第4話 ハミネ町(8)
俺は剣を構え、ダーウィンと一定の距離を保ちつつ相手の出方を伺う。もちろん前世では剣など使ったことがないので、剣術など使えるわけも無いのだが、知識……というより、漫画を書く上で主人公のルナも今の俺と同様剣士フォームを使用していたので、その時の妄想|(剣を使ってどのように敵を倒すか、どんな技を使うかetc.....)は今も俺の中に沢山ある。
|(このフォームはこっちの世界に来てから何度か変身してるけど、意外とちゃんと使いこなせているんだよなぁ。なんかこう……、身体が自然と動く?的な感じで)
俺はそんな事を考え、まだ強さがハッキリとしないダーウィンを見る。相手は元騎士団長、それにユリウスもダーウィンの剣術はトップクラスと言っていた。下手にこっちから仕掛けるのは下策だろう。
そのままお互いが動かないまましばらくたち、
スっ
とダーウィンが剣に手を伸ばす。
俺は「くる!」と思い身構えるが、
「遅い……」
と言ってダーウィンは剣を鞘に戻した。そしてその瞬間、
ダダダダダッ!
と俺の持つ剣に衝撃が来た。訳もわからず、俺はとにかく攻撃を受け止める為剣に力を入れるが、
「隙だらけだぞ」
ダーウィンは一気に俺との距離を縮め、手に持つ剣で俺に斬りかかってくる。
「くっ!」
俺は咄嗟にシールドを展開し防ごうとするが、ダーウィンは剣がシールドに当たるギリギリのところで寸止めし、シールドを軸にクルリと体を反転させ俺の背後に回る。そしてそのまま剣の柄で俺を背後から殴りつけてきた。
「うわぁぁぁ」
俺はみっともない声を上げ吹き飛ばさてしまう。しかしダーウィンは追撃の手を緩めず、俺に向かって先程の見えない高速の斬撃を仕掛けてくる。
ドドーン!
空中で尚且つ体勢も悪い状態の中そんな攻撃を躱せる訳もなく、俺はダーウィンの攻撃をモロに受けてしまった。
「ヤバい、あの人マジで強いんだけど……」
俺はようやく体勢を整え、再びダーウィンと向き合う。強い攻撃を連続で直撃した魔法少女の衣装も、流石に少しボロボロになり、一部は布が切り取られてしまっている。それに体にも傷ができてしまい、俺はこの世界に来て初めてダメージを受けたような気がした。
「この攻撃でもまだ余裕そうだな」
「はぁ、はぁ……、余裕じゃないよ全く!」
俺に近づきながらそう言ってきたダーウィンに、俺は構えを解きながらそう答える。
「こんな可愛い女の子相手に容赦の無い攻撃だね」
「戦場に立てば女も子供も関係ないだろう。それにそなたを普通の少女として扱うのはいささか無理があろう」
「ですよねぇ〜」
俺の文句にダーウィンはただ冷静に答える。まぁ、一騎打ちなのだから相手も全力でくるのは当然か。
「それより構えを解いてもう降参かね?」
俺の無防備な姿に警戒しつつ、ダーウィンは俺に近づき続けながら尋ねる。
「まさか、私はまだ戦うつもりだよ」
俺はおどけた様な調子でダーウィンに答える。
しかしダーウィンは、
「ほう、間違いなく何か策がある様子だな」
と油断すること無く俺を注意深く観察し始める。
「面白い、そこからどういった攻撃を仕掛けてくるか興味がある!……しかし、その企み諸共斬り伏してくれる!」
そう言ってダーウィンは剣を構え、俺に攻撃を仕掛けてくる。
俺は剣も構えず、シールドも展開せず、ダーウィンの剣が近づいてくるのを待った。
そしてダーウィンの剣が俺を斬り伏せる範囲に入った瞬間、
「グハッ!」
とダーウィンが今度は吹き飛ばされた。
ダーウィンはすぐに体勢を戻し、今度は長距離から見えない高速の斬撃を繰り出してきたが、俺はその攻撃を当たるギリギリの所で全て打ち落とす。
「見慣れないカウンター技だな……」
とダーウィンはニヤッと笑いながらそう呟く。
そう、今の俺は抜刀領域というカウンター魔法を発動している。これは自分を中心に円状の結界を張り、その結界に入った瞬間、音速で斬りつけるといったものだ。
「あなたには剣術で勝てる気がしないからね、こっちはそちらの攻撃を利用させてもらうよ」
俺はそう言いながら五月雨真空刃をダーウィンに繰り出す。
ダーウィンは俺の攻撃を綺麗に全て防ぎ、つかさず見えない高速の斬撃を撃ってきた。
「それはもう……効かないよ!」
俺は抜刀領域を展開したままなので、先程同様ダーウィンの攻撃を全てカウンターで防ぐ。しかしその瞬間、
「今ならそのカウンター技も使えまい!」
と俺が斬撃をカウンターで斬り伏せているタイミングに、ダーウィンが全力で斬りかかってきた。
俺はこの状況に
「それを……待っていたのよ!」
と口元で笑みを浮かべ、|新たに出したもう一本の剣で抜刀領域に入ったダーウィンを斬り、そのまま地面の方へ叩き落とした。
「武装変換・双剣」
俺はカッコよく言いながらも、双剣を可愛らしく持って決めポーズをとった。