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第5話 聖王国ラミーリア(6)

 ラミーリアでの初日は、関所での手続きをした後に宿で休んで終わった。


 次の日、俺達はそれぞれの部屋を出て、宿の1階にある食堂で1度集まり、四人で朝食を食べながらこの後の予定を話し合った。


 「とりあえず昨日のお姉さんの話だと、謁見が出来るまでそれなりの時間がかかるみたいだから、それまではこの宿を拠点に生活するって方針はいいよね?」


 俺は朝食のパンを食べながらみんなに尋ねる。今日の朝食は焼きたてのパンに野菜のスープ、それにサラダと卵の炒め物的な物が並んでいた。簡素的な見た目だが、良い宿ということもあり味は全て絶品だった。


 「そうですね。……とはいっても私達はこの国の事をまだよく知りません。単独行動は避けた方がよろしいかと」


 「そうだな。なるべく俺達は4人で固まって動いた方が良いと俺も思うぜ」


 とフォーリアの発言にロゼものっかる。


 「でも折角ならこの国をゆっくりと見て回りたいわねぇ……」


 とチラチラとこちらを横目で見ながらリーシャが言ってきた。


 「それは私も同感。どうせこれといってやる事も無いんだし、謁見の準備が出来るまでは四人でこの国の観光をしても良いんじゃない?」


 と俺もリーシャの意見に乗っかる。


 しかしそんな和気あいあいとしている俺とリーシャを横目に、フォーリアとロゼは少し顔をしかめて互いに見つめ合っていた。


 「?2人ともどうかしたの?」


 「あぁ、いえ……」


 俺の言葉にフォーリアは何とも気難しそうな表情を浮かべたが、


 「そうですね。折角聖王国に来たのですら、色々と見て回るのも悪くないかもしれませんね」


 と直ぐに表情を明るくしてそう答えた。


 その様子を俺は少し不思議に思ったが、


 「それじゃあ朝食を食べ終わったら4人でぶらぶらと歩き回ってみようぜ!」


 「やったー!」


 とロゼの言葉にリーシャも手を叩いて喜び、


 「楽しみね!ルナさん!」


 「そ、そうだね!」


 とリーシャの反応に釣られ、俺は先程のフォーリアの様子はひとまず置いておくことにした。


 さて、とりあえずは今日の方針は決まり、まずは朝食を食べ終えようと手を動かし始めた時、


 「恐れ入ります」


 と宿主さんが俺達のテーブルの方へ来て話しかけてきた。


 「いかがされましたか?」


 とフォーリアが宿主さんに尋ねると、


 「お客様方に用件があるという方がお見えになっております」


 と言って1人のメイドを連れてきた。


▽▽▽

 「お初にお目にかかります」


 そう言ってそのメイドさんは俺達の方へ1歩歩み寄り、深々と一礼をする。


 「ええーと、どちら様でしょうか?」


 俺が尋ねるとそのメイドさんは、


 「(わたくし)聖騎士ルキアート様に仕える、

メイドのセリュスと申します」


 と顔を上げて名乗った。


 セリュスさんはオーソドックスなメイド服を身に着け、薄紫色の腰までの長さはある髪の毛を純白のヘッドドレスでまとめ、そして眼鏡とザ・知的メイドって感じの人物だ。


 |(うわぁ〜、絵に書いた様なメイドさんだなぁ〜)


 と俺はセリュスさんの容姿に思わず感動してしまった。


 …………ただ一点、腰にぶら下げている二本の細剣は凄く気になるが。


 「それで、セリュスさん?ご用件というのは?」


 と俺はセリュスさんに尋ねる。


 セリュスさんは俺の方に顔を向け、


 「貴女がルナ様でございますでしょうか?」


 「あっ、ひゃい!そうですけど……」


 逆にセリュスさんに質問され、思わず俺は裏返った声で返してしまう。


 |(何だろう……、この人少し怖いかも、凄い真顔だし、声も少し低いし……)


 と俺は少し身構えてしまう。因みに俺の裏返った声を聞いてリーシャとロゼは必死に笑いを堪えているのが横目でしっかりと見えていた。


 「そんなに身構えなくても大丈夫ですよ……。私ってそんなに怖いですか?」


 とセリュスさんは突然そう言ってショボーンとしてしまった。


 「私って何故か周りの人によく怖がられてしまうんですよね……」


 と更にどんよりとしたオーラを出し始めた。


 |(えぇ〜……、どうすればいいのコレ?)


 俺は困って頼れる仲間達に目を配らせるが、三人とも、


 自分で何とかしろ!


 と言ってるような視線で返してきた。……頼りにならねぇ〜。


 仕方なく俺は、


 「えーとセリュスさん?初めてメイドさんを見たので少し驚いただけで、決して怖がったわけではないですよ!」


 と俺は声をかけた。


 俺の言葉に、


 「…………本当ですか?」


 とセリュスさんは尋ねてきたので、


 「ホントホント!」


 俺は強く頷いてそう答えた。


 やがて落ち着いたのか、セリュスさんは「コホン」と咳払いをし、


 「失礼致しました。主人であるルキアート様の命により、ルナ様方御一行を迎えに参りました」


 「迎えに?」


 セリュスさんに俺は聞き返す。


 「はい、ルキアート様の元へ昨晩、ルナ様が下層エリアにいらっしゃったと連絡が入り、直ぐに歓迎するよう言われたのです」


 とセリュスさんは説明してくれた。続いて、


 「ルキアート様は後ほど下層エリアにいらっしゃるようなので、それまでの間は私がこのエリアのご案内をしようと思い、朝早くではおりますがお邪魔させて頂きました」


 と嬉しい提案もしてくれる。


 「それは嬉しいです!ちょうど私たちご飯を食べ終えたらこの国を見て回ろうと思ってたんですけど、まだ来たばかりなのでどこに何があるのかも全く分からないんです。そんな中、色々と案内をして頂けるのはとてもありがたいです!」


 と俺はセリュスさんに伝えた。


 リーシャも「うんうん!」と何度と頷きながら賛同し、フォーリアとロゼも1度目を合わせ頷き合い、


 「よろしくお願い致します」


 とフォーリアが言い、それに合わせてロゼもぺこりと頭を下げた。


 「では皆様方の準備が出来ましたら出発致しましょう」


 とセリュスさんは礼をしてそう言った。


 となると急いで残りを食べないとなぁと思い、俺達はそれぞれ残りの朝食に手をつけ始めると、


 「あぁ、急いで食べなくて大丈夫ですからね?」


 とこちらを真顔で見つめながら少し低いトーンでそう言ってきた。


 |(いや!だからそれが怖いよ!?)


 俺は心の中でそうツッコんだ。


 因みに食事を終え部屋に戻る途中、他の三人も少し怖かったと言っていたのはセリュスさんには内緒だ。



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