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第3話 海賊少女は夢を見る(3)

 「本当に大丈夫なのか……、相手は聖王国の兵士を返り討ちにした化け物なんだろ?」


 とある国の港町にある酒場にて、昼間から酒を飲みつつ一人の男が盛大にため息をこぼす。例の海賊騒動によりこの港町は人が寄り付かなくなり、少し前までは賑わっていたという面影は今では微塵も見えない。


 「とか言いながら報酬に目が眩んで即OKしたのはあなたじゃない」


 「そうだぜリーダー。……まぁ俺達も報酬に目をキラキラさせたけどな」


 ため息を吐いた男と同席している眼帯を付けた女性(・・・・・・・・)大きな盾を持った男性(・・・・・・・・・・)は笑いながら茶化すが、


 「「「はぁぁぁ……………………」」」


 結局不安の方が勝ってしまい今度は三人揃ってため息をつく。


 「でもギルドもギルドだよな!久しぶりに依頼を斡旋したかと思えばこんな危険な匂いがプンプンするもん寄越すなんて」


 「仕方ないだろリーダー、あの件(・・・)以降、俺達への風当たりが強くなったんだから」


 「でも不思議よねぇ……、こんな状況になってもあの少女達(・・・・・)を憎めないんだもん」


 「そりゃあ、まぁ…………、国がどうこう言おうと、実際に会って話した俺達からしたら普通の女の子だったしなぁ…………」


 リーダーと呼ばれている男はそう語り、話題になったとある少女を思い出す。出会ったのは一度、それも僅かな時間であったが不思議な力を感じ、ギルドの冒険者へと誘った。その後魔族と発覚し、聖王国の聖騎士を相手にした後、魔王軍幹部へと名を挙げた少女。


 「…………元気にしてるのかねぇ。聖なる魔法少女隊(ホーリーウィッチーズ)


 そう呟き手に持つ酒を飲み干した聖王国ギルド所属の最後の冒険者チーム、"紅の影"リーダーであるランウェイは席を立った。


▽▽▽

 「ハハーン、ここが噂の海賊少女が現れるっつう港町か。…………随分と辛気臭ぇ場所だな、おい!」


 「仕方ないんじゃない?不気味な海賊が出るって言われれば誰も好き好んでこんな田舎に来ないでしょ」


 「だな。…………まぁ、こんな古びた港町一つ滅んだ所でどうでもいいんだけどな」


 「それもそうね。聖王国以外の国なんて必要ないない」


 廃れた港町を横目に、二人の男女がそう話しながら目的である海に向かい歩いて行く。


 「そういえば来てるんでしょ?我が国のお荷物冒険者達も」


 鋭い鉤爪を両手にはめた女性がもう片方の男に話しかける。


 「らしいな。なんでもうちのボス直々のご依頼らしいぜ。…………俺らの肉壁役として」


 そう言って巨大な弓を背負う男は卑しく笑う。


 「まぁ雑魚には雑魚らしく働いてもらいましょ」


 それに釣られて鉤爪の女性も意地悪く笑う。


 「……にしても、相変わらずボスも難しい要求をするよなぁ」


 「ねぇ、殺すだけなら簡単なのに五体満足で連れて来いなんて」


 「まぁ、いつも通り奴隷コレクションに加えたいんだろ」


 「いや、なんか不思議な力を持ってるみたいだから人体実験したいのかもよ」

 

 二人はボスが何をしたいのかをあーだこーだ予想し合う。そしてあらかた意見を出し終えたところで、


 「まぁ、どっちにしろこれで海賊少女は終わりだな」


 「そうね。私達のボス、風帝エレクトール(・・・・・・・・)様に目をつけられたんだから」


 目的の海に辿り着き、二人の男女、聖王国聖騎士が一人、風帝エレクトール率いる軍隊の幹部、ラージェンとメリッサは不敵に笑った。


▽▽▽

 「………………おかしい」


 海賊船に揺られながら少女は思案していた。少女は善意で海の魔獣から人々を助ける為に魔獣狩りをしていたが、気付けば近くの港町から人の気配が無くなっていった。そしてさらに不思議な事に、自分の命を狙いにあの世界一の大国である聖王国から兵士が派遣されたのだ。


 「…………それになぜ!」


 そして少女はその時の事を思い出し腹を立たせる。


 「何故!我を化け物扱いするのか!!」


 そう、それが少女が立腹している最たる理由だ。確かに少女には普通の人間とは違い、特殊な力(・・・・)を有している。それでも自分は人間であると少女は信じていた。


 「母は言った!我は人間だと、決して悪しき存在ではないと!!」


 ダンッ!!


 怒りのあまり少女は手に持つ魔道武器(・・・・)を空めがけてブッ放す。


 「…………我としたことが怒りに取り込まれてしまったか」


 憂さ晴らしで少女は落ち着く。それと同時に、


 「おっと、邪悪なる獣共を呼び起こしてしまった」


 少女の周囲に現れる魔獣の群れの気配を感じ、少女は臨戦態勢をとる。そしてふと遠くの方を見ると、


 「…………ん?浜辺に人がおるではないか」


 浜辺の方で遊んでいる自分と同じくらいの年齢の少女を見つけた。


 「我の撒いた災いだ。助けなければな」


 そう言って少女は船を浜辺にいる少女の方へと向ける。


 これが運命の出会いである事を、この時の少女はまだ知らない。

 




 

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