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第5話 聖王国ラミーリア(5)

 「疲れたぁ〜」


 部屋に入るなり俺は目に入ったベットにダイブする。


 ここは先程関所でお姉さんに紹介された宿屋だ。主に中層・上層エリアに用がある来賓客が準備出来るまでに使う宿泊施設なので、一般的な宿屋よりもそれなりに豪華な宿であった。


 「あの人、ルキアート様の話になった途端人が変わったようになったからねぇ」


 と私がダイブしたベットに腰を掛けながらリーシャが苦笑いを浮かべてそう言った。


 「それにロゼさんが話に加わってから、更に二人で盛り上がってたしねぇ……」


 「ホントだよ!」


 リーシャの言葉に俺はベットから顔を上げ、リーシャの方を向きそう言った。


 お姉さんによるルキアートの熱弁に、同じくルキアートを尊敬しているロゼも話に加わり、俺やリーシャ、フォーリアそっちのけで二人で盛り上がっていたのだ。その為俺達は約1時間、ただ2人の会話を聞いているだけの時間を過ごした。


 「でもひとまずはこの先の予定がちゃんと決まって良かったわね」


 とリーシャが笑いながらそう言った。


 「そうだね。もしルイスさん達の紹介状が無かったら、私達この国に来て途方に暮れていたかもね」


 と俺は返した。


 実際にこの国で聖王様との謁見が許されるのはこの国の上層部の人間と、他有力者からの口添えがあった者位みたいだ。もしハミネ町に寄らず真っ直ぐ聖王国に向かっていたら、俺達は詰んでいたかもしれないのだ。その点ロゼと森で出会い、ルイスさんとルキアートから紹介状を貰えたのは幸運だったのであろう。


 「変なトラブルも何回かあったけど、何とかここまでやって来れたね」


 「そうね。でもそれもこれも全てルナさんがいたからだと思うわよ」


 「そんな事ないよ。むしろ私の方こそリーシャにフォーリア、それにロゼが仲間になってくれたから、こんな順調にやってこれたと思ってるよ」


 「ふふ、考えることはお互い様ね」


 と俺とリーシャは笑いながらそんな会話をした。


 「そういえばフォーリアとロゼは仲良くしてるかな?」


 と俺は隣の部屋があるであろう壁を見てそう呟いた。


 この宿は基本的に2人用の部屋しか無いらしく、俺達は4人組の為必然的に二部屋に分けられたのだ。その時に宿主から、


 「とりあえず部屋は男女別々という形でよろしいですかね?」


 と言って俺とリーシャ、フォーリアとロゼに分けさせたのだ。


 「あの時ナチュラルに男扱いされてフォーリアは落ち込んでたけど大丈夫かな?」


 「ま、まぁ、フォーリアも一応は慣れてきたとは思うけど……」


 とリーシャは苦笑いを浮かべながら俺と同じく隣の部屋の方を見た。


 因みにそんなやりとりがあった中、ロゼ1人は必死に笑いを堪えていたので、向こうの部屋で一悶着が無ければいけどと俺は思っていた。


▽▽▽

 「おーいフォーリア、大丈夫かー?」


 宿主から部屋割りをされて以降、少し落ち込んでいるフォーリアに俺は笑いそうなのを堪えながら尋ねる。


 「気にしないでください……。この旅を始めてからもう何回もこんなやり取りをしてきたので、ある程度は慣れました……」


 とフォーリアは部屋にある簡易的なソファーに座りながら苦笑いを浮かべてそう答えた。


 「お、おう……」


 俺はとりあえずそう返したが、全然フォーリアの様子は大丈夫そうに見えない。


 何となく気まずい空気が流れているので、俺は何とか話題を作ってこの状況を打破しようと考えた。


 「そういえば実際に始めてこの国に来てフォーリアはどう思った?」


 とりあえず手短な質問を俺はフォーリアにしてみる。


 フォーリアは俺の方に視線を向け、


 「そうですね……、私は馬車を運転しながらだったのでそこまで隅々とこの国を見れたわけではないのですが……、それでもこの国の規模の大きさと凄さは肌で実感しましたね……」


 とフォーリアは答えた。そしてその直後、


 「でも気になることが1つ……」


 と前置きを言って、


 「基本的に国民のほとんどが活気づいておりましたが、ごく一部の人々からは絶望とか恐怖といったもの凄い負の感情を漂わせている人もいましたね」


 「……フォーリアも気づいてたか」


 「ロゼ殿も感じていたのですね。この国に住むのはいわば勝ち組と呼ばれる人達。それはこの下層エリアでも変わらない筈だと思っていたのですが……」


 「それと気づいてたか?そんな負の感情を纏っていたのは大半が人間じゃなく亜人だった」


 と俺は顔をしかめてそう言った。


 「そうでしたか……。そこまでは分かりませんでしたが、それなら何となく納得はできますね……」


 「あぁ、ラミーリアは人間の国では頂点になる国だ。そんな国では人間じゃない亜人は住みづらいだろうな……」


 「ではどうしてそんな亜人の方々がこの国にいらっしゃるのでしょう?」


 とフォーリアがもっともな質問をしてきたが、何となくフォーリアも察してはいるようだ。


 俺はため息をついて、


 「奴隷……と考えるのが妥当なのかもな……」


 「やはりですか……」


 と俺の言葉にフォーリアも頷く。そして、


 「でも確か奴隷制度っていうのは……」


 とフォーリアが尋ねてきたので、


 「あぁ、奴隷制度及び人身売買は御法度とされている。」


 と俺は答えた。


 昔は奴隷制度もあったらしいのだが、今では奴隷制度は撤廃しているはずなのだ。


 「この国は特別なのか、はたまた亜人の奴隷は問題ないのか……、まぁそもそもあの聖騎士亜人達が奴隷と決まったわけじゃないから何とも言えないけどな」


 と俺は答えた。


 「そうですね……。それでも……、」


 とフォーリアは俺の方を真剣な眼差しで見て、


 「お嬢様とルナ様の身の安全を私達で守らなければなりません」


 と強く言い放った。


 その言葉に俺も、


 「そうだな……。俺たちの方であの二人を気にかけていかないとな」


 と俺も頷きながら、フォーリアの考えに同意した。

 

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