第4.5話 旅の前の一時 〜ロゼ編〜(1)
ユリウスとの激戦を終え、町に戻った俺はルナさん達にお礼も兼ねて屋敷へ招待をした。
そして親父やルナさん達と夕飯を食べ、俺はそこでルナさんが魔力を使えるという驚愕の事実を知る事になる。
何とも言えない雰囲気が流れ、そのまま食事が終わると同時に俺達はそれぞれの部屋へと戻って行った。
▽▽▽
「ふぅ〜……」
俺は自室に戻って水を飲み、心の内の妙なざわめきを落ち着かせる。
リーシャさんがエルフという事は森から町に戻る合間に聞いていたので、彼女が魔法を使える事には納得出来ていた。それでも生まれて初めて生の魔法を見たので最初はかなり驚いたが。
「まさかルナさんまで魔道具ではなく純粋な魔力による魔法を使っていたなんてなぁ……。今にして思えば"魔法少女"って自分で言っていたんだから、その時に気付くべきだったのか……。ルナさん普通に俺達と変わらない人間に見えたんだけどなぁ……」
と俺はあれこれ考えを巡らす。
普通の人間には魔力は扱えないというのは、この世界の常識だし当然の理である。
つまりそれはルナさんが普通の人間ではないということだ。
しかしルナさんは人間が魔力を使えない事を知った時、とても驚いているように思えた。演技なのではなく、本当に知らなかったに違いない。それは領主の一人息子として、色々な汚い人間の部分をそれなりに見てきた俺が確信を持って言える。
リーシャさんもフォーリアさんも長い事、外界と閉ざされた集落にいたのだからこの世の事をあまり知らないという事も先程の食事の時に分かった。
|(そんな三人がこのまま旅を続けられるのか?三人はこの後ラミーリアに向かうと言ってたよな。あそこは人類軍の総本山だ。下手な行動をすれば人類の敵とみなされる事になるよな)
と俺は危惧する。
「じゃあ俺があの人達にしてあげれる事は……」
その答えは決まっている。と言うより食事の最中にルナさん達の話を聞いていた時からある程度考えていたのだから。
「親父に話に行くか……」
俺はルナさん達の旅の同行を許可して貰う為、まずは親父に話をつけてこようと思い、部屋を出た。
不思議な事に……って訳でもないが、俺は魔力を使えるルナさんに疑問は持っても、不信感や恐怖といった負の感情は一切持たなかった。
▽▽▽
「親父、少し良いか?」
「…………ローゼットか、良いぞ」
俺は親父の部屋へ行き、ノックした後に親父の返事を聞いて部屋の中へと入る。
親父は机で手紙を書いていた最中だったようで、俺が部屋に入っのを確認すると、書き途中の手紙を机の引き出しへしまい、
「どうかしたか?」
と尋ねてきた。
俺は親父の前まで歩いていき、机を挟んで親父と対面したところで、
「親父、俺はルナさん達の旅に一緒について行こうと思う」
と親父に俺の考えを伝えた。
親父は俺の話を聞き終えると、椅子をくるりと回しで俺に背を向ける。
そしてしばらくの間俺達の間に沈黙の時が流れ、やがて親父は椅子から立ち上がり、俺の方へと向き直る。
「丁度良い機会か……」
と親父は呟いた後、
「お前には近く、一度ラミーリアへ行き世界をより知ってもらおうと考えていた。」
「世界を……?」
「あぁ、お前は私の元で色々な事を知り、見て、学んだきた。しかしそれでもこの世界……、いや、聖王国ラミーリア傘下の代表としてはまだまだ未熟だ。お前はゆくゆくは私の跡を継ぐ者だ。情勢を知り、王との謁見を通して、一段と次期領主としての自覚を持ってもらいたい」
と親父が語った。
それに俺は、
「親父、前にも何度も話したが俺は親父の跡を継いで領主になろうとは考えていな……」
「聖騎士になるとかいう戯言か……」
と俺が言う前に親父は遮って話を止める。
「いい加減現実を見ろ!お前では聖騎士にはなれない!それは今日の戦いでも分かったことだろ!」
と親父が怒鳴る。
それでも俺は……
「親父、それでも俺は聖騎士になる事を諦められない」
と伝えた。
俺の言葉に親父は深く大きな溜息をつき、
「分かった……。とりあえずその話は保留にしよう。とりあえずお前はルナ殿達と一緒にラミーリアへ行ってこい。そこで色々なことを知る事になるだろう」
と親父は言った。
▽▽▽
ローゼットが部屋から出た後、私は引き出しから書き途中の手紙を取り出し、続きを書き始める。
そして書きながら、
「ローゼットは知る事になる。この世界、いや、私達人間は聖王国ラミーリアの思うがままだと言うことを……、そして私も領主に収まらず、聖王国の貴族になるのだ」
と呟き、今日の出来事……もとい|魔法少女と名乗るルナという少女について書き続けた。