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第2話 金欠のルナファミリー(4)

 「…………どうしてこうなった?」


 今の自分が置かれてる状況にルナは思わず呟いてしまう。カルメアの紹介によりカルメアが働いているお店で一晩、体験入店させて貰う事になったルナ達は、そのお店の更衣室で煌びやかなドレスを着て待機している。そんなルナの周囲には、


 「こ……これは露出が激し過ぎませんか!?」


 鏡で自分の格好を見て顔を真っ赤にするフォーリア、


 「…………凄く可愛い服なの!」


 どんなお店なのか分かっていないツバキは着ているドレスを嬉しそうに眺めており、


 「皆さんとってもお似合いですわよ」


 そんなルナ達を興奮気味に見ているカルメアがいる。


 「…………ねぇ、これ法律的に問題ないの?」


 ルナはジト目をカルメアに向けながら尋ねる。まだカルメアからお店の事を詳しく聞いていないが、流石のルナもこの状況でここがどういったお店なのか理解していた。所謂夜のお店というものだ。カルメアに連れられ着いたお店は、飲み屋街の中でも一際目立った外観をしており、店名を飾るピンク色の看板はルナも前世の男の時に来たならワクワクとドキドキが治まらなかっただろう。しかし今のルナは女の子、それも見た目14歳の少女だ。それに一緒にいるツバキに関してはルナより更に幼い。あまりにもこの店で働くには不釣り合いだ。


 「大丈夫ですよ。ルナ様が思ってるようないかがわしいお店ではありません。ただ、紳士の方々とお酒を飲むだけの簡単なお仕事ですよ」


 「いやいや!お酒の場に未成年いたら駄目でしょ!?」


 「そこは私の方で店長を説得しましたので」


 「ガバガバすぎる!」


 前にこの世界での成人は15歳と聞いている。その為フォーリアはともかく、ルナとツバキはこの店にいる事自体アウトのはずだ。


 「まぁ細かい事はお気にせず。お客様には今日限定で可愛い女の子が入ると宣伝しているんです。まさか魔王軍幹部とあろう方が、民の期待を裏切ったりしませんよね?」


 カルメアの口調からはルナ達を逃がさないという強い意志が感じられる。どうやら逃げ道は防がれてるようだ。


 「あー分かった!やるよ!でも変な事されたら帰るからね!?」


 「ふふ、承知しました」


 「巻き込んでごめんね、今夜だけ一緒に頑張ろう」


 「うう……ルナ様もやるなら私も」


 「…………お店で働くの初めてだから楽しみ!」


 フォーリアは恥ずかしそうにも覚悟を決めたのか頷き、ツバキに至ってはまだ状況を理解していないのか目をキラキラさせて強く頷いた。そんな二人を見て、変な事されないように気をつけなきゃ、とルナは強く決心した。


▽▽▽

 「君凄く可愛いね!まるでお姫様みたいだよ!」


 「…………一応元お姫様だよ」


 「ホント!?どこの国のお姫様なの!?」


 「…………それは内緒」


 とあるテーブルでは、ツバキに多くの男が集まりツバキはチヤホヤされている。普段この店ではまず有り得ない幼い美少女にみなテンションが高くなっているのだろう。ツバキもジュースを飲みながら楽しそうに会話をしている。


 「へぇ!普段執事してるんだ。…………メイドじゃなくて?」


 「わ……私にメイド服は似合わないので!」


 「そんな事ないでしょ?今のドレスもとても似合っていて可愛いですよ?」


 「か……可愛い!?私が!?」


 「そ……そんなに驚く!?」


 フォーリアもフォーリアで一人のお客さんに気に入られたのかあ酒を飲みながら談笑している。男の人から可愛いと言われ、照れながらも嬉しそうにフォーリアは頬を赤らめていた。


 「…………うん。見たところいかがわしいお店じゃないみたいだね」


 「そうだと何度も説明したじゃないですか」


 そんな二人の様子を観察しながら、ルナは隣に立っているカルメアに話しかける。カルメアはルナに信じて貰えてなかったのが不服だったのか少し頬を膨らませるが、ツバキとフォーリアが問題なく店に馴染めいるのを満足そうに、お酒を飲みながら眺めている。


 「もしよろしければこのままこのお店で働き続けても良いんですよ?」


 「それはちょっと…………」


 ルナはジュースを飲みながらその誘いを断る。流石に魔王軍幹部とその副官とメンバーがガールズバーで生計を立てるのは抵抗があった。


 「まぁでも……たまにならいいのかな?…………そんな事より」


 楽しそうにしているツバキとフォーリアを見てルナはそう思った。…………が、ただ一点。ルナは納得出来ない事がある。


 「どうして私の周りにはお客さんが来ないの?」


 そう、ルナ達がホールに出た途端、ツバキとフォーリアには男が集まったのに対し、未だにルナの周囲には男が寄ってこない。何人かはチラっとルナの方を見るのだが、それも直ぐに目を逸らして離れていってしまう。


 「…………なんか釈然としない」


 元は男とはいえ、今は可愛い少女の姿だ。この状況には納得出来ないでいた。


 「それは当たり前よ。貴女凄く怖い顔してるもの」


 「あっ、店長」


 そんな疑問に答えてくれたのはたまたまルナの近くを通りかかった店長であった。ルナの隣に立っているカルメアは店長にお辞儀をし、「まぁそうですよね」と呟く。


 「貴女、さっきからお仲間の子達を凄い剣幕な顔つきで見てたわよ。心配なのは分かるけど、そんな顔をしては駄目。せっかくの可愛い顔が台無しよ」


 「す……すいません」


 言われてルナも納得する。確かにルナはツバキとフォーリアに近づく男を警戒する為にジッと見つめていた。傍から見たら怖いと思われても仕方ない。


 「まぁルナ様もこのお店の誤解は解けたみたいですし、ここは心機一転、男を集めてみましょう」


 「…………そうだね。働かせてもらっているからには、私も精一杯頑張るよ」


 「フフ、なら私にお任せ下さい」


 そう言ってカルメアはルナを裏へと連れて行った。

 

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