第5話 聖王国ラミーリア(3)
ラミーリアの城下町に入ると、外から見た時よりも遥かにラミーリアという国の凄さが感じられた。
俺からしたらハミネ町ですらかなり大きい町のように思えたが、ラミーリアの城下町はその比じゃない。
一歩踏み入れるとそこにはあらゆる所にお店、行き来する人で溢れかえっており、ここはテーマパークなのか?と勘違いする程である。
そして1番度肝を抜かれたのは、ラミーリアの構造だ。
外から見た時にラミーリアの王宮が見えたので、よほど大きな城なのかと思っていたが、それはラミーリアという国の特殊な構造のようで、ラミーリアは三段構造の様な造りになっていた。
「凄い……。この国はどうなっているんだろう?」
俺は馬車から城下町の様子を眺めながらそう呟くと、
「聖王国ラミーリアは三つのエリアに階層で分けられてるんだ」
と隣に座っているロゼが説明を始めてくれた。
「まず今俺達がいる下層がいわゆる城下町だな。見ての通りラミーリアの一般的な住人の居住区だ。他にも商業や工業、後は兵隊の詰所や役所、病院なども基本的な施設はこの区域にある」
そこまで話してロゼは前方を指差す。
「そして下層エリアの先にデカい崖があるだろ?その上に広がっているのが中層エリアだ。主にラミーリアの貴族や大臣、それに聖騎士様といったラミーリアでも上級階級に当たる方々が生活される場所だ」
そしてロゼはその中層エリアの更に上、大きな城を指差し、
「そしてこの国の中心かつ、中層エリアの真ん中の崖の上にある上層エリアがこの国の王宮だよ」
と教えてくれた。
「基本的に下層エリアは誰でも自由に行き来出来るけど、中層エリアに行くには上の許可が必要だ。もちろん上層エリアに入れるのも王族の許しを得た人物だけになっているよ」
「へぇ〜……」
俺はあまりにも規格外な国の構造に未だ驚きを落ち着かすことができず、ロゼの説明にも気の抜けた声で返事を返してしまう。
驚いているのはリーシャやフォーリアも同じようで、
「流石……としか言えませんね……」
とフォーリアは呟き、
「何か知らない世界に迷い込んだみたいだわ……」
とリーシャも言葉を失っている。
「でも上のエリアにはどうやって移動するんだろう?」
と俺は思っていた疑問を口にする。
各階層を隔てる崖は、高さ自体が30メートルはありそうで、階段みたいな上に登る為のものは見当たらない。
「それは各階層の麓に関所があるんだけど、そこに上のエリアへ繋がる経路があるらしいよ」
とロゼが教えてくれた。
「まぁ俺もラミーリアに来たのは初めてだし、全部親父に前もって聞いていた話なんだけどな」
とロゼは恥ずかしそうに言う。
「実際に俺も目の当たりにして驚いてるよ」
とロゼは笑っていた。
「とりあえずここからどうしますか?」
馬車を一旦止めて、フォーリアが俺達にそう尋ねてきた。
「まずは親父から貰った紹介状とルキアート様から頂いた書状を持って、下層エリア麓の関所に向かおう。そこでアポを取りつつ、今日の所はどこか宿を探して宿泊……ってとこじゃないか?」
とロゼが提案した。
「そうだね……。私達はまだこの国の事を良く知らないんだから、まずはこの国の役人さん達に会いに行こう」
と私はロゼの提案に賛同した。
リーシャとフォーリアも特に異存は無いようなので、俺達はとりあえず麓の関所へと向かった。
▽▽▽
麓の関所へ繋がる下層エリアの大通りはかなり大きいので、俺達はこのまま馬車で向かう事にした。
人や他の馬車の行き来も多かったので俺達はゆっくりと進んでいったが、行く途中にも様々な物に目が移り、風景を眺めているだけでも全く飽きは来なかった。
そして馬車で移動して1時間かからない位だろうか、目的である下層エリア麓の関所へ辿り着いた。
関所の近くには馬車を留めるスペースもあったので、俺達はそこに馬車を止め、歩いて関所へ向かった。
関所といってもまるで役所の様な大きさの建物であり、俺達はとりあえず関所の中へと入っていった。