。」


 俺は視線を反対に向ける。魔力弾(ショット)を食らった何かは「ギィ……」と耳障りな音を出しながらゆっくりと立ち上がっている。


 「あれは一体なんなんだ?」


 俺は視線を外さずに、後ろに座り込んでいる女の子に尋ねる。


 「あれは魔力兵器のゴーレムよ。岩石に魔力を注入し、敵を倒すようにプログラムされているものなの。」


 「ゴーレムか……。」


 ゲームなどで聞き馴染みのある言葉が出てきて、俺は思わず笑ってしまう。本当に前世とは別の世界なんだな。


 「それで、そのゴーレムとやらはぶっ壊せば止まるのか?」


 「いや、いくら表面の岩石を壊してもすぐに回復してしまうわ。ゴーレムを完全に止めるには体内にある魔力のコアを破壊する必要があるの。」


 「なるほどね……。」


 つまり簡単な話だ。


 「コアごと破壊する攻撃をすればいいんだな!」


 俺はそう叫び、ステッキに魔力をどんどん集中させる。


 やがてステッキの先端から魔法陣が出現し、その中心から渦巻き状の魔力を放出する。やがてその魔力は凝縮され、ステッキの先端に吸収される。


 「表面の硬い岩ごとコアを撃ち抜け!螺旋魔力弾(スパイラルショット)


 俺がそう唱えるとステッキの先端から、螺旋状に凝縮された魔力の塊が放出される。螺旋状になっている為この魔力弾(ショット)は貫通力が強く、硬い岩など無かっかの様にゴーレムの体内を突き抜けた。


 しっかりとコアも打ち抜いたのであろう、体の中央が空洞になったゴーレムは倒れ、やがてただの岩へと戻っていった。


 「まぁ、こんなものか……。」


 俺はその様子を見届け、女の子の方に振り返る。


 「とりあえずこれで大丈夫かな?」


 「す、凄い……。あのゴーレムを一撃で倒すなんて。……………………あなたは何者なの?」


 女の子は再度俺に尋ねる。


 「おれ…………。」


 俺は魔法少女と言おとした寸前で、今の俺の容姿で一人称俺はおかしいよな。ていうか女の子っぽい話し方をしないと、と思い、


 「私はルナ。魔法少女のルナよ!」


 と俺の漫画の主人公の名前を貰い、自己紹介をする。


 

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