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第3話 三人の旅路(4)

 「おぉ!うめぇなコレ!執事さん!」


 「お口に合ったようで何よりでございます」


 フォーリアの作った料理をヒナギは「美味い、美味い」と言いながら食べ続け、それにフォーリアはいつもの執事モードで対応する。しかしヒナギ達を疑っているフォーリアの態度には、いつもより少し冷たさも感じた。


 「うむ。お主、本当に料理が上手いのぉ。専用シェフとして雇いたいものじゃ」


 とロリっ娘……もといオニヒメもフォーリアの料理にはかなり満足しているようだ。


 「んじゃ、飯食いながらで話といきますか。俺とコイツの自己紹介までは済んでたよな?まずはアンタらの事を教えてくれ」


 と手に持っている食いかけの肉をこちらに向け、ヒナギは俺達3人を見渡す。それにオニヒメが「ヒナギ様、行儀が悪いですぞ」と小言を言うが、ヒナギはそれをシカトする。


 「じゃあまずはアンタから」


 とフォーリアは俺に指を指してきた。


 「私の名前はルナ。魔法が得意な魔法少女よ。訳あって記憶喪失なんだけど、この世界をよく知る為に旅をしているの。とりあえず今は聖王国を目指しているわ」


 と現状の俺の設定を説明する。俺の言葉に、


 「ふーん、記憶喪失ねぇ……」


 とヒナギは何故かニヤリと笑っている。そして次にリーシャの方を指し、


 「次はエルフのお嬢さんね」


 「あっ、はい!私はリーシヤ・ロゼルスタン、この近くにあるエルフの集落の者です。今はルナさんのお友達として一緒に旅をしています」


 とリーシャも簡単に自己紹介をする。流石に初対面の人に族長の娘兼エルフ国の王女というのは言わないようだ。


 「リーシヤと言ったね。アンタにコレをやるよ」


 とヒナギはどこからか取り出した一枚の黒のフード付きローブをリーシャに手渡した。


 「今後旅を続けていくなら森を出て以降、まして他の町や国に入る時はそのローブを着ることをオススメするぜ」


 「えっ、あっはい。ありがとうございます?」


 いきなりローブをプレゼントされ、それを着るように言われてリーシャは戸惑いつつもヒナギにお礼を言う。


 「エルフという種族は今では珍しいからのぉ。よからぬ事を考える輩も多いのじゃ。身の安全を守る為にも自分がエルフだということは極力隠した方が良いのかものぉ」


 とオニヒメが補足説明をしてくれた。


 |(エルフの国が魔王に滅ぼされたっていう話は有名なのか?それでエルフの存在自体が珍しいって事になってるのかな?)


 と俺は二人の説明を聞いてそんな風に考えた。


 「じゃあ最後は執事さんだな」


 とヒナギがフォーリアに向けて笑いかける。それにフォーリア溜息をつきながら、


 「私はフォーリアと申します。昔からロゼルスタン家にお仕えしてましたので、この旅もお嬢様の護衛としてお供させてもらっています」


 と簡潔に自己紹介を済ませた。


 「なんか俺に対して冷たくない?」


 「そんな事ないですよ」


 ヒナギの質問にフォーリアは無愛想にそう答える。その答えに「まぁいいか」とヒナギは頭をかきながら呟く。


 「それでは次は貴方方のお話をして頂けませんか?」


 とフォーリアがヒナギとオニヒメに向けてそう言う。


 「そういえば、オニヒメは鬼族でフォーリアが魔族って言ってたよね?」


 と俺はフォーリアとオニヒメを交互に見る。


 「はい、鬼族と言えば吸血鬼族、悪魔族に並ぶ魔族の代表的な種族です。その大半が魔王軍の配下として人間に襲っていると聞きますが」


 とフォーリアがオニヒメを睨みながらそう説明する。その様子にオニヒメは溜息をつきながら、


 「お主らは根本的な勘違いをしておる。確かにワシら鬼族は魔王様の配下にあるが、だからと言って無闇に人を襲ったりはせんよ」


 とオニヒメは自分が魔王の配下である事を特に隠さずそんな事を言ってきた。それに「なに適当な事を」とフォーリアが言うが、


 「逆に聞くがフォーリアとやら、お主は直接その目で魔族が一方的に(・・・・・・・)戦争と無関係な人間を襲っているのを見た事あるのか?」


 「それはありませんが……」


 「じゃろ?我々も戦争となれば相手と戦って殺すし、土地を奪ったりはする。それはお主ら人間と一緒じゃ。じゃが戦争と関係ない小さな村や町は決して襲わん」


 「しかし、現に近くの村や町では魔族に襲われたと……」


 「だから俺達は旅をしてるんだ」


 とヒナギがフォーリアとオニヒメの会話に入ってきた。


 「俺も魔族側だがアイツらはお前らが言うほど酷い奴等じゃない。それを確かめる為に、そしてどうしてこういったデマが流れているのかを調べる為に俺らは旅をしている。」


 と初めて見せる真面目な顔つきでヒナギは語った。


 「……未だに信じられませんね」


 「まぁ疑うのも解る。お前らからしたら"魔族は悪"と言われてきて、それが当たり前の常識なんだろ?遅かれ早かれ旅を続けていけば答えは解るさ」


 と言いながらヒナギは立ち上がり、身支度を整え始めた。


 「それじゃ俺らはここら辺で失礼するぜ。この川沿いを歩いて行けば迷わずに目的地まで行けそうだしな。飯ごちそうさん」


 「うむ。夕餉馳走になったのじゃ。この恩はいつか返させてもらうぞ」


 とヒナギに続きオニヒメも礼を言って出発の準備を始めた。


 「えっ?もう日は沈んでいるのに出発するんですか?」


 とリーシャが慌てて呼び止めるが、


 「お前らも今日会ったばかりの魔族と一晩過ごしたくはないだろ?それに夜の行動は慣れてるんだ、……魔族なんでね」


 とニカッと笑ってヒナギは答えた。


 「俺のあげたローブちゃんと使えよ」


 「はい、大切に使わせてもらいます!」


 「うん、結構。じゃあまたな!お前らとはまた近い内に会う気はするがその時は宜しくな」


 と言ってヒナギとオニヒメは歩き始めた。しかし少し歩い所で立ち止まり、


 「あと一つだけ忠告。お前ら、あまり外部の人間、特に聖王国は信用するなよ」


 とだけ言ってまた二人は歩き始めた。


▽▽▽

 「お前からみてあの三人どう見えた?」


 「リーシヤというエルフの娘からは内から計り知れぬ力を感じたのぉ。フォーリアという人間からも人間にしてはなった中々の力量とみた。しかし、あのルナという少女、あやつからは魔法使いと言いながらも本人からは全く力を感じなかった。……しかし、あやつの指の指輪から不思議な魔力を感じたのぉ」


 「だな。ルナとかいう女からは俺と似た物を感じたぜ」


 と俺はルナのことを思い出し笑う。そしてリーシヤというエルフの少女。


 「あの二人の出会いがこのふざけた世界の運命にどう関わっていくのか楽しみだな」


 俺は夜空に浮かぶ星空を見ながら呟いた。

 

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