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第3話 海賊少女は夢を見る(6)

 「命中〜」


 港から双眼鏡で海賊船を眺めながらメリッサは笑う。


 「とりあえず奴を海賊船から引きずり降ろす」


 そう言って上級魔道武器である弓矢を再び構えたラージェンは海賊船に向けて攻撃を放つ。距離にして5kmは離れているが、この程度の距離ラージェンにとってはなんてことは無い。


 「あはは、船はパニックみたいだよ!…………って、さっきから思ったけど標的以外になんか4人いるけど、誰?アイツら」


 「さぁな」


 メリッサの言葉にラージェンは狙いを外さぬまま、ただ顔に卑しい笑みを浮かべ、


 「別にどうでもいいだろ。標的さえ捕えりゃ残りの連中なんて」


 「それもそうか」


 ラージェンに釣られてメリッサも笑う。


 この時の二人はたまたまルナ達が少女を解放したところから見始めたので、まだルナ達が魔族である事に気付いていなかった。


▽▽▽

 「何事!?」


 突然の襲撃に焦るルナ。そうしている間にも次々と攻撃が海賊船に向け放たれ、見る見るうちに海賊船はボロボロになり、炎が燃え広がっていく。


 「ルナ!西側の港だ!!」


 襲撃者に気づいたロゼはルナに伝える。ルナはロゼの言われた方向を見ると、


 「!?どれだけ離れてると思ってるの!?」


 魔法少女によって視力も強化されてるルナでも遠すぎてハッキリとは見えないが、確かに港の方に二人組みがおり、その内の一人がこちらに攻撃を仕掛けてるようだ。


 「卑怯…………」


 「え?」


 「我を油断させといて討つ。これが狙いなのか!?この卑怯者め!!」


 「ち、違うよ!!」


 どうやら少女はルナ達と港から攻撃を仕掛ける二人組みがグルだと勘違いしているようだ。その為、再びルナ達に敵意を向け銃を構えようとする。


 「ルナ!来るぞ!!」


 「あーもう!一体誰なのさ!!魔法防壁(マジックシールド)!!」


 ルナは敵からの攻撃から船全体を守るように魔法防壁を張る。


 「えっ…………」


 攻撃から守ってくれた事が予想外だったのか少女はポカーンと驚く。


 「…………っ、防ぎきれるけどこの距離じゃ反撃ができない」


 相手も殺す気ではないのか攻撃自体はさほどの威力は無い。しかしこのままではジリ貧なのも確実だ。


 「ルナ様!ここは一旦引きましょう!」


 「そうだね!」


 フォーリアの言葉にルナも同意する。


 「ロゼ!」


 「あいよ!ネリィ!!」


 ロゼの呼び声で宙にいたネリィが船に降り立ち、


 「ロゼ達は先に行って!!」


 ネリィには三人までしか乗れない為、ロゼ、フォーリア、ツバキに乗るよう促し、三人もルナの言葉に頷き素早くネリィの背に乗り込んだ。


 「君はここから出る術はある?」


 ルナも依然と魔道防壁を張りながら宙に浮き、いつでも退却出来る準備をしながら少女に尋ねる。


 「フン、敵に心配されるほど我は困ってなど…………あわわ!!」


 少女は威勢を張るがそれは強がりのようで、揺れる船と襲いかかる火の粉にあたふたしている。そんな様子を見て、


 「つかまって!!」


 とルナは少女に手を差し伸ばす。


 「…………………………(コクッ)」


 そして少女も悩んだ挙句、渋々といった感じで頷きルナの手をとった。


 「よし!行くよ!!」


 それと同時にルナは少女を抱えて一気にスイセンの待つ浜辺の方へと飛び立った。


▽▽▽

 「なんだありゃ?」


 ラージェンは弓矢を降ろし唖然とする。唖然としてるのは隣で双眼鏡から海賊船の様子を見ていたメリッサも同じで、


 「まさか魔族だったなんてね」


 とため息をつきながらそう零した。


 「ッチ、逃がしたか」


 そう吐き捨てるラージェン。しかしその言葉とは裏腹に、彼の表情は面白いおもちゃを見つけた子供のような笑顔を浮かべている。


 「おいメリッサ。あの魔法、もしかして」


 「ええ、私もしっかり顔を見てハッキリしたわ。今聖王国で話題になってる危険因子……」


 「「魔王軍幹部、魔法少女ルナだ」」


▽▽▽

 「おいおいおいおい!何なんだあれは!?」


 少し離れた所でラージェンらとルナ達の攻防を見ていたランウェイは、その光景に呆然としていた。


 「完全に場違いね」


 「だな」


 と一緒にその光景を見ていたレミィとリスタンも、もはや乾いた笑いを浮かべるしかなかった。


 「ま、まぁ……、私達の依頼はあくまで補佐よ。なにも前線に出て戦えって言われてないんだから」


 レミィはそう言いながらランウェイの肩を叩く。


 ランウェイら紅の影に与えられた依頼は『海賊を捉える兵士の補佐』である。とはいえ、彼らはまだその兵士と合流していない。待ち合わせ地点に向かう途中に今に至るのだ。


 「それに依頼主はあの聖騎士風帝様の副官、そして討伐に向かうのはその側近だろ?実際そこまで身構える必要も無いんじゃないか?」


 「………………だといいけどな」


 リスタンの言葉にもランウェイはどこか浮かない顔をする。何か嫌な予感が胸を走るのだ。


 「…………でも、いつまでもここにいても仕方ないか…………。よし!目的地に向かうぞ」


 「「了解」」


 そう言ってランウェイ達は合流地点であるラージェンとメリッサの元に向かう。


 そしてその後、彼らは過酷な選択と運命が待っていた。


 


 

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