第5話 聖王国ラミーリア(9)
ギルドで聖なる魔法少女隊として冒険者登録を済ませた俺達は、その後もセリュスさんの案内でラミーリアの観光を続けた。
様々なお店や屋台が並ぶメイン通り、ラミーリアで生活する人々の家々がある居住エリア、一般兵が訓練をする訓練所など色々な所を案内させてもらったが、そのどれもがこの世界で見たどこよりも立派な物であり、ラミーリアがこの世界最大の国だと言うことを改めて実感する。
そうして下層エリアを観光し始めて3〜4時間は過ぎただろうか。太陽もちょうど真上に昇り、お昼時の時間もあってか、周囲のレストランは賑わい始める。
「いい時間だし私達もお昼にしない?」
「賛成!私も歩き回ったからお腹ペコペコだよ!」
俺がそう提案するとリーシャは待ってました!と言わんばかりに手を挙げて俺に同意する。
「では私達もどこかお店に入ると致しましょう。……セリュス様、この辺りでオススメなお店はありますか?」
俺とリーシャの反応に苦笑いを浮かべながらも、フォーリアはセリュスさんにそう尋ねる。
「そうですね……。この近くに人気のレストランがあるのでそちらに……」
と言ったところで、セリュスさんは突然口を止め頭に手を添えて目を閉じた。
どうかしたのかな?と思い待つこと1分程、
「突然申し訳ありません、一旦昼食は後回しにして関所まで来て頂けますか?」
と申し訳なさそうな表情を浮かべて俺達に頭を下げながらそう言ってきた。
「だ、大丈夫ですから!頭を上げてください!」
いきなりメイドさんが頭を下げ出したので周りから注目を浴びることになってしまったので、俺は急いでセリュスさんに頭を上げてもらうよう言った。
「それでどうかしたんですか?」
と俺が尋ねると、
「ルキアート様より要件が終わったが、ちょうどお昼時なので一緒にご飯を食べよう、なので中層エリアのいつものお店にお連れしろとの事です」
と小さい溜息を吐いてセリュスさんはそう答えた。
「ま…まぁ、そういうことならとりあえず行きましょ?」
セリュスさんの疲れた様な溜息に色々と察したのか、先程までお腹が空いたと言っていたリーシャも気を遣ってそうセリュスさんに言った。
「お気遣いありがとうございます。ではこちらにお願いします」
とまたペコリと俺達に軽く頭を下げ、歩いてきた道と逆方向を向き歩き始めた。
「あれ?そういえば元々ルキアートの方がこっちに来る予定じゃなかったっけ?」
俺が不意に思った事を口にするとセリュスさんは、
「…………ルキアート様はその時々で思った事をそのまま行動される方なので…………」
と先程よりも大きな溜息を吐いてそう言った。
その後ろ姿に日頃から苦労してるんだなと感じた。
▽▽▽
下層エリアの関所に着いた俺達は、引き続きセリュスさんの案内の元中層エリアへの入口へ向かった。
中層エリアへの入口は関所の真後ろにある崖の麓にある様で、俺達は関所をぐるっと迂回し、その麓へと歩いて行く。
「ここが中層へのゲートとなります。守衛の方に話して来ますので少々お待ち下さい」
セリュスさんは俺達にそう言うと麓にいる守衛らしき兵士の元へ歩いて行く。
「すっごく高いわね……。どうやって上に行くんだろ?」
とリーシャが崖を見上げながらそう呟く。
俺もつられて見上げてみるが、正直中層までが高すぎてよく見えない。ざっくりだが数百メートルはありそうだ。
「皆様お待たせ致しました」
守衛への話を終えたらしいセリュスさんがこちらに駆け寄って来た。
「それでは中層エリアへご案内致しますのでこちらへお願いします」
そう言ってセリュスさんは麓の方を指差しまた歩き始める。
俺達はセリュスさんのあとを追い、崖の麓に着いたところでセリュスさんと共に立ち止まる。
「なにこれ?」
リーシャが下を見つめながらそう呟いたので、俺も地面に目をやる。
先程までは上の方にばかり注意が引かれて気が付かなかったが、何やら地面に魔法陣の様な物が描かれている。
「これは下層エリアと中層エリアを行き来する魔道具です。…………では移動しますので、この円から出ないでください」
そう言うとセリュスさんは目を閉じ、
「〜〜〜〜〜〜」
と聞き取れない位の小声と早口で何かを口にした。
すると間もなく魔法陣から白い光のようなものが生まれ、そして光が消えた頃には先程とは全く違う景色が目の前に広がった。
「お待たせ致しました。こちらが中層エリアとなります」
とセリュスさんは笑いながら俺達にそう言った。