第7話 新たな仲間(3)
「帰ってきたぁ~!」
魔王国グランデリシャに到着してすぐにルナは大声で叫ぶ。
「ルナ様!大声で叫びすぎです!周りの人達から注目されてますよ!!」
周囲の視線に慌てるフォーリア、しかしそんなフォーリアに対しルナは、
「まぁまぁ、それにほら……」
そう言ってルナは背後を指差す。そこには、
「………凄く大きい!こんな大きな町、初めて見た!!」
と目をキラキラさせながら辺りをキョロキョロするツバキに、
「こ、これが噂の魔王国グランデリシャですか!?見たことのない建物や設備があちこちに!!」
まるで新しいおもちゃを与えられた子供のようにはしゃぐスイセン。二人のハイテンションぶりは先ほどのルナの叫びなど霞むほど周囲の人達から注目され、行き交う人々に笑われていた。
「あぁ、恥ずかしい……」
「まぁきっと直ぐにあの二人もこの国に慣れるさ」
顔を赤らめるフォーリアにロゼは笑いながら肩を叩く。そんな騒ぎを起こしていると、
「おっ!帰ってきたか」
人々の奥からそう言ってこちらにやって来る人物がいた。
「あっ!ヒナギ、ただいま!!」
「おう!無事で何よりだ」
そう言ってルナとヒナギは互いにハイタッチを交わす。その後ヒナギはツバキ達を見て、
「この子が例の吸血鬼か?」
「うん!ツバキっていうんだ。もう立派な私の仲間だよ!!」
「そうかそうか」
ルナの言葉にヒナギは満足そうに頷き、
「初めまして、俺がこの国の主である魔王のヒナギだ」
と笑顔でツバキに挨拶をする。
「……!ま、魔王様、は、初めまして……」
緊張しているのか蚊のような小さな声で返すツバキ、
「あ、あなた様があの魔王様ですか!!」
そして突然の魔王の出現に声を裏返すスイセン、
「初めまして!私、この度ルナ殿の配下に加えさせてもらったスイセンと申します!!」
とスイセンは勢いよく挨拶をした後深々と頭を下げる。
「そこまで畏まらなくても良いぞ、お前の事もミサから事前に聞いているからな」
とスイセンに対しても優しくそう告げるヒナギ。そして笑顔のままツバキとスイセンの顔を交互に見て、
「これからはこの国の為、……いや、ルナの為に力を貸してやってくれ」
「………勿論!ルナお姉ちゃんの為に頑張る」
「かしこまりました!魔王様!!」
とヒナギの言葉にツバキとスイセンは力強くそう答えた。
▽▽▽
「挨拶は済んだか?」
「あぁ悪い、待たせたな」
ヒナギの背後からタバコを吸いながらだるそうに声をかけてきたのは魔王軍幹部の一人、死霊術師のユリウスだった。
「じゃあ早いとこそいつらを連れていこうぜ。もう何日も徹夜でこっちは疲れてんだ」
「悪いって言ってるだろ………」
ユリウスはそれだけ言うと来た道を返すように歩き始める。
「悪いがルナ、一緒についてきてくれないか?」
「良いけど、どこに行くの?」
「まぁ行けば分かるさ」
そう言うとヒナギもユリウスの後を追うように歩き始めたので、仕方なくルナ達も二人についていく事にした。
▽▽▽
歩き始めて十分ほどで目的の場所に到着した。しかしそこはルナの知っている場所であった。
「私達の家?」
「あぁ、ルナ達に見せたいものがあるんだ」
そう言うとヒナギは普通にルナ達の家に入っていく。少し思うことはあったがとりあえず黙ってルナ達も我が家に入る。
「こっちだ」
「あれ?こんな階段あったっけ?」
ヒナギが示したのは覚えのない地下へと通ずる階段であった。
「悪いがルナ達のいない間に勝手に作らせてもらった。見せたいものはこの先だ」
そう言ってヒナギは階段を下り始めたのでルナ達もついていく。
階段を降りきるとそこには一つの部屋があり、その入り口の前でユリウスとヒナギが立っている。
「それじゃ中に入ってみてくれ」
「……分かった」
そう言ってルナは扉を開け部屋へと入る。するとそこには、
「……え?」
目の前にあるものにルナは驚愕する。それはフォーリア達も同様で、
「お……お嬢様!?」
フォーリアは大声をあげ部屋の中央まで走った。
地下室の中央、そこには綺麗な棺に横たわっているリーシャの身体が置いてあった。
「驚いたか?」
呆然としているルナ達にヒナギは笑いながら説明を始める。
「ユリウスに協力してもらってリーシャの身体を綺麗な状態で保存出来るようにしたんだ」
「苦労したんだぜ」
ヒナギの言葉に合わせてユリウスはタバコを吹かしながらそう告げる。
「ユリウスと俺の魔力を合わせてほぼ生前の状態を半永久的にキープ出来るようにした。これでいつリーシャの魂が身体に戻っても大丈夫だぜ」
「……ありがとう、ヒナギ、ユリウス」
ルナは感謝の言葉を二人に伝える。そして何やらルナの体内も熱くなるエネルギーを感じた。
(リーシャも喜んでいるみたいだね)
きっとそうに違いないとルナは確信し、
「必ずリーシャを復活させてみせるからね。だからもう少し待っててね」
と棺の中のリーシャの頭を撫でながら、強い決意と共にルナはそう呟いた。