第3話 三人の旅路(6)
|(初めてリーシャに会った時と同じような流れだなぁ)
ローゼットの案内でハミネ町に向かいながら俺はそんな事を考えていた。魔獣を倒した後、ローゼットに俺達がハミネ町に向かう途中だと話すと、是非お礼をさせて欲しいと言われたので、俺達はローゼットを馬車に乗せて一緒に向かう事にしたのだ。
ローゼットの傷はリーシャの治癒魔法のおかげでほぼ回復している。改めてローゼットの容姿を見ると、彼はフォーリアとはまた違ったイケメンの風体の持ち主だ|(こんな事フォーリアの前で言ったらまた怒られそうなので、心の内だけに留めることにする)。髪は黒髪の短髪、身長も大きくガタイもしっかりしており、鍛えられている体だと一目で分かる。
「それにしてもルナさんとフォーリアさんって、かなりお強いんですね。あの大型魔獣は戦い慣れてる魔獣ハンターでも一体相手するのがやっとの強さなのに」
「まぁこの旅の間に結構色々な魔獣と戦ってきたからねぇ」
「その辺のお話も是非町に着いたら聞かせてください!」
とローゼットは憧れの眼差しを向けながら俺の手を握ってそう言ってきた。
「でもどうしてそんな魔獣を三体相手にしてたの?」
とリーシャが尋ねるとローゼットは恥ずかしそうに頭を掻きながら、
「俺は普段から鍛錬のつもりでこの森の魔獣討伐をしていたんですが、今日はあの大型魔獣の集団に鉢合わせてしまって。逃げようともしたんですが、今の自分の実力を測ってみようと思ってしまい、自分から斬りかかってしまったんです……。本当に皆さんが助けに来なければ、私は死んでいたかもしれませんね」
と恥ずかしながらも悔しそうに、槍を強く握りしめてローゼットはそう言った。
「俺は聖王国の騎士団に入ることが昔からの夢なんです」
握りしめた槍を見つめながらローゼットがポツリと話し始めた。
「皆さん聖王国の騎士団をご覧になった事はありますか?」
ローゼットが俺達に聞いてきた。勿論俺は見た事もないし騎士団の事を聞いたことも無い。俺が首を横に振ると、
「私は名前を聞いたことがあるくらい」
とリーシャが答え、
「私も実際に見たことは無いですね。選ばれた者のみが入団を許される聖王国軍のトップですよね?」
とフォーリアが答えた。
「はい、聖王国騎士団、通称聖騎士は対魔王軍に作られたエリート集団です。たった7人の集団ですが、その7人の一人一人が一国の軍隊レベルの実力を持ち、伝説の武器を持つ事が国王から許された憧れの存在なんです。」
「それは凄いな……」
「凄いなんて言葉じゃあの方達は表現できませんよ。聖騎士1人が戦場に現れただけで戦況が大きく変わるほどの人達なんですから!」
俺の言葉にローゼットは興奮気味に答える。
「でもどうしてローゼットさんは聖騎士になりたいの?」
とリーシャが尋ねた。するとローゼットは静かに目を閉じ、
「俺は一度魔王軍に襲われた事があるんです。その時幼なじみの女の子と一緒にいたんですが、彼女は魔王軍に連れ去られてしまいました。当時、いや今もですが魔王軍は自国の奴隷として使う為に子供、特に亜人の子供を連れ去り、一方で人間の子供は殺してしまうことが多かったんです。彼女も亜人だったので魔王軍に攫われ、俺は殺される寸前でした。その時です、聖騎士の1人である炎帝ルキアート様が助けに来てくれたのです。おかげで私は命を助けてもらいましたが、彼女は連れ去られてしまってね……。それで俺は聖騎士になって、きっと今もどこかの魔王軍領内で奴隷として暮らしている彼女を見つけ、助けたいと思ってるんです。……まぁ、あの魔獣を三体相手にできないようでは遠い夢のような話なんですがね」
とローゼットは苦笑いを浮かべながらそう語った。
「なんかすいません。今日会ったばかりのそれも命の恩人の貴方達にこんな話を聞かせてしまって」
ローゼットが申し訳なさそうに、それでいて「みっともないですよね……」と悔しそうに呟くと、
「そんな事ないです!ローゼットさん、辛かったんでしょ?その子を守れなくてそれが悔しくて、それで今も懸命にその子の為に出来ることを頑張ってるんでしょ?それは凄いことだよ!」
リーシャはローゼットの手を掴み目に涙を浮かべながらそう話した。
「きっとその子もローゼットさんのことを忘れてないと思う。そして誰かが助けに来てくれることを待ってると思うわ!」
「リーシヤさん……」
「そうですね。貴方の志はとても立派だと私も思いますよ。人は誰かの為と思えば思うほど強くなると私は思っています。ローゼット様の努力もきっと報われる日が来ますよ」
とフォーリアもリーシャに続けてローゼットに言葉を投げた。
「ありがとうございます。皆さんの言葉に励まされました。俺、改めてもっともっと強くなって彼女を……、ミリーを助けようって決意が固められました!」
とローゼットはさらに強く槍を握りしめ、強い決意を秘めた目をし、静かに、でも力強い声でそう言った。
「カッコイイね、ローゼットは」
俺はローゼットの言葉にそう思い、そう素直に口にした。