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第3話 海賊少女は夢を見る(2)

 「「海だァァァ!!!」」


 目の前に広がる綺麗なマリンブルーの海を見て思わずテンションが上がったルナとロゼは叫びながら海へと飛び込む。


 「んん〜気持ちいい〜」


 ルナは海面に浮きながら身体を伸ばしそう呟く。ギラギラの太陽の陽を浴びながら海水の程よい冷たさが身体中を巡るこの感覚は何とも言えない気持ち良さである。


 「…………お姉ちゃん達、凄くはしゃいでる」


 砂浜からルナ達を見てそう呟くツバキ。しかしそんなツバキは思いっきり海を堪能しているルナ達が羨ましいのかソワソワとしていた。


 「良いんですよツバキ様。ここでは立ち振る舞いとか気にせずに思うがまま楽しんで」


 そんなツバキを見て隣に立っているスイセンは優しくそう伝える。そんなスイセンの言葉を受けたツバキは少し悩んだ後、恐る恐る海へと近づく。やがてツバキの足先が海水に触れると、


 「…………冷たくて気持ちいい」


 静かに、けれども嬉しそうに笑みを浮かべる。


 「…………ルナ」


 「…………うん、ロゼ」


 そんなツバキを見てルナとロゼは笑みを浮かべながら目配せをし、


 「「そーーーれ!!!」」


 サッとツバキの両側に回り込んだルナとロゼは勢いよく海水をツバキに浴びさせた。


 「…………むっ、お返し!」


 二人からの攻撃を受けツバキも負けじと海水をルナ達に浴びさせる。そこには先程までとは違い、心の底から楽しそうに遊ぶツバキの姿があった。


 「………………」


 そんな光景をスイセンは砂浜から静かに眺めている。


 「楽しそうですねツバキ殿」


 そんなスイセンの隣にフォーリアが来て、無邪気にはしゃいでるツバキを微笑ましく見ながらスイセンに話しかける。


 「ええ、アスカにいた頃は一国の姫であり、国一番の重要機密的存在でしたからね。自由とはほぼ無縁の生活でしたよ」


 そう語るスイセンの表情は目の前のツバキの姿を嬉しく思いつつも、過去の自分の過ちを後悔しているようだ。


 「ツバキ様には今までの分も含めて、年相応に笑顔で過ごして欲しい。…………きっとルナ殿と一緒ならこの願いも叶えてくれるのでしょう」


 「そうですね。……まぁ少しハメを外しすぎな気もしますが」


 フォーリアは苦笑しながらスイセンにそう返し、夢中になって水遊びをしているルナに向かって、


 「ルナ様!ここに来た目的忘れてないですか?」


 と大声で呼びかける。それを受けルナは、


 「大丈夫!ちゃんとわかってるよ!!」


 と返事をし、数日前のことを思い出した。


▽▽▽

 「海賊?」


 「あぁ、ルナ達にはここから少し離れた海辺に出現するという海賊について調査してもらいたい」


 とある日の昼下がり、魔王ヒナギに呼び出されたルナはヒナギから仕事の依頼を受けた。なんでも魔王国から南の小国に属する海に最近海賊が現れるようで、その正体を調べてきてほしいそうだ。


 「一応現段階で分かっているのはその海賊は特に害は無さそうって事くらいだ。どことなく現れては海に住む魔獣を討伐するらしい」


 「なーんだ、ならそこまで気にしなくて良いんじゃない?冒険者とか魔獣ハンターとかその類でしょ?」


 「ただその海賊というのが普通の人間ではないみたいなんだ」


 「…………というと?」


 「なんでもその海賊の目を見た者は金縛りにあったかのように身動き一つとれなくなるらしい」


 「って事は海賊の正体は魔族?」


 「その可能性が極めて高いだろう……と思うのだがな」


 そこまで口にしてヒナギは口を閉じる。


 「?ヒナギ?」


 「あぁ悪い、俺もよく分からないんだ。俺の部下からの情報によればその海賊は聖王国からも目をつけられるようでな。先日ちょっとした衝突があったみたいなんだが…………」


▽▽▽

 「人間(・・)…………か」


 海に浮かびながらルナはそう呟く。ヒナギ曰く、その海賊は自分の事を普通の人間と言ったらしい。


 「一体どんな子なんだろう…………」


 そしてもう一つ驚くべき事実。その海賊は少女のようなのだ。聖王国の兵士を相手にしそれを退ける人間の少女。しかも不思議な能力持ちという。ヒナギが気になるというのも納得のいく話だとルナは思った。


 そんな事を考えている時だった。


 「…………なんか船がこっちに向かってる」


 海で遊んでいたツバキが遠くの方を指差しながらそう言った。それにつられてルナはツバキの指差す方を見る。そこには髑髏の旗を掲げた見るからに海賊船と思える一隻の船がこちらに近付いてきていた。


 そしてその船の船頭には一人の少女が立っていた。

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