第4.5話 旅の前の一時 〜ルナ編〜(1)
ロゼが俺達の正式な仲間となり、俺達は目的地である聖王国ラミーリアへ向かう準備を行っていた。
ラミーリアへはハミネ町から馬車で5日ほどらしく、向かう道中に小さな村はあるが食料の補給が出来るほどの規模ではないらしいので、俺達はこのまま寄り道をせずに、真っ直ぐラミーリアへ向かうことにした。
その為食料等の準備やユリウスとの戦いで消耗したフォーリアとロゼの武器の手入れ、そして俺とリーシャの魔力回復を一週間かけてしっかりと俺達は整えることにした。
その間もルイスさんは快く屋敷に滞在をさせてくれ、俺達はこれといった問題なく準備を進めることができた。
▽▽▽
滞在三日目、俺は魔力が全回復したので少し鍛錬をしようと思い、ルイスさんに頼んで庭を借りることにした。
「正直俺はこの世界でかなりの実力者だと思っていたけど、この前の戦いで上には上がいるってことを思い知らされたからなぁ。実際ルキアートの奴が来なかったらあの数の死霊をみんなを守りながら対処できた自信はないし、ダーウィンとの戦いでそれなりの魔力を消費しちゃってたんだよねぇ……」
俺はユリウス達と戦うまで、そこまでの強い敵と相見えた事がなかったので自分の魔力はかなり多いと思っていた。しかし実際に強敵と戦うと魔力の消費が激しいことをこの前の戦いで俺は学んだ。
俺の魔法少女としての姿は常に魔力で身体全体を纏っている様な状態だ。その為攻撃を直に受けてもダメージをかなり軽減できるし、状況に合わせてスピードをあげたり、空を飛んだり、魔装変換や武装変換といった戦況に合わせたフォームチェンジを簡単にする事ができるのだ。
しかしその反面魔力の消耗が激しい。なぜなら俺は魔法少女として戦っている間、|常に魔力を放出している《・・・・・・・・・・・》状態だからだ。
「こんな細かい設定まで俺の漫画と同じだからなぁ……」
と俺は溜息をつく。そう、俺が生前描いていた漫画の主人公である魔法少女ルナも、今の俺と同じ変身中の魔力消費量が激しく、短期決戦スタイルの戦い方であったのだ……。
そう、最初は……、
「ルナは最初こそ魔力切れとかで強敵相手に苦戦を強いられる場面があったけど、修行や戦いを通じて魔力量が増大し、使える技や戦闘可能時間が増えていったじゃないか!それならきっと俺も同じはずだ!鍛えれる時に鍛えて、次にユリウスと戦う時にはアイツをボコれるように強くなってやる!」
と意気込み、俺は魔法少女・剣士モードに変身し、庭へと向かっていた。因みに剣士モードにした理由は、剣士モードが魔力消費量が1番少なくコスパが良いので、鍛錬などで長時間変身したい時は都合が良いのだ。
|(ていうかこんな町中で派手な魔法は使えないしね、そもそも……)
てな感じで剣を持って庭に着くと、そこには既に二人の先客がいた。
「はぁぁぁぁぁぁ!」
「…………フンっ!」
庭では既に鍛錬をしていたのであろうか、ロゼとフォーリアが互いに武器を持ち、手合わせをしていた。
ロゼが勢いよくフォーリアに向けて槍を振り下ろし、それをフォーリアがレイピアを上手く扱って槍の軌道をずらしている。そして隙ができた瞬間にフォーリアの突きがロゼに襲いかかるが、ロゼは槍を素早く回転させその攻撃を受け止める。
そんな激しい攻防を二人は俺に気付くことなく繰り返していた。
ていうか……、
|(アイツらマジで殺り合ってないか!?とても手合わせには見えないぞ!?)
俺はそう思って二人の方へ走っていき、
「二人ともストーップ!」
「「!?」」
俺の声でようやく気付いたフォーリアとロゼはお互いに手を止め、こちらを振り向く。
「ん?どうしたルナ?」
額の汗を腕で拭いながらロゼが俺に話しかけてくる。
「いやいや、どうしたも何も……、二人とも何してたの?」
と俺は二人に尋ねる。
俺の問いに二人は不思議そうに首を傾げ、
「いえ、ロゼ殿にお願いされて手合わせの相手をしていただけですが」
と汗一つかいてない涼しそうな顔でフォーリアは俺の質問に答えた。……ていうかフォーリア、さっきまで普通に額に汗浮かべてたじゃん!いつの間に拭いたんだよ!?
とまぁ……、それはさておき、
「いやその割には迫力というか、妙に殺気地味たものを感じてね……」
と俺は「ははは……」と苦笑いを浮かべそう返した。
「まぁ、俺も割と本気でやらせてもらったからなぁ……。あっ!もちろん寸止めするつもりだったぜ!」
「私も多少熱くなってしまったかもしれませんね、先の戦いで己の未熟さを体感しましたから……」
「あぁ、そうだな……」
とロゼとフォーリアは互いの武器を握り締めながらそう呟いた。
|(そうか、二人とも俺と同じでユリウスとの戦いで感じるところガあったんだな)
俺はそう感じ、何となく嬉しく思えた。仲間が同じ想いを抱いてくれてる事に、そして俺達はもっと強くなれると確信して。
「いやぁ〜でも良かったよ、てっきり二人が喧嘩でもしてるのかと一瞬思ったから」
と俺は笑いながら二人を見つめた。
それに二人も笑って返し、
「そんな訳ありませんよ、ロゼ殿も大切なお仲間の一人なんですから」
「そうだぜルナ!俺達は森とユリウス戦とで絆を培った仲だろ!」
と返した。
「まぁ、フォーリアは俺が男と間違えた事をもしかするとまだ根に持ってるかもしれないけどな」
「「……………………」」
ロゼが笑いながらそう言ってる中、俺とフォーリアの間になんとも言えない空気が流れる。……いや、空気と言うより悪寒、ていうか殺気じゃね!?コレ!
俺が恐怖で震えてる様子とフォーリアの目が笑ってない笑顔に違和感をようやく感じたのか、ロゼの笑いも止まる。そして、
「あれ、ええと……」
「どうやらロゼ殿にはしっかりと私の事を知ってもらう必要があるみたいですね……」
と殺気をダダ漏らしにしながらフォーリアはレイピアをロゼに向けていた。
|(ヤバいヤバい!本当に殺し合い……もとい一方的な虐殺が始まりかねない!)
「フォーリア!ストーップ!」
俺は慌ててフォーリアを呼び止める。
「はい?なんでしょうルナ?」
|(怖えぇえ!フォーリアさんマジ怖え!ていうかしれっと始めてルナって呼び捨てで呼んだし!)
「あ〜えぇと……、」
俺は冷や汗を浮かべながらチラッと横目でロゼを見る。そのロゼは両手を顔の前に合わせ|(ルナ!頼んだ!)と言いたげな表情を浮かべていた。
|(あぁ、どうにでもなれ!)
「フォーリア!私とも1度手合わせをしない!?」