第4話 ハミネ町(9)
俺は双剣モードを維持しつつ、ダーウィンとの決着をつける為地上へと降りた。
俺のカウンター攻撃で地面に叩きつけられたダーウィンだが、それなりのダメージは負ったようである。それでも剣を構えてくるあたり、まだ勝負を続ける気のようだ。
「今のカウンターは意表を突かれたぞ。まさか二刀流まで使ってくるとわな」
「とっておきは隠しておくものなんだね」
「ははは、良い……、良いぞ!」
ダーウィンと俺はそんな会話をしながらも、次なる攻撃を仕掛けるタイミングをお互いに探り合う。
「ハァァ!」
ダーウィンが先程と同様に見えない高速の斬撃を撃ち、そのまま俺に向かって斬りかかってきた。
俺は不信に思いながらも抜刀領域を張って、まずは斬撃を対処し、次いでダーウィン自身の攻撃も、もう一本の剣で斬り伏せようと試みる。
しかしダーウィンはカウンターで放った俺の剣を今度は受け止め、俺とダーウィンは鍔迫り合いをする様な形になった。
真正面からのダーウィンの攻撃はかなり重く、剣一本では受け止められないと考え、俺は斬撃を処理終えたもう一本の剣も構え直し、双剣でダーウィンを押し返そうとする。
「「ハァァァァァ!」」
互いに一歩も引かず鍔迫り合いは拮抗する。
俺は双剣により魔力を流し込み、双剣の強化を図る。
一方ダーウィンも更に剣に力を入れる。するとダーウィンの剣が少しづつ光を帯び始めた。
「これで決めさせてもらうぞ!ミンチェスター流奥義!烈龍斬!」
ダーウィンがそう叫ぶと、ダーウィンの持つ剣がより強く発光を始め、そのまま俺を双剣ごと薙ぎ払うように振り切った。
その瞬間物凄い爆風と龍が雄叫びをあげてる様な音が鳴り響く。
このままではヤバいと思った俺は双剣を新たに構え直す。そしてダーウィンの攻撃を真正面から受け止め、その力をそのまま真上へ流す様に対処する。
「流水演舞!」
俺はそう唱え、そのままダーウィンの奥義を真上へ受け流した。流水演舞はカウンター技の一つで、相手の攻撃を受け止め、それを流れる水の如く受け流す技である。
そしてダーウィンの攻撃を無力化した俺はダーウィンに魔力を込めた双剣を向ける。
「これで終わりよ!二刀流秘技・クロスブレイク!」
俺は魔力が込められた斬撃をクロス字に双剣から放つ。
そしてダーウィンはそれを直撃し、
「ふふっ、ルナのやら、見事で……ある……」
と満足そうに笑いその場に倒れた。
▽▽▽
「はぁ……はぁ……」
何とかダーウィンを倒した俺は息を整えつつ、上空でこちらを見ているユリウスを見上げる。
ユリウスは倒れているダーウィンに、先程のワイバーンの時と同様に杖を向け、ダーウィンを回収する。
「まさか二体とも簡単に倒されちゃうとわねぇ」
とユリウスはタバコを吸いながらも、しかしどこか機嫌良さそうに言ってくる。
「さぁ次はあなたの番よ!」
俺は剣士から魔法少女へとフォームを戻し、ユリウスにステッキを向けてそう言う。
それにユリウスは「ククっ」と笑いながら、
「お前と戦うのは面白そうだけど、最初に言った通り生憎俺様には用事があってね。これ以上遊んでやる余裕ないんだわ」
と未だに余裕の表情を浮かべる。
「それに……」
とユリウスは俺とは別の方向を向いて、
「あっちの方から面倒くさそうな奴が近づいて来る気配もあるしなぁ……」
と頭を搔きながらそう言った。
|(ヤバい、聖騎士がこっちに来ているのがバレてる)
俺はそう思いつつ、
「それで私が逃がすと思ってるの?」
と挑発じみた口調でユリウスに言った。
「うーん……そうだねぇ……」
とタバコを吐き捨て、
「とりあえずお前、コイツらの相手でもしてろ」
そうユリウスは言い、俺の近くに魔法陣を生成してそこから死霊の軍勢を召喚した。
「くっ!最初より数が多いじゃん!」
詳しい数は分からないが最初に現れた死霊の大軍の数倍近くはいるだろう。
「ルナ様!ご無事ですか?」
新たに現れた死霊の軍勢を見て、フォーリアとローゼットが駆け寄ってきた。
「せっかく死霊の軍団をフォーリアさんと倒しきったと思ったのに、また新たな集団かよ……」
ローゼットはボヤきながらも槍を構え、俺の横に立つ。
「ごめん、そっちの状況を気にしてる余裕なかったんだけど、そっちはどうなってるの?」
俺がフォーリアに尋ねると、フォーリアもレイピアを構えローゼットとは逆に俺の隣に立ち、
「先程ローゼット様が仰ったように最初に召喚された死霊の集団は何とか倒しました。……しかし、ゴーレムはほぼ全滅、兵士も8割近く負傷し、今お嬢様が懸命に治癒魔法で治療をしております」
と説明してくれる。
俺はリーシャの方を見ると、リーシャは結界の中で慌ただしく負傷兵の治療を行っていた。そしてその結界の集域をルイスさんと残っている兵で守っているようだ。
「て事は今戦えるのはこの三人だけって事ね……」
俺はフォーリアとローゼットを交互に見てそう言った。
そしてそんな光景を面白そうに見て、
「それじゃあ俺は行かせてもらうぜ」
そう言ってユリウスはこの場から離れようとする。
「待て!」
俺がそう叫んだ瞬間、
「炎海!」
と言う声が俺の真後ろから聞こえ、俺達の目の前にいた死霊の軍勢があっという間に炎の中に包み込まれた。