表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/184

第5話 聖王国ラミーリア(4)

 関所の中には大勢の役人が慌ただしく仕事をしており、外見だけでなく中も前世でいう役所そのものであった。


 とりあえず俺達はルイスさんとルキアートの書状を渡せば良いと思うのだが、如何せんこういった場所は初見だとどこに何があるのかが分からない。


 一応ロゼの方をチラッと見てみるが、ロゼも肩を竦め、どこに持って行けば良いか分からないと仕草で表す。


 仕方が無いので近くの職員に聞いてみようと周りをキョロキョロしていると、


 「どうかなさいましたか?」


 とたまたま俺達の近くにいた女性の職員さんが声を掛けてきてくれた。


 「あっ、すいません。聖王様との謁見の取り付けをしたいんですけど……」


 「は、はぁ……」


 俺の言葉にその職員のお姉さんは怪しげに俺達を見る。


 まぁ、見ず知らずの少女にいきなり「王様に会わせろ!」って言われたら身構えるよなぁ。


 「えっと、これ、紹介状です」


 と俺はルイスさんとルキアートの書状をお姉さんに渡した。


 「失礼しますね」


 お姉さんはそう言って俺から二枚の書状を受け取り、ひっくり返してそれぞれ誰からの紹介状なのかを確かめ始めた。


 そして書状の裏に書かれた名前を見てお姉さんは「えっ!?」と大きな声をあげて目を丸くし、


 「る、るるる、ルキアート様から!?」


 と信じられないものを見たかのような驚き様で大声を出した。


 その声に周囲の人々も反応し、


 「ルキアート様って、あの聖騎士様の?」


 「何あの娘?炎帝様のお知り合い?」


 とヒソヒソ話を始めている。


 一気に周囲の注目の的になって気恥ずかしくなったが、お姉さんの返答を待たなきゃいけないので俺は少し顔を下向かせ、お姉さんの様子を伺った。


 「このサイン、間違いなく聖騎士ルキアート様の物ね。それにもう一枚もハミネ町の領主であるルイス・ハミネ様からね……」


 そうブツブツと呟きながら、お姉さんはじっくりと書状が本物かどうかを確かめる。


 やがて二枚の書状が本物だと判断したお姉さんは、


 「大変失礼致しました。それでは手続きをいたしますのでこちらへ来て頂けますか?」


 と言いながら深々とお辞儀をし、奥のブースを示してきた。


 「分かりました」


 そう言って俺は1度お姉さんから書状を返してもらい、俺達はお姉さんの後を着いて行った。


▽▽▽

 「それではこちらにお座りになって少々お待ちください」


 お姉さんは俺達を専用の受付スペースへと案内し、奥へと消えていった。


 とりあえず俺達は言われた通りに受付席へと座り、お姉さんを待つ事にした。


 そしてお姉さんは5分程で何やら書類を手にして戻って来た。


 「お待たせ致しました。それではこれから聖王様の謁見願いの手続きに入りますね」


 と言って俺たちを見る。


 「まずはあなた方のお名前をこちらの用紙に記入をお願いします」


 そう言ってお姉さんは俺達にそれぞれ用紙を渡した。


 俺達はお姉さんに言われた通りに用紙に簡単に名前を記入する。


 それぞれが書き終わったタイミングでお姉さんが回収し、


 「本来は名前や出身地、職業など細かく記載して貰った上で、上で審査をし、その審査を通って聖王様が会うとお決めになった方のみ謁見が許されるのですが、今回は聖騎士ルキアート様とハミネ町領主ルイス・ハミネ様両名からの紹介状がありましたので、簡略的な手続きとなります。謁見もほぼ確実に行えると思いますよ」


 とお姉さんが説明してくれる。


 その言葉に安堵し、俺達はホッと一息着いてお互いを見渡した。


 「あっ、でも一応お伝えしますが、こちらの紹介状がありましても直ぐに謁見が出来るという訳ではありません。こちらの紹介状を上層エリアにお届けし、聖王様のご都合が合い次第となりますので、恐らく1週間~十日ほどかかると思われます。」


 とお姉さんが補足説明をする。


 その説明を聞いて、


 |(そりゃあこの大陸一位の王国の王様だ。そう簡単には会えないよな)


 と納得したので、


 「大丈夫ですよ!それほど急いでる訳でもないので。それまでの間この国をゆっくり見て回ろうと思います」


 と俺はお姉さんに伝えた。


 「ご理解頂けてありがとうございます。……つきまして、ルナ様方には当国で聖王様との謁見待ちの方専用の宿へとご案内します。そこで謁見の目処が立ち次第宿主よりルナ様方へお伝えしますので、よろしくお願い致します」


 と言ってお姉さんは俺に地図を渡してきた。どうやらその地図に大きく印がつけられてる場所がその宿のようだ。


 「当然こちらの宿での宿泊費等は無料となっておりますので、そちらはご安心ください」


 とお姉さんは嬉しい事を教えてくれた。


 とりあえずこれで、王様と謁見するまでの滞在手段は何とかなりそうだ。


 「では以上で手続きとご説明の方が終了となります。ではこちらの紹介状は預からせて頂きますね」


 そう言ってお姉さんは再度俺から二枚の紹介状を受け取り、ぺこりと頭を下げた。


 「いえ、こちらこそご丁寧にありがとうございます!」


 俺はそう言って席から立ち上がろうとすると、


 「あっ、あの!最後に1つだけよろしいでしょうか?」


 「!?……何ですか?」


 とお姉さんが突然顔をこちらに近づかせて尋ねてきたので、ビックリしながらも俺は聞き返した。


 「聖騎士ルキアート様とルイス様との繋がりという事は先日あった魔王軍幹部の襲撃と何か関係がある方なのですか?」


 とお姉さんは聞いてきた。


 |(さすがに王国になると情報が伝わるのも早いんだな)


 とユリウス討伐の情報の伝達の速さに感心しつつ、


 「はい、私たちはその時一緒に討伐隊として参加していたんですよ」


 とざっくりとお姉さんに説明した。


 するとお姉さんは目を輝かせ、


 「という事はルキアート様にも当然お会いに!?」


 「まぁ一応……」


 「という事はルキアート様の戦闘姿を見れたのですね!なんて羨ましい!」


 とお姉さんは興奮して一気に捲し立てる。


 どうやらこのお姉さんはルキアートの大ファンらしい。その後も俺達は当時の事を色々と聞かれ、気づけばお姉さんによるルキアートがいかに凄い人なのかという説明に入り、そこから解放されるまで俺達は1時間近くかかったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ