プロローグ
「ふんふんふーん♪」
とある平野にて一人の女性が箒にまたがってゆっくりと飛びながら鼻歌を歌っている。
「随分とご機嫌ですね。何か嬉しい事でもあったの?」
そんな彼女の横を歩きながらケモ耳の少女が尋ねる。
「久しぶりの魔王国だからねぇ~。お姉さん楽しみで仕方ないんだ!」
「魔王国ですか……、私は行ったことないのですがどういう所何ですか?」
ケモ耳少女の問いに「うーんとね……」と少し考えた後、
「とっても平和で楽しい所だよ。魔王のヒナギ君も凄く良い人だし」
と答えた。
「魔王が良い人……、それだけ聞くと何か違和感がありますね」
「そう?少なくとも魔族を差別し虐げる聖王国のくそ王様よりよっぽどマシだけどなぁ」
「……確かに聖王国には私達もひどい目に合わされてきましたからねぇ」
そんな会話をしながら二人はゆっくりと魔王国グランデリシャへと進んでいく。
「それにさぁ~」
箒にまたがった女性は片方の手で杖をくるくる回しながら、
「何か最近ヒナギのところに面白そうな女の子が仲間になったみたいじゃん?」
「あぁ……、確か“魔法少女”でしたっけ?」
「そうそう!」
箒にまたがった女性はケモ耳少女の顔に近づき、
「魔法少女……まるで私みたいじゃない!!」
と箒から降り、黒のローブを見せつけるかのようにその場でぐるっと回る。
「…………少女?」
「!?ひどい!!お姉さん傷付いたよ!ミリーちゃん!!」
ローブの女性は頬を膨らませて杖でツンツンとミリーと呼ばれるケモ耳の亜人の少女の身体をつつく。
「はいはい……、ぐすぐすしてると魔王国に着くのが遅れますよ?ルミナス様」
そう言ってミリーは杖を払いのけてスタスタと歩き始める。
「待ってよ~ミリーちゃん!」
そんなミリーの後ろから、ルナと同じくエーリスによってこの世界に転生した魔女ルミナスは再び箒にまたがり追いかけるのであった。