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第1話 ツバキのおもてなし(3)

 「それじゃあ歓迎会を始めよう!!」


 リビングの机に並べられた大量の多種多様の料理を見て、ルナはテンション高らかにそう言う。そしてそれに合わせて各々目の前にあるコップを手に持ち、


 「ツバキちゃんにスイセン!改めて私達のチーム?軍?……まぁいいや!私達の家にようこそ!それじゃあ……乾杯!!」


 「「「「(……)乾杯!!!!!」」」」


 ルナの音頭に合わせてフォーリア、ロゼ、ツバキ、スイセンはコップを上げて乾杯をする。


 「おー!どれも美味しそうだな!!」


 「そうですね、私もうお腹がペコペコです」


 並べられた料理にロゼとスイセンは目を輝かせる。


 「じゃあ早速……いっただきまーす!」


 そして我先にと料理に手を延ばしたルナは近くにあった肉料理を口に運ぶ。


 「う~ん♪おいし~!流石フォーリアだよ!」


 「ありがとうございます」


 料理を褒められてフォーリアは嬉しそうに笑みを浮かべる。そんなルナに続いてロゼとスイセン、そしてツバキも並べられた()()()()()()()()()()()を食べ始める。そして口にした者は皆口々に美味しいと言い合い、歓迎会は賑やかに始まった。


▽▽▽

 「なんと!ルナ殿達は聖王国の聖騎士達と戦った事があるのですか!?」


 「そうだよ、あの時は本当にヤバかったんだから」


 そうルナはスイセンに答える。歓迎会は食事を楽しみながらいつの間にかアスカに行く前のルナ達の話になっていた。


 「しかしよくご無事でしたね……。鎖国していたアスカにいた時でさえ、聖騎士の武勇は聞き及んでいましたよ。曰く、聖騎士は一人が一騎当千の強者。敵対したら命はないと噂で聞きました」


 「その噂は間違ってはないぜ。現に俺達は一度、聖王国で聖騎士の一人に全滅したからなぁ」


 とロゼはあの城での雷帝ミラージェとの戦いを思い出しながら、苦笑いを浮かべる。


 「……まぁ、内一人は何もしませんでしたけどね」


 「うっ……、それを言われると弱いな」


 「冗談ですよ、あの時はお互い大変でしたからね」


 とお酒を飲んでるせいか珍しくフォーリアがロゼをからかう。


 「でも本当に強かったよねぇ。……まぁ、もし次戦う時がきたらもう負けないけどね」


 とフォーリアの飲むお酒をを羨ましそうにチラチラと見ながらルナは言う。


 「……大丈夫。その時は私も一緒に戦うから!」


 「うん、頼りにしているよ」


 ツバキの頭を撫でながらそう言うと、「……えへへ」と嬉しそうにツバキは笑う。


 そんなこんなでみんなで話ながら食べている内に、フォーリアが用意した料理の大半が無くなってしまった。


 「あー食べた食べた!フォーリア、御馳走様!!」


 「はいお粗末様です」


 「いやぁ本当にフォーリアの料理は美味しいな!」


 「はい、こんなに食べたのなんて久しぶりですよ」


 「……うん。執事のお姉ちゃんの料理は最高!」


 ロゼ、スイセン、ツバキも満足そうに各々にフォーリアに賛辞の言葉を送る。それを受け、


 「そ……そんなに褒めないで下さい!」


 と恥ずかしそうにフォーリアは俯く。そんな彼女を面白がってかルナとロゼは、


 「よっ!料理も美味しい最高執事!!」


 「フォーリアと結婚する奴は幸せ者だ!」


 とからかい始める。そしてひとしきりいじられ、顔を真っ赤にしたフォーリアは、


 「ゴホンッ、そんな事よりみなさん」


 「あっ、話題そらした」


 「もういいですから!……そろそろデザートなどいかがですか?」


 「えっ!?デザートもあるの!?」


 ルナは目を輝かせる。


 「はいご用意してますよ。……それじゃあ」


 「……私、持ってくる」


 「はい、お願いします」


 席から立ち上がったツバキはすたすたとキッチンの方へと歩いていった。


 「ねえねえ!何を作ったの?」


 「フフ、それは見てからのお楽しみということで」


 そういってる間にツバキは台車に大きなケーキを乗せて戻ってきた。


 「ケーキじゃん!」


 「あぁ!美味しそうだな!」


 そのケーキを見てルナとロゼはテンションが上がる。それは生クリームとフルーツをふんだんに乗せた見るからに美味しそうなケーキであった。


 「ほほう、始めて見る甘味物ですな」


 アスカにはケーキがなかったのか興味深そうにケーキを見るスイセン。しかしその顔は早く食べてみたいという気持ちが伝わってくるほどワクワクしていた。


 「…………じゃあ切り分けるね」


 そう言ってツバキはケーキを切り分け、それぞれの前に運んでいく。


 「それじゃあ早速食べよう!」


 「あぁ!」


 「ええ!」


 ルナの言葉に合わせてロゼとスイセンもケーキを口に運ぼうとし、


 「…………そのケーキ、私が作ったんだよ!(・・・・・・・)


 そんなツバキの言葉に三人は手を止めた。しかし三人の反応は、


 「ツバキちゃんが作ったの!?うわぁ!更に楽しみになったよ!」


 とこれ以上ないほどテンションの上がるルナに、


 「へ……へぇ~、ツバキがこのケーキを…………」


 「作られたのですか……ツバキ様が……」


 ぎこちない笑顔を浮かべるロゼとスイセン。そして心なしか二人の身体は震えている。


 「……執事のお姉ちゃんに教えてもらって作ったの!みんなにお礼をしたくて……」


 とツバキは恥ずかしそうに俯く。


 「最高のお礼だよツバキちゃん!!」


 ルナは嬉しさのあまりツバキに抱きつく。その傍らロゼとスイセンはどうしたものかと手に持つケーキを震わせていると、


 「………………………………(ニコ)」


 フォーリアがそんな二人に対して無言の笑顔の圧力をかける。その笑顔からはちゃんと食べろと言わんばかりだ。


 (ま、まぁ、フォーリアが教えたのなら大丈夫なのか?)


 (前の料理と比べて見た目はかなりまともです。これなら……)


 そんなフォーリアの圧に負け、ロゼとスイセンも食べる覚悟を決める。


 「じゃあいただきまーす!!」


 「「…………いただきます」」


 三人は同時にケーキを口にいれる。


 「「「!?美味しい!!!」」」


 そしてこれまた同時に三人は同じ感想を口にした。


 「凄い美味しいよ!ツバキちゃん!!」


 「あぁ!程よい甘味にふわふわの生地、身体に染み渡るぜ!!」


 「美味しい!美味しいですよツバキ様!私ビックリしました!!」


 三人はそれぞれツバキをべた褒めする。その言葉を聞いて、


 「……えへへ」


 と嬉しそうにはにかむのであった。


 そんなツバキを見て、


 「頑張りましたね」


 と優しくツバキの肩に手を置くフォーリア。そんなフォーリアに、


 「……ありがとう!執事のお姉ちゃん!だーいすき!!」


 とツバキはフォーリアに抱きついた。


 因みにそんなフォーリアは実際のところ、昨日食べたツバキの料理の影響で腹痛に苦しんでいたのは別の話である。


 そしてそれからのツバキは、この一件で料理にはまり、たびたび料理を作ってはその味見|(毒味)をする羽目になったのであった。


 

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