表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
165/184

第2話 金欠のルナファミリー(1)

 「ルナ様、少しよろしいでしょうか?」


 ツバキとスイセンの歓迎会から数日たったある日の昼下がり、自室でくつろいでいたルナの所にフォーリアが訪ねてきた。


 「どうしたの?」


 ベットの上で寝転んでいたルナは起き上がってフォーリアを部屋の中へと招き入れる。フォーリアは「失礼します」と言ってルナの部屋に入り、ベットの近くにあった椅子へ腰掛けると、


 「もしこの後予定が無ければ、少し買い出しに付き合って欲しいのです」


 とルナを買い物に誘う。


 「私は今日暇だから付き合うよ。何を買いに行くの?」


 「そろそろこの家にある食材が底をつきそうなので、食料の調達を…………。多目に買い出したいのですが、あいにく他の皆は出掛けてるようでして……」


 「荷物持ちすればいいんだね!それくらい任せてよ!」


 「ありがとうございます」


 そうと決まればルナは早速準備を始める。フォーリアには一階のリビングで待ってもらい、ルナは部屋のクローゼットの中から服を見繕い、髪の毛を梳かして鏡の前で確認する。


 「そう言えばこの国に来て買い物するのは始めてだな」


 ふとそんな事を思い出すと次第にルナは楽しみになってきた。鏡の前でくるっと回って自分の姿を確認する。薄い緑色のワンピースに白のカーディガンを羽織い、ピンクの帽子をかぶって春らしいコーディネートの完成だ。この世界で少女として転生し、こういった可愛らしいオシャレをする楽しさにルナは密かにハマっていた。


 「…………うん!これで行こう!!」


 準備を整え終わったルナは鏡の前でニコッと笑い、ルンルン気分で部屋を後にした。


▽▽▽

 「ルナ様、その服とても可愛くて似合ってますね」


 「ありがとう!折角のフォーリアとのデートだしね、張り切っちゃった♪」


 「で……デートって……」


 わざとらしく腕を組んでくるルナにフォーリアは恥ずかしそうに頬を赤らめる。そんなフォーリアが可愛くて、ルナは更に上機嫌になりながら鼻歌交じりにフォーリアの腕にぎゅーっと抱きつく。


 「どこのお店に行くとかは決めてるの?」


 「私もこの国に来てまだ買い物をしていないので、どこにどんなお店なのか分からないんですよね。なので、目に入ったお店にそのまま行こうって考えてます」


 「りょーかい!」


 「…………ええーと、そろそろ離れてもらえませんか?」


 「ええ~、いいじゃん」


 「さすがに恥ずかしいです」


 顔を真っ赤にさせてそう言うフォーリアを見て、ルナは仕方なくフォーリアから離れることにした。


▽▽▽

 二人で色々と町の中を見ている内に、スーパーの様なお店を見つけたので入ることにした。


 「凄いですね!肉に魚に野菜まで、色々な物が揃ってますよ!」



 多種多様に並べられた食座を見て目を輝かせるフォーリア。


 「へえ~、この世界にもスーパーがあるんだ」


 ルナもルナで元の世界では日常的であったスーパーがこの異世界にも存在していることに驚く。


 (この国を作ったヒナギも異世界転生したって言ってたし、もしかしたら同じ世界から来たのかな?)


 今度機会があったらヒナギに聞いてみようとルナが考えていると、始めてのスーパーに珍しく興奮しているフォーリアは陳列された食料を見て回っていた。


 「これだけ揃っていればこのお店だけで済みそうですね!」


 そう言いながらフォーリアは次々と食材を手に取ってはかごの中へと入れていく。そんなフォーリアの姿を見て、「お母さんみたいだな」と幼少期に母と買い物に行った時の事をルナは思い出す。


 そんな風にフォーリアと並んでスーパーの中を一周する頃には、かごの中は大量の食材で埋め尽くされたいた。


 「随分と買うんだね?」


 「人数も増えましたし、一週間分位は買うとなれば必然的にこの多さになってしまうんですよ」


 「料理を作るって大変なんだね……。いつもありがとね、フォーリア!」


 「いえいえ、私も好きでやってる事なので……。まぁ、どちらかと言えばツバキ様の料理のお世話の方が大変なのですが(ボソッ)」


 「ん?何か言った?」


 「いえ、何でもないですよ。……それじゃあ会計を済ませましょうか」


 そう言ってフォーリアは辺りを見渡し、店員のいる所へと向かう。よく見ればそこはレジがあり、「凄い、レジまであるんだ」とルナは更に驚いた。


 「でもこんなに買ってお金は大丈夫なの?」


 店員にかごのを渡し、商品の会計を待っている間、ふと気になった事をフォーリアに尋ねる。


 「ええ、旅に出る際に族長様から多目にお金を頂いておりましたので」


 とそう答えるフォーリアは、今は亡きリーシャの父親である族長の事を思い出しているのか少ししんみりとしてしまった。「いけませんね」とフォーリアは静かに目を閉じた後、


 「というわけでまだ1000ルビーあるので、多少の物価に差はあっても充分過ぎるほどありますよ」


 と答えた。


 「そうか、それだけあれば大丈夫そうだね」


 ルナも特に族長の事は触れないようにした。因みにルナは以前、フォーリアからこの世界のお金の事を聞いており、大体の目安で1ルビーで果物一つ買えるくらいの金額である。その為フォーリアが持ってるという1000ルビーはかなりの大金だ。


 「それでは会計よろしいですか?」


 そんな話をフォーリアとしていると店員さんも計算が終わったようでフォーリアに話しかけてきた。


 「はい、おいくらでしょうか?」


 財布を開けながらフォーリアが店員さんに尋ねると、


 「全部で500ドラー(・・・・・・)ですね」


 「……………………ん?」


 店員の提示した金額、いや、店員の言った通過の単位にフォーリアは思わず固まってしまう。


 「ええ……と、もう一度よろしいですか?」


 「??500ドラーですよ?」


 「「んん???」」


 そして今度はルナも固まってしまった。それも当然、ドラーなんて通貨の単位は初めて聞いた上にそんな通貨は一枚たりとも持っていないのだ。


 「あ、あのー、このお金は?」


 フォーリアは恐る恐る店員にルビーを見せる。すると店員は申し訳無さそうな顔をし、


 「すいません。聖王国で発行しているお金はこの国では使えませんよ」


 「「ええーーー!」」


 ルナとフォーリアは同時に叫んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ