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第1話 ツバキのおもてなし(1)

 「ツバキちゃん達の歓迎会をしよう!」


 アスカから帰国し三日が過ぎた朝、リビングで朝食をとっているみんなにルナはそんな提案をする。


 「……歓迎会?」


 「そう!みんなで美味しいものを食べてワイワイしようよ!」


 「……!御馳走!!」


 ルナの言葉にツバキは目をキラキラさせる。


 「良いんですか?そんな私達の為に?」


 そんなツバキとは対照的に遠慮気味に声をあげるスイセン。


 「良いんじゃねぇか?俺達も実際ここに来て間もないし、親睦を深める良い機会だろ」


 とロゼは賛成の意見を出す。そんなロゼを見てスイセンも「そういうことなら」と頷いてくれた。


 「私達ここに来て直ぐにアスカに行く準備でそれぞれ別の所で生活してたからキッチンにヒナギやミサ達が用意してくれた食材がまだ大量に残っているんだよね。腐らせるのも悪いからそれらを使ってパーッとやろうよ!!」


 そう言ってルナはこの家、もとい前からルナ達の食事の用意をしてくれているフォーリアを見る。実際今食べている朝食もフォーリアが作ってくれたものであり、現状ルナよりもこの家の食材を把握している彼女は、


 「そうですね、確かに残りの食材をどうしようかと考えていたのでルナ様の案は良いと思いますよ」


 「それじゃあフォーリア、悪いけど……」


 「お任せください、腕を降るって最高の料理をご用意致しましょう!」


 とフォーリアは胸をドンッと叩いて承諾する。


 「……執事のお姉ちゃんの料理いつも美味しいから凄く楽しみ!」


 「ですね。フォーリアさんの料理はアスカの城専属の料理人と同等以上の腕前なので」


 魔王国に来て間もないツバキとスイセンもフォーリアの料理の腕前は知っているのでとても楽しみにしているようだ。


 「それじゃあ早速今夜にでも……と言いたいんだけど、私今日はヒナギのところに行かなくちゃいけないんだよね」


 あははと苦笑いを浮かべるルナ。ルナは魔王軍の幹部として一応アスカでの出来事を魔王であるヒナギに報告をしなければならない。本来なら帰ってきて直ぐに報告するべきなのだが、そこはヒナギの厚意で三日の休養期間をくれたのだ。


 「それなら明日の夜でいかがですか?私も何を作るかゆっくりと考えたいので」


 フォーリアはそう提案し、ルナも「ごめんね、それでお願い」と言い、他のみんなも異論は無いようなので、明日の夜歓迎会を開くことに決定した。


▽▽▽

 「さて、何を作りましょうか……」


 朝食を済ませた後、フォーリアは再びキッチンへと戻り大量にある食材を見つめながら考える。


 ルナはヒナギのもとへ行き、ロゼは自身の使役獣であるネリィとルリィの世話、スイセンは町を見てくると言って出掛けている。ツバキも部屋へと戻った為、ルナ達の屋敷はとても静かであった。


 「食材も見たことないものが多いですね……。これとか何のお肉なのでしょう?」


 多種多様の食材を見てフォーリアは頭を悩ませる。しかしそれと同時に未知の食材を使った料理にワクワクとしていた。一人ブツブツと呟きながら思案していると、


 「……執事のお姉ちゃん」


 「ツバキ様?どうしましたか?」


 自分の部屋に戻ったはずのツバキがキッチンへとやって来た。


 「……ツバキでいいよ?」


 「え~と、そう言われましても……」


 仲間になったとはいえツバキは一国のお姫様である。そんなツバキを呼び捨てするのは長年執事として過ごしてきたフォーリアにとっては抵抗があった。


 「………………」


 「………ではツバキ殿で」


 「………気にしなくて良いのに」


 少し不服そうなツバキであるがひとまずは納得したようで、ツバキはキッチンの中へと入り、フォーリアが並べた食材達を見渡す。


 「それでどうしたのですか?」


 フォーリアはツバキに訪ねてきた理由を聞く。するとツバキはフォーリアの事を見上げ、


 「……私も料理がしたい」


 「料理……ですか?」


 フォーリアの言葉にツバキは頷く。


 「……私達の歓迎会嬉しい……、けど私もお姉ちゃん達にお礼をしたいの。……だから」


 恥ずかしいのだろうか、ツバキは頬を赤らめて俯きながらそう伝える。その姿がフォーリアにはとても可愛らしくいとおしく思えた。


 「分かりました。では一緒に御馳走を作りましょうか」


 「………!うん!」


 フォーリアの言葉を嬉しそうにツバキに反応する。フォーリアもフォーリアで可愛い妹が出来たみたいで内心少しテンションが上がっていた。


 「では早速試しに何か作ってみますか?」


 「………うん、頑張る!」


 そう言って張り切った表情をしたツバキは近くにあった食材に手を伸ばす。


▽▽▽

 「それにしても歓迎会ですか……」


 「?何か気になることでもあるのか?」


 町中を歩きながらふと漏らしたスイセンの言葉が気になりロゼは尋ねる。ネリィとルリィの餌やりを終え、二匹を連れて町を散歩してる最中にスイセンと会い、こうして二人で歩いているのだ。


 「いえ、……昔アスカの城でザクロ様の誕生日の宴を開催した時なのですが、ツバキ様がザクロ様に料理を振る舞いと申されましてね。それでツバキご自身で料理を作られたのですが……」


 そこまで言って、スイセンはこの先を口にしてよいのか悩む。


 「……まさか」


 何となく察したロゼはスイセンの顔を見つめる。それにスイセンは「秘密ですよ」と前置きを起き、


 「ツバキ様の料理を食べた者は皆体調を崩しました」


 

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