第5話 聖王国ラミーリア(8)
「えっ!冒険者登録ですか?」
と俺はテンション高く聞き返す。
「あぁ、嬢さん達がどのくらいこの国に滞在するのか知らねぇが、もし今後この国で活動していくなら登録しておいて損は無いと思うぜ」
とランウェイさんが話した。
「私達と同じ様に冒険者として活動するも良し、傭兵として国の雇われ兵士になるも良し、国の正式な兵士として活動するも良し、あくまでグループとして登録するって話だからそこまで難しく考える必要も無いわよ。それに冒険者登録にグループとして登録しておけば、国外で活動する時も何かと便利になるわよ」
とレミィさんがウインクしながら補足の説明をしてくれた。
「それって私達でも登録できるの!?」
と一緒に話を聞いていたリーシャもかなり興味を持ったのか、かなり食い気味に質問してきた。
「そんなに手間はかからないぜ。そこの受付で名前と登録費さえ払えばそれで終わりだよ」
とリスタンさんが教えてくれた。
「じゃあ私達も登録しましょうよ!」
と話を聞き終えたリーシャが俺の腕を掴んで受付の方を指差しながらそう息巻く。
「私はおっけーだけど二人はどう?」
と俺はフォーリアとロゼの方を見て尋ねる。
「私は構いませんよ」
「俺も特に問題は無いぜ」
と二人とも冒険者登録を承諾してくれた。
「よし!それじゃあセリュスさん、私達でちょっと冒険者登録してきてもいいかな?」
「えぇ、どうぞ」
と俺はセリュスさんに一言言って、俺達は受付の所へ向かった。
▽▽▽
「話はここから聞かせてもらいました。冒険者登録でよろしいですね?」
と俺達が受付に着く途端に受付のお姉さんは笑顔で聞いてきた。
「はい、お願いします!」
「それじゃあ、まずはこの紙にそれぞれのお名前をお書き下さい」
と言って紙を出してきたので俺達はそれぞれ自分の名前を書いた。
そして書き終わったタイミングで、
「ではそちらの紙の右下にある枠を指で触れて下さい」
とお姉さんは紙の右下にある小さな枠を指差してそう言った。
俺達はお姉さんの言われた通りに、それぞれその枠に自分の指をかざす。すると指から一瞬光が生じ、光が消えると指をかざしていた枠の中にそれぞれ何かの紋章の様なものが浮き上がっていた。
「これは?」
俺がお姉さんに尋ねると、
「この紙は不正登録を防ぐ為に登録者のエネルギーの一部をコピーする魔道具の力を付与されているんです。このエネルギーは一人一人違うものなので誤魔化す事は出来ませんし、例え家族や双子であっても同一になる事は有り得ませんので、以降の本人確認の手段にとても役に立つんです」
とお姉さんが説明してくれた。
|(俺の世界で言う指紋とかDNAみたいなものかな?)
と俺は一人納得したような気でいたが、こう言ったことに慣れていないのだろうリーシャはオロオロしながら自分の指を見つめていたし、フォーリアも「どういった仕組みなのでしょうか」と興味深そうに紙を眺めていた。
|(でも本当に一人一人紋章が違うものなのか?俺にはどれも同じ様にしか見えないけど……)
と俺は不思議そうに俺達の四人の紋章を見比べる。
その様子にお姉さんは気付いたようで、
「あぁ、この紋章はパッと見じゃ区別出来ないようになってるんですよ。他の人が紋章を見て覚えて不正に利用されないように。ですのでこちらの別の魔道具を使って判別するんです」
そう言ってお姉さんは胸元のポケットから小さいレンズの様なものを取り出した。
そうしてお姉さんはレンズ越しに俺達の書類をそれぞれ確認し、そして|一瞬ニヤッと口角をあげ《・・・・・・・・・・・》、
「はい、問題ない様なのでこのまま受理させて頂きますね」
と再び笑顔で俺達にそう言った。そして続けざまに、
「ではこのままグループの登録に入りますね」
と言って別の用紙を取り出した。
「こちらには活動するグループの名前とメンバー、そしてグループのリーダーを記載のうえ、もう一度メンバー全員の紋章を登録して頂きます」
とお姉さんは用紙に書く必要事項を説明し俺達にその用紙を渡す。
とりあえず俺達はそれぞれの名前の記入と紋章の登録を済ませる。
「後はグループ名とリーダー決めだね」
と俺が言うと、リーシャは不思議そうな顔をして、
「え?リーダーはルナさんでしょ?」
とさも当たり前のように言ってきた。
「ちょっ、ちょっと待て!何でそうなるの!?」
俺は慌てて反論をしたが、
「だって私達はルナさんに導かれてここまで来たんだし、ルナさんがいるからこれからも一緒に旅をするのよ?」
とリーシャが言い、
「まぁ、ルナ様がリーダーなのは明白ですね」
とフォーリアが言い、
「それにルナがこの中で一番強いしな!」
とロゼが言った。
どうやら俺以外のメンバーは俺がリーダーをやる事で満場一致らしい。こうなったら俺が何を言ったところで変わらないだろう。
「……じゃあリーダーは私がやるわね」
俺はそう言って用紙のリーダー欄に自分の名前と紋章を登録する。……まぁ、実際のところみんなから信頼されているのが改めて分かったので、リーダーを任されたことは嬉しかったりする。
「となると後は俺達のグループ名だな」
とロゼが手を顎にかけながら考える。
「フォーリア、何かいい案ある?」
「急に振られても困りますよ……、私は皆さんが決められた名前なら何も異論はありませんよ」
とロゼの言葉にフォーリアはそう返す。それにロゼはニヤッと笑い、
「それじゃあ"いと麗しいフォーリア団"って言うのは…………悪い悪い冗談だ」
とフォーリアがレイピアに手を触れたところでロゼは慌てて訂正をする。
|(それにしてもロゼとフォーリアの奴、意外と仲良さげだよなぁ)
とそんな様子を眺めながら俺はそう思った。まぁ、本人たちに言ったら否定されそうだから口には出さないけど……。
「あの……、私いい名前の案があるんだけど」
とリーシャが珍しく控えめに手を挙げてそう言った。
「なに?聞かせてよ!」
俺がそう言うと、リーシャは恥ずかしそうに
「"聖なる魔法少女隊"ていうのはどうかな?」
とリーシャは提案した。
「良いんじゃないですか?ルナ様がリーダーのグループに相応しい名前かと」
「聖なるっていうのがカッコイイな!俺もそれで良いぜ」
とフォーリアとロゼは納得のようだ。
「ルナさんはどうかな?」
とリーシャは俺の方を見て尋ねる。
ぶっちゃけ言うと恥ずかしい。だって自分で聖なる魔法少女って名乗るもんだし。
|(……でも、厨二心はくすぐられるな!)
「うん!私もいい名前だと思うよ!リーシャ!」
と俺は笑ってリーシャに答えた。
こうして俺達四人は"聖なる魔法少女隊"として冒険者登録を済ませた。