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第4話 ハミネ町(10)

  突如現れた炎により、数百はいた死霊の軍勢はあっという間に灰と化す。


 何が起きたのか理解出来ず俺は後ろを振り返った。


 「とりあえず雑魚の処理は済んだか……」


 そんな事を言いながら、全身真っ赤な鎧を身に付け、真っ赤な槍を携えた男がいつの間にか俺達の後ろに立っていた。


 「ル、ルキアート様!?」


 同じく後ろを振り返ったローゼットが驚きの表情を浮かべ声をあげる。


 |(この男が……)


 聖騎士、炎帝のルキアート。一人で戦場を支配する事が可能と言われている聖王国騎士団の一人か。


 「話は事前にこの近辺の領主から聞いている。後は俺に任せな」


 そう言ってルキアートは俺達の前に立つ。


 「久しぶりだなぁ、イカレ神父」


 ルキアートは槍をユリウスに向け、笑みを浮かべながらそう言った。


 それに対しユリウスは、


 「相変わらず口が悪いなぁ。ていうかいつの間に来たんだよ……」


 と面倒くさそうな事に巻き込まれた様な表情を浮かべ、頭を掻きながら答えた。


 「テメェは俺が近づいたらしっぽ巻いて逃げるだろうが、だからわざわざ気配殺して近づいてやったんだよ!」


 「それはご苦労な事で……」


 とルキアートとユリウスは会話を続ける。二人の話を聞いてる限りお互い初めて会ったという訳では無さそうだ。


 |(ていうかルキアートって人、口悪いなぁ……)


 俺はそんな事を思いつつルキアートの方を見る。


 すると俺の視線に気付いたルキアートは俺に振り返り、


 「さっきの戦い遠目からだが見せてもらったぜ。嬢ちゃん小さいのにやるじゃねぇか」


 と俺の頭に手を置き、くしゃくしゃと頭を掻きながらそう言ってきたので、


 「子供扱いしないでください!」


 と俺はルキアートの手を払い除けてそう言った。


 その様子に、


 「あわわ……、ルナさん!ルキアート様になんて事を!?」


 とローゼットが震えながらそう言い、


 「流石ルナ様、怖いもの知らずですね」


 とフォーリアは感心したような表情でそう言い、


 「これは手厳しい」


 とルキアートは笑いながらそう言った。


 「まぁさっき言ったけどアイツの相手は俺がするから、お子様は下がってな」


 と手でシッシと俺達を払い除ける。


 「……って!?お子様って言った!?」


 俺は文句を言いルキアートを追いかけようとすると、


 「ルナ様!近くにいてはルキアート様の邪魔になります!ここは一旦下がりましょう」


 とローゼットが俺の肩を掴んで止めてきた。


 「ローゼット殿の言う通りです。先程の炎をみるに、ルキアート様の攻撃は凄まじいものばかりと思われます。下手に近づいたら巻き込まれかねないですよ」


 とフォーリアもローゼットに賛同のようだ。


 「二人がそう言うなら……」


 と俺はステッキを下ろし、しぶしぶ二人に従うことにする。


 |(それじゃあ炎帝の力とやらを見せてもらおうか)


 と俺はこの世界最強の一角の戦いを見る事にした。


▽▽▽

 「待たせたな」


 「別に待ってねぇよ……、つーか帰っていいか?」


 「そんなつれないこと言うなよ、少しは俺を……楽しませてくれよ!」


 とルキアートは話しながらユリウスに向かって、槍から出したデカい炎の玉を撃ち放った。


 火炎玉は物凄い威力と速さでユリウスの所へ向かっていき、そのままユリウスへ直撃した。


 ドゴーン!


 火炎玉ユリウスに直撃した途端に大炎上を起こし、あっという間にユリウスを炎で包み込む。


 しかし炎は次第に消えていき、やがてなんともないかのような余裕の表情を浮かべ、新しいタバコを吸い始めたユリウスの姿が現れた。


 「ちょうど火が欲しかったところだ、わざわざありがとよ」


 「チッ、相変わらずクソ生意気な野郎だな」


 タバコをルキアートに向けながら煽ってくるユリウスに、ルキアートは舌打ちを返す。


 「んじゃ、遠慮なく黒焦げになってもらうぜ!」


 ルキアートがそう言うと槍から先程と同じ火炎玉を今度は10個近く作り出し、それを一気にユリウス目掛けて撃ち放つ。


 その攻撃をユリウスは手に持つ十字剣で一つずつ切り裂いていく。ユリウスが火炎玉を切り裂く度に大きい爆発と火の粉が地上へと降り注ぐ。


 俺はその火の粉から近くにいるフォーリアとローゼットを守る為シールドを展開する。


 リーシャ達の方にも火の粉は降り注いでいるが、この程度の火の粉ならリーシャが張っている結界に守られると思うので心配は要らなさそうだ。


 依然とルキアートは火炎玉を出し続け、それをユリウスが斬りつける。俺達がいた戦場はあっという間に炎に包まれた地獄の様な場所に変わってしまっていた。


 「ったく、本当にめんどくせぇなお前!」


 ユリウスはそう言って火炎玉を処理しながら一気にルキアートへ近づき、ルキアートの真上へ来ると、十字剣から魔法陣を出し、そこから龍を召喚した。


 「ほう、水神龍か!」


 龍の姿を見たルキアートがそう叫ぶ。


 水神龍と呼ばれたその龍は口から大量の水を吐き出し辺り一面の炎を一瞬で消火してしまった。


 そのまま龍はルキアートに向けて襲いかかって来たが、


 「たかが水神龍如きの水で俺の炎を消しきれると思うなよ!」


 そう言ってルキアートは真正面から龍に向かって槍で斬り掛かる。


 「そのまま蒸発しろ!」


 ルキアートの槍がより熱を帯びたかのように真っ赤に燃え上がり、その槍が龍に触れた途端、


 「グオォォ!」


 と龍は断末魔のような雄叫びを上げ、槍が触れた所から白い蒸気が溢れ出す。


 どうやら龍の身体は水が大部分を占めているようで、ルキアートの槍の熱に耐えられず身体が蒸気になってしまっているようだ。


 そのままルキアートは槍で龍を一刀両断し、辺り一面は水神龍の蒸気で白いモヤに包まれてしまう。


 「シャラくせぇ!」


 ルキアートがそう言って槍を薙ぎ払うと、槍から炎の渦が現れ、一気に周囲の蒸気を打ち払った。


 「こんな龍如きで俺の炎を防げると思ってんのか!?クソイカレ神父!」


 とルキアートはユリウスに向けて煽りを言う。


 しかし辺りに一帯にユリウスの姿は見当たらなかった……。


 

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