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第4話 ハミネ町(4)

 ルイスさんの指揮の元、ユリウス討伐隊に入った俺らは、ルイスさん、ローゼットと今後の作戦について話し合う事にした。


 「まず死霊術師(ネクロマンサー)ユリウスについて君達に説明しておこう」


 俺がユリウスの事をよく知らないとルイスさんに言ったら、ルイスさんがユリウスの事を簡単に教えてくれる事になった。


 「死霊術師ユリウスはその名の通り死霊……、つまり死者を操る事を得意とする魔族でな。ユリウス単体であったとしても奴はいつでも死霊の軍勢を召喚することが出来る」


 |(死霊……、ゾンビみたいなものか?)


 「その死霊?というのはどれくらいの強さなの?」


 と俺が質問すると、


 「何とも言えん、そもそも死霊というのは生前の姿のまま記憶を無くし、ただ召喚者の命令にのみ従う化物で、魔力は扱えんし力も弱くなっているものなのだ……」


 とルイスさんが話す。そして一拍置いた後、


 「しかしユリウスの召喚する死霊は自我を持っており、奴の能力なのか生前よりもパワーアップして蘇るのだ。当然のように魔力を扱う事もできるし、何より死を恐れないその戦闘は、普通の人間の軍隊じゃまともに相手をできない」


 「何それ、反則じゃない?普通の人間より強い死霊をいくらでも召喚できるって……」


 「いや、そうでもないんだ……」


 俺の言葉に今度はローゼットが反応する。


 「ユリウスの作る死霊には一度……、いや語弊があるな。奴の死霊はもう一度殺せば二度と復活する事はない。それに死霊を操ったり召喚、そして死霊を作るのにそれなりの魔力を消耗するらしいんだ。だから奴のとっておきになる強い死霊はよっぽどの事がない限りはまず召喚しない」


 「つまり私達の勝利条件はユリウスに強い死霊を召喚させずに下級の死霊を相手して、援軍の到着まで耐える……って感じかな?」


 「その通りだ」


 俺の言葉にルイスさんが強く頷き首肯する。


 「そしてもう一つ注意してもらいたいのが、ユリウスと戦う場合、奴の召喚する死霊ばかりに気を取られてはいけないということだ」


 「?どういうこと?」


 「ユリウスは魔王軍幹部って事もあり、死霊を操る能力以外にユリウス本人もかなりの魔法の使い手なんだ。ユリウス本人だけの戦闘力だけでも聖騎士様と渡り合えるほどの実力らしい」


 「流石魔王軍幹部って感じか……」


 「でも奴は基本自らが戦うのは好まない。なので我々は奴を油断させつつ、ルキアート様の到着を悟られぬようすれば良い」


 「でも親父。ユリウス程の相手ならルキアート様が近づけば気配で気づかれるんじゃないか?」


 「もちろんルキアート様が近づけば近づく程ユリウスに気づかれる可能性は高くなる。なので奴がルキアート様に気付いてからが本番だ。我々は全力で奴の足止めに専念する。」


 とりあえず作戦の概要はこうだ。俺達は初め、ユリウスをその場に留まらせるように相手をし、ユリウスがルキアートの気配に気付き逃げようとするなら全力で足止めをし、本気を出してきたらルキアートの到着まで持ち堪える。


 ここまで話がまとまり、後はどのような陣形で行動するかだが、


 |(もしかしたら魔王軍幹部相手でも今の俺なら倒す事ができるんじゃないか?)


 と俺は浅はかにもそんな事を考えていた。


 |(この世界に来て守護獣のゴーレムや様々な魔獣と戦ってきたが、正直どの戦いも楽勝だったんだよな……。それでもゴーレムや大型の魔獣とかだとこの世界の人々にとってかなりの強敵みたいだし、俺の強さってこの世界じゃあチート級なんじゃないか?)


 俺は今までの戦いを振り返りながらそう思い、あわよくばユリウスもルキアートが到着する前に倒せるなら倒してみようと密かに考えた。


 ……後に、この考えがいかに馬鹿げていたかを知る事になるとは、この時の俺には当然知る由もなかったのだが。


▽▽▽

 作戦も決まり、準備も整え終わったので、俺達はルイスさん指揮の元ハミネ町を出発した。先陣をルイスさん所有のゴーレムが歩き、その後ろにルイスさんとその直属の兵士、そして最後方に俺ら三人とローゼットが陣取る。フォーメーション的には先頭のゴーレムは盾役兼死霊の討伐、そのゴーレムの動きと連動してルイスさんらが動き、俺たち四人はユリウスが強い死霊を召喚、若しくはユリウス本人が攻撃を仕掛けてきた時に対処をするという手筈になっている。


 「なんか私達重要なポジションになったね」


 馬車に乗りながらリーシャが話しかけてくる。ルイスさん達はそれぞれが馬に乗って移動をしているが、俺達は極力まとまって移動した方が良いとフォーリアが提案したので、ここまでで乗り慣れている馬車で移動することにしたのだ。


 「ハッキリ言って、今の親父の軍勢で一番強いのは間違いなくルナさんだと俺は思ってる。ルナさんの力は一緒に魔獣と戦った時もそれ程本気を出していないだろ?」


 「まぁね……」


 「やっぱりか……、ルナさんからは余裕のオーラを感じられたからなぁ。正直今の俺との実力差に嫉妬するが、それ以上に憧れるし頼りにしてる。……それは俺の話を聞いた親父も同じだと思うぜ」


 とローゼットが語る。正直ここまで褒められるとむず痒いなぁ……。


 「まぁ期待には答えないとね、……それにここで私達が活躍したら、聖王国に着いた時に好待遇をしてもらえるかもしれないし、ローゼットだって聖騎士に近づく事にもなるんじゃないかな?」


 「ルナさん……。そうだよな、俺は聖騎士を目指すって決めたんだ。この戦いは夢を叶える絶好のチャンスだもんな!」


 と俺の言葉にローゼットも士気が上がったようだ。


 「私も戦いには直接参加出来ないけど、その分みんなのサポートは頑張るから任せて!」


 とリーシャがガッツポーズをしながらそう言い、


 「私もそんなお嬢様を死ぬ気で守り通しますよ」


 と馬車を運転しながらフォーリアが言った。


 「えぇ〜フォーリアは私の事は守ってくれないの?」


 「ルナ様を守る必要はないでしょう。私よりもずっとお強いんですから」


 と俺の文句にフォーリアは笑って返す。


 戦い前だがそれぞれ緊張もせず、リラックスした、いいコンディションで俺達は移動を続けた。そして進み始めること30分程だろうか、


 「皆さま、どうやら敵と相対したみたいですよ」


 とフォーリアが俺たちに声をかける。


 その言葉に俺、ローゼット、リーシャは馬車から降り、フォーリアも操縦席から降り、馬車を邪魔にならない所に寄せる。


 「じゃあリーシャ、事前に決めたように馬車周辺に結界を張って。そこが私達の拠点、負傷した人達の治療場になるから」


 「任せて!」


 俺の指示にリーシャはすぐ動き、結界を張り始める。


 そして俺ははるか先頭、そして宙に浮いている奴に焦点を当てる。


 「アイツが魔王軍幹部、死霊術師(ネクロマンサー)のユリウスか……」


 そこには神父らしき服装で手に十字架をモチーフにしたような剣を持ち、タバコを吸いながらこちらを見下ろしてるユリウスの姿があった。

 



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