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第6話 月下激闘(23)

 気付けばルナは見知らぬ空間にいた。先程まで戦っていた森とは明らかに違う場所である。


 ここは一体どこなのか、ルナは辺りを見渡してみると…………、


 「ルナさん!!」


 突如後ろから何者かに抱きしめられた。そしてその人物が誰なのかルナは振り返らなくても分かった。


 「リーシャ!?」


 「こんな直ぐにまた会えるなんて思わなかったわ!」


 リーシャは抱きしめる力を強くする。それに合わせてルナの背中から伝わるリーシャの豊満なバストの感触も強くなった。


 「…………//////!とっ、所でここは?」


 照れるようにリーシャから離れたルナはリーシャに尋ねる。もしかしてまた自分は夢の中にいるのであろうかと思ったのだ。


 「うーん今回は違うみたいだよ?」


 ルナの考えている事がリーシャに伝わったのか、リーシャはそう言って否定する。どうやら月光花の洞窟で夢の中で会った状況とは違うみたいだ。


 「今回はあの人に呼ばれたみたいだよ」


 そう言ってリーシャはある方を指さす。その指差す方にルナは視線を向けると、


 「…………!ツバキちゃん!?」


 そこには美しい銀髪に赤い瞳を宿した綺麗な人物が立っていた。その容姿を見てルナはツバキだと思ったが、


 「…………違いますよ」


 その女性は透き通るような綺麗な声でそう答えた。確かに言われてみれば、ツバキに容姿こそ似てはいるがどこか雰囲気が違っていた。


 「じゃあ貴女は?」


 ルナの質問にその女性は静かに目を閉じ、


 「…………私の名前はカーミュラ」


 彼女はそう口にし、ルナとリーシャをジッと見て、


 「…………お願いします。私の子孫を助けて下さい」


 そうルナ達に告げた。


▽▽▽

 「貴女が伝説の吸血鬼?」


 カーミュラと名乗る女性を見てルナは思わず凝視してしまう。リンドウらの話からすればカーミュラは遙か昔に存在していた筈だ。そんな彼女がどうしてここにいるのだろうか。


 「…………貴方の考えている通り、私は遥か昔に亡くなりました」


 カーミュラはそんなルナを見て優しく微笑みながらそう告げる。


 「…………長い年月を経て、今はこの世に産まれたツバキという少女。彼女は私の血をかなり濃く受け継ぎました。お陰で私の魂も少しだけ復活する事が出来たのです」


 「う〜んと…………、今の私とルナさんの関係みたいな感じなのかな?」


 リーシャは首を傾げながらそう口にする。その問いに対しカーミュラは、


 「…………そうですね。その人の体内に魔力として存在しているという点では同じかもしれませんね」


 ルナとリーシャの今の関係を理解しているのかカーミュラはルナ達を交互に見てそう答える。


 「それでカーミュラさん、ここは一体どこなんですか?」


 ルナは気になっていた事を質問する。とはいえ先程のカーミュラの発言からおおよその見当はついていた。


 「…………ここは我が愛しの子孫、ツバキの魂といったところです」


 「やっぱりそうだよね……」


 そう言われルナはもう一度辺りを見渡してみた。ルナ達が今いるのは何も無い白い空間だ。しかし少し離れるとどす黒い空間が広がっている。恐らく今いる内側がツバキ本人の魂の拠り所で、外側が暴走して取り込まれてしまっている魔力の範囲なのだろう。


 「じゃああそこにいるのが…………」


 リーシャはとある方向を向く。そこには今まで気付かなかったが、魔力の核に包み込まれたような球体があった。


 「………………はい」


 カーミュラは悲しそうな表情を浮かべ、


 「…………あそこにいるのがツバキ本人の魂です」


 そう答えた。


 「…………あそこにツバキが」


 「!?ザクロ皇子!」


 いつからいたのだろうか、ルナの背後にその球体をジッと見つめているザクロ皇子が立っていた。


 「そしてカーミュラ様、貴方様に会えて光栄に思います」


 「…………我が愛しの子孫ザクロ、よく私の呼びかけに応えてくれましたね」


 「俺はツバキ……、妹の事をこの手で傷つけてしまった。その償いを今ここで果たしたい…………。始祖よ、どうすればいい?」


 未だに光り続ける刀を手にしながらザクロ皇子はカーミュラに尋ねる。


 「…………私にある残り全ての力を貴方に託します。それであの核を壊して下さい」


 そう告げるや否やカーミュラの身体が光り出す。


 「えっ…………、でもそしたらカーミュラさんは……」


 「…………はい」


 不安そうに尋ねるリーシャに相反してカーミュラは優しい笑みを浮かべ、


 「…………私の魂は消滅するでしょう」


 「なっ!?」


 カーミュラの発言にルナは驚く。しかしカーミュラはそんなルナに対し、


 「…………これで良いのですよ。私とあの人の大事な子供達の為なら、…………それに」


 カーミュラは上を見上げる。まるでそこにいる大切な誰かを見つめいるかのように、


 「…………私も早くサクラに会いたいしね」


 そう言い終えたカーミュラの身体の発光は強さを増す。そしてそれに比例してカーミュラの身体も徐々に透けていった。


 「…………ザクロ、私の可愛い息子。ツバキの事はお願いね」


 「…………もちろんです」


 力強く答えるザクロの瞳には涙が溜まっている。


 「…………それと心優しきルナさんとリーシャさん」


 消え行く最中、カーミュラはルナとリーシャに微笑みかける。


 「…………どうか私とサクラの子供達の助けになってあげて」


 「…………任せて下さい!」


 「勿論だよ!!」


 ルナとリーシャの力強い言葉を聞き、満足したカーミュラは光となり消えていった。


▽▽▽

 「実の母とは違えど、我らが始祖カーミュラ様の誇り高き心意気、確かに受け取った」


 カーミュラが光となって消えた事により、ザクロ皇子の持つ刀はより一層輝きを増していた。


 「改めてルナ殿、それとリーシャ殿といったか、ツバキを助ける為、力を貸してくれ」


 「「うん!」」


 ザクロ皇子の言葉に力強く力強く返事をしたルナとリーシャは互いの魔力をザクロ皇子の持つ刀へと流す。それにより刀は淡く光り輝く刀へと変貌した。


 「ツバキ!今助けるぞ!!」


 そう叫びザクロ皇子はツバキを閉じ込める核目掛けて斬りかかる。四人の想いを乗せたその刀はやがて核にヒビを入れ、そして粉々に砕け散った。


 そしてそれと同時に刀は砕け、ルナの意識は再び遠のいていく。


 その刹那、


 (…………ありがとう)


 どこからか優しい声が聞こえて気がした。

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