第2話 金欠のルナファミリー(2)
「それではこれより、ルナファミリーの緊急会議を行います」
その日の夜、リビングに全員を集めたルナはそう宣言する。
「どうしたんだ?そんな深刻そうな顔をして」
事情を知らないフォーリア以外のメンバーは不思議そうにルナを見つめる。そんなメンバーをルナはぐるっと見渡した後、
「結論から言う。金がない!!」
バンッと机を叩きルナは大声をあげる。突然のルナの振る舞いにツバキはビクッと身体を震わせてしまい、「ご……ごめん……」とルナは謝った。
「金が無い?確かフォーリアは金には余裕あるって言ってなかったか?」
ロゼはルナの言っている意味が分からないという表情を浮かべ、フォーリアの顔を見る。
「それはですね…………」
そう言ってフォーリアはここにいるみんなに今日の昼間、スーパーで起きた出来事を説明する。
「なるほど……、確かに国によっては使う通貨も異なると聞いた事がありますが、それでも大体はその国の通貨ないし貨幣と交換出来るものでは?」
「それはそうなんだけど……」
スイセンの質問にルナは困った表情を浮かべ、スーパーでの出来事を思い出す。
当然魔王国での通貨、ドラーを持っていないルナ達はどうしたものかと困り果てていると、店員から「役所に行けばドラーと交換出来ますよ」と教えてもらい、それを聞いて安心したルナ達は一旦買おうとした物を店員に預け、急いでこの国の役所に向かった。そして教えて貰った通りに持っているルビーをとりあえず半分、ドラーに交換して貰ったのだが…………。
「その結果がコレなの!!」
ドンッと再び机を叩きつけるようにルナは袋を置く。ロゼ、スイセン、ツバキはその袋の中を覗き込み、
「「「………………え?」」」
三人とも目を丸くしポカーンと口を開けてしまった。それもそのはずだ、何せ袋の中にはドラーと呼ばれるこの魔王国の通貨であるコインが数十枚しか入っていなかったのだ。
「おいおい!いくら何でも少な過ぎじゃないか!?」
と声を荒らげるロゼ、
「こ……これはまた……」
未だに動揺を抑えきれず表情を固めるスイセン、
「…………私でも分かる。これはヤバいの……」
まるで憐れむかの様にルナを見つめるツバキ。
そう、フォーリアが持っていた聖王国が発行する貨幣であるルビーの価値は、この国において10分の1の程の価値にしかならなかったのだ。
「貨幣は信用の証、魔王国において聖王国に対する信用はほぼ無いと言うことのでしょう……」
「うん……。役所で交換してくれた人もそう言ってたよ…………」
一周まわって笑う事しか出来ないルナはスイセンにそう答える。
「とりあえず交換したドラーで一週間分の食料は確保しました。…………しかし、残りの金額的にももって1ヶ月です」
フォーリアは机に置いたドラーを大事そうに懐にしまう。ルナと話し合いとりあえずお金の管理もフォーリアにお願いする事にしたのだ。
「でもよ、こう言っちゃなんだがルナはこの国の一角を担う魔王軍の幹部だろ?その分国からお金貰えたり最悪借りたり出来るんじゃないのか?」
魔王軍幹部はいわばこの国の大臣の様な存在だ。それなりの給金があるのでは?と貴族の息子らしいロゼの考えだが、
「それなんだけどね……」
そう言い、ルナは役所に行った後のことを説明する。
▽▽▽
「ヒナギー!」
「うお!?なんだいきなり!?」
魔王城(屋敷)で紅茶を飲みながらゆっくりしていた魔王ことヒナギは突然のルナの来訪に驚く。
「お金……お金がぁぁ!」
今日あったことを説明するルナ。その間にいつの間にかミサもその場に合流していた。
「そうか、そういえばこの国のお金の事とか何も説明していなったな」
悪いなと言いつつ、ルナ達が困っていることを理解したヒナギは、
「始めに言っておくが……、魔王軍幹部には給料は発生しない」
「……………………え?」
ヒナギのその一言にルナは目を丸くする。
「当然この国でも税金は徴収しているが、ここにいる民は魔族が故、聖王国筆頭に人類から迫害されて逃げて来た者が多い。だから俺は税収は最小限にして、それらは100%民のために使うようにしている。これは俺だけでなく他の幹部の連中の総意だ」
「な……なるほど…………」
「なので税金から幹部の連中の給料は作れない。その為、基本的に幹部の連中はそれぞれ何しらの事業をしてお金を稼いでいる」
「あは♪因みにユリウス君は教会の運営、バルティック君は道場の師範として生計を立ててますよ♪」
とミサは幹部のお金の稼ぎ方を幾つか教えてくれた。
「だからルナ達も何か考えて生活する上で必要なお金を作ってもらいたい」
▽▽▽
「…………とういう訳なんだ」
ルナはロゼ達にヒナギとの会話を説明する。そしてみんなを見て、
「…………なので、お金を稼ぐ方法をみんなで考えよう!!」
とこの会議の主たる目的を伝えた。