第4.5話 旅の前の一時 〜リーシャ編〜(1)
新しくロゼさんが仲間になって、私達は1週間、目的地である聖王国ラミーリアへ向かう準備をする事にした。
今はフォーリアさんとロゼさんは装備品の整備、ルナさんは消耗した魔力を回復をしている。
そして私は……、
「うぅぅぅ……、暇だよぉ……」
特にこれといってする事がなく、暇を持て余していた。
私も昨日の戦いでは結界を張ったり、傷ついた兵士さん達に治癒魔法をかけて回ったりとかなり魔力を消費したはずなのだが、今では魔力は完全に満タン状態になっている。
旅に出る前にお父さんから、
「お前はエルフの王族の者として、莫大な魔力と凄まじい魔力回復能力を受け継いでいる」
と教えられたが、その通りで戦場でどんなに魔力を使ってもあっという間に回復してしまうみたいだ。
実際今日の朝ルナさんに魔力の調子はどう?と聞いたところようやく3割方回復したくらいと言っていた。一方で私は昨日、町に戻ってきた段階で魔力はほぼほぼ回復していた。
使った魔力量だけでいったら、昨日の戦いでは私の方が多いと思う。つまりそれだけ私の魔力構造は普通じゃないのだ。
「これでこのお屋敷もグルっと一周したかな?」
私はあまりにも暇だったので、お屋敷の中を1人で探索していた。本当は町に出たかったのだが、ルナさんやフォーリアからは、危ないから屋敷の外には出ないよう言われていたので、暇潰しがてら歩き回っていたのだ。
といってもいくら大きいお屋敷とはいえ、庭を含めて全て見て回るのにそう時間は掛からない。
結局やることがなくなった私はルイスさんから借りている、私達の部屋へと戻って来た。
「あっ、おかえり〜」
部屋に戻るとソファーに座ってグダーとしているルナさんが声をかけてきた。
「ずいぶん早かったね?」
「うん、探検っていっても勝手に色々な部屋に入る訳にはいかないからね」
と返事をしながら私はルナさんの隣に座る。
「ルナさんは瞑想してたんじゃなかったの?」
と私は尋ねた。
少し前、ルナさんは魔力回復の為に瞑想してみると言って、静かに目を閉じ座禅を組み始めた。なので邪魔しちゃ悪いと思って私は部屋を出て行ったのだ。
私の質問にルナさんは恥ずかしそうに笑いながら、
「いや〜、物は試しで瞑想をしてみたんだけど、効果が全く無くってね……。それに足も痺れてきちゃったから直ぐにやめたんだ」
「なにそれwww」
私もルナさんにつられて笑う。しかしその後すぐ、
|(あれ?じゃあ私が気を使って部屋から出る必要なかったのでは?)
と思う。
私の考えを察したのか、
「ごめんね、せっかく気を使ってもらったのに……」
とルナさんが謝ってきたので、
「気にしないで!探検も結構楽しかったから!」
と言って私は誤魔化した。
「それにしても魔力を回復させるのって大変なのね?」
「そうだね……。私も未だに自分の魔力?とか魔法の細かい仕組みを理解してる訳じゃないから苦戦してるんだよ。……まっ、それでも何もしてなくても魔力は少しずつ回復するっていうのは分かったから、後は気長に待つだけなんだけどね」
「そうなのね……。私はお父さんから普通のエルフより魔力量も魔力回復スピードも桁違いって言われたけど、他の人の魔力なんて気にした事が無かったわ」
「リーシャはどんな感じで魔力を回復させてるの?」
「特に意識とかは何もしてないわよ?なんかこう……身体の隅々から溢れ続ける感じ?」
「今もそうなの?」
「うん、今は魔力満タンだからそうでも無いけど、それでも身体から少し魔力が溢れてる感じはするわよ、ほら!」
と言って私はルナさんの手を握り、自分の魔力を少し流してみた。
すると、
「うわっ!何コレ!?なんか魔力が流れてきたんだけど!?」
とルナさんは驚いた声をあげる。
私も「えっ!」と驚き、ルナさんから手を離す。
確かにルナさんに触り、意識して魔力を流してみたところ、何かルナさんの中に吸い込まれるような感覚がした。
そしてその感覚はルナさんから離れた瞬間消えてしまった。
「も、もう一度触ってみるわね?」
と私はある仮説を思い浮かべ、ルナさんに尋ねる。
ルナさんも私と同じ事を考えてるようで、コクッと頷いたので、私は恐る恐るもう一度ルナさんの手を握り、魔力を流してみる。
すると今度はハッキリと自分の魔力がルナさんに流れていると分かった。
ルナさんも、
「凄い……、リーシャの魔力を直に貰ってる感じがするよ」
と言った。
私は一度手を離し、そしてルナさんを見つめ、
「私、魔力を他の人に与えることも出来るみたい……」
「そうみたいだね……」
とルナさんも驚いた表情でそう返した。
「「……………………」」
そして二人の間に少し沈黙が流れ、
「「コレって凄くない!?」」
と綺麗に二人してハモった。
「凄い!凄いよリーシャ!!これで魔力回復がだいぶ短縮出来るよ!」
「そうだね!私は元から魔力回復は早いから、ルナさんの分の魔力補充も私が補えるよ!」
と私とルナさんは手を取り合って喜びあった。
そしてここで私にある考えが思い浮かんだ。
「そうだルナさん!いい事を思いついたわ!」
「何なに!?」
私の言葉にルナさんもテンション高く反応する。
そんなルナさんに私もテンション高く、
「これこら一緒にお風呂に入りましょ!」
と私は提案した。