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第6話 月下激闘(22)

 ルナの特大魔法、魔法光雨(ルミナスシャイン)がミサとツバキの頭上から降り注ぎ、やがて激しい爆発音が周囲に響き渡る。


 「…………っ!ミサ!?」


 ミサの言葉を信じて放ったとはいえ、あれだけの高威力魔法だ、いくらミサとはいえ直撃したら只ではすまないと思い心配する。


 「あは♪間一髪でした♪」


 そんなルナの心配をよそに、呑気な声と共に背後から馴染みのある気の抜けた声が聞こえてくる。


 「…………ホッ、良かっ…………って!大丈夫!?」


 振り返るとそこには傷だらけのミサが笑みを浮かべて立っていた。


 「あは♪その気になれば空間移動でいつでもあの場を回避出来たんですが、それは影に潜れる吸血鬼ちゃんも一緒ですからね♪ギリギリまで吸血鬼ちゃんが逃げないように足止めしてたら少し喰らってしまいました♪テヘッ♪」


 と傷の割には元気そうなミサがそんな調子でルナに答える。


 「それにそのお陰でほら♪」


 と言いながらミサは先程まで自分のいた場所を指さす。そこには、


 「………………ぐっ」


 ミサの足止めにより影に逃げ込むことが出来ず、魔法光雨を直撃したツバキが膝をついて苦しそうにしていた。


 「今の攻撃でかなり吸血鬼ちゃんにダメージを与えられた筈です。残りの魔力量からしても回復するのは難しいでしょう。これで目的は達成ですね♪」


 ウインクをしながらしたり顔のミサがそう告げる。格好つけるようだがボロボロの容姿と相まり、なんとも言えない状況になっていた。


 「さぁルナちゃん♪例の特異性、魔力付与(マジックギフト)を使って下さい♪」


 「分かった」


 ミサに促され、ルナはもう一度魔力を練り、そしてステッキをツバキに向ける。


 「ツバキちゃん……、これでその苦しみから解放してあげるからね」


 ツバキに微笑みかけ、魔法を唱えようとしたその刹那、


 「…………がああああああ!」


 ツバキはけたたましいおたけびを上げた。そしてそれと同時に更に魔力が体内から溢れ出す。


 「なっ!?あやつ、まだこんな力を隠し持っていたのか!?」


 「………………いえ、違います」


 焦るオニヒメと対照的にミサは落ち着き、しかしどこか緊迫した様子を浮かべる。


 「あれは今までの魔力とは何か違うものみたいですよ」


 ミサがそう言う合間にもツバキから溢れ出す魔力はとどまることを知らない。それに、


 「なんかツバキちゃん、凄く苦しそうにしてるよ?」


 ルナも魔法を唱えるのを中断し、ツバキの様子を伺う。


 「………………がァぁぁぁ、…………いやぁぁぁ」


 尚も苦しめいた悲鳴をあげるツバキ、しかし不思議な事に、ルナはツバキから溢れ出す魔力に先程までの邪悪さを感じない。むしろどこか懐かしい、魔力のようにも感じた。


 「どうする!?ミサ様!?」


 「…………困りましたね」


 しかしミサとオニヒメはルナが感じる魔力の温かさに気付いていないようだった。


 そしてルナ達三人、どうすれば良いか悩んでいる所に、


 「ツバキ!!!」


▽▽▽

 「…………!?ザクロ皇子!」


 そこには月光花の洞窟で別れたザクロ皇子、そしてその隣にはリンドウやフォーリア達が立っていた。


 「何とか間に合ったのかな?」


 黒馬獣(ユニコーン)のネリィにから降りたロゼが片手を上げながらルナの元へ駆け寄ってくる。


 「ロゼ達がここにいるって事は聖王国の連中は……」


 「心配いりません。きちんと倒してきました」


 そう言いながらフォーリアもルナの隣へやってくる。


 「…………!オニヒメ様!ご無事ですか!?」


 「大丈夫じゃ、お主もよくやってくれたの」


 傷だらけのオニヒメを見て心配するオニキシをオニヒメも安心した表情で迎える。とりあえず三人とも無事に戻って来た事にルナは安堵していると、


 「…………それでこちらの状況はどうなっていますか?」


 リンドウは苦しそうにしているツバキを見て一瞬心苦しそうな表情を浮かべるが、すぐに冷静さを取り戻しルナ達に状況を確認しようとする。


 「…………分からない。とりあえず暴走した魔力はほとんど全て取り除いた筈なんだけど…………」


 そう言いながらルナも再びツバキを注視する。


 「あれはツバキちゃんの魔力ではありません。明らかに今までの物のは違います」


 「あぁ。…………じゃが不思議とワシの魔力と何か共鳴している様な気もするのじゃ」


 オニヒメもルナと同様、ツバキから溢れる魔力の違和感に気付いたようだ。


 (あの魔力は一体何なの?)


 そんなルナの疑問に答えたのは、


 「…………あれは我らが始祖、カーミュラ様の魔力だ」


 光り輝く刀を携えたザクロ皇子はそう答える。


 「あの洞窟で俺は始祖の想いを受け継いだ。始祖は今、ツバキを助けようとしている」


 ザクロ皇子の持つ刀の光が次第に強くなっていく。


 「俺は今からツバキを…………、ツバキの心を助けに行く!済まない皆、もう少し力を貸してくれ!!」


 ザクロ皇子がそう叫んだ途端、光り輝くザクロ皇子の刀が辺り一面を包み込む。


 そして、


 「………………胸の奥が熱い」


 ルナの中にある何かがそれに反応する。暖かく、優しいあの娘の想い…………、


 「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 やがてザクロ皇子の声と共にルナは不思議な空間へと取り込まれていった。


  


 


 

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