幕間(1)
「そういえば魔王もルミナス様と同じ出身なんですよね?」
「そうだよ~。こことは別の世界にある日本って国から来たんだ~」
「ニホン……、いつ聞いても信じられませんね。この世界とは別の異世界があるなんて」
「私からしたらこの世界こそが異世界なんだけどね」
魔王国を目指し旅をしているルミナスとミリーは、たまたま寄った小さな町の宿屋の部屋にて夕飯を食べながら談笑をしていた。話の話題はルミナスの故郷であり、密かにこの話を聞くのはミリーの楽しみの一つでもあった。
「まぁ異世界人なんてこの世界に片手で数えられる位しかいないんじゃないかな?私はミリーと会う前も長年一人で色々な所を旅してきたけど、ちゃんとした異世界人と会ったのは魔王のヒナギ君だけだし。あっ!でも、あれ?実はコイツも異世界人なんじゃね?って怪しんだのが一人いたっけ」
ナッツのような食べ物をツマミに果実酒を飲みながらルミナスはそう言いつつ、遥か昔、この世界に来る前のことを思い出す。
日本にいた頃、まだ女子高生だった彼女は不慮の事件に巻き込まれて命を落とし、気付くと辺り一面が白い空間に飛ばされ、そこでなんとも胡散臭い天使エーリスと出会った。そこで彼女はエーリスの提案のもと、この世界に一人目の転生者として異世界転生する事になった。
「…………まぁ、最初は手に入れた魔法の力で好き放題やってたけど、今はこうして気ままに旅してる方が楽しいからね。お陰でミリーちゃんとも出会えたし」
とミリーに微笑みかけるルミナス。
「…………私もルミナス様に助けられたからこそ今こうして生きてますからね。私の方こそこの世界に来てくれて、私を見つけ出してくれてありがとうですよ」
とミリーもお酒を飲んでいるせいか珍しく顔を赤らめて照れている。その姿が可愛くて、ルミナスはその可愛さを肴に再び酒を飲み始める。
「でも、もしかしたら会えるかもね」
「?誰にですか?」
ミリーが尋ねると、ルミナスはグラスに入っている酒を飲み干し、窓の外、魔王国のある方を眺めながら、
「魔法少女…………、もしかしたらね」
と誰にも聞こえないほど小さな声でそう呟くのであった。