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第3話 三人の旅路(2)

 集落を出て3日が過ぎた。初日の魔獣の群れとの戦いから、ある程度の魔獣なら今の俺達でも問題無く対処できると分かり、差程苦労することなく旅を続けられている。……まぁ、戦闘面の話だけなのだが。


 「ほら!ルナさんも早くこっちにおいでよ!冷たくて気持ちいいよ!」


 とリーシャが川で水浴びをしながら俺を呼ぶ。……全裸で。


 「あーうん。でもなぁ……」


 リーシャ曰く、今俺達の周囲には狭い範囲ではあるが周りから視認されない不可視の結界を張っているらしい。なので人に見られる心配は無いようだが、それでも野外で裸になるのは抵抗がある。


 「旅を始めてからお風呂どころか身体もまともに洗えてないでしょ?スッキリするから二人もおいでよ!」


 リーシャは急かすように俺とフォーリアを呼ぶ。まだ水浴びをするのに躊躇いがある俺はチラッと横にいるフォーリアに顔を向ける。フォーリアは軽く溜息をつき、


 「あぁなるとお嬢様は私たちが一緒に水浴びするまで川から上がってきませんよ。風邪を引かせては大変ですし、諦めて我々も水浴びするとしましょう」


 と苦笑いを浮かべながらフォーリアも服を脱ぎ始めた。髪を解き、スラスラと服を脱ぐにつれてフォーリアの白い肌が露出されていく。フォーリアの裸……、というよりリーシャ以外の女性の裸を見るのは始めたのでドキッとしてしまう。


 |(フォーリアもフォーリアで、リーシャと違う色気があるなぁ…。スラッとしていて引き締まっている身体、胸は微かに膨らんでいる程度だが逆にそれがフォーリアの魅力なんだと最近分かってきたんだよね)


 とフォーリアの裸を見ながら俺はそんな事を考えていた。


 「あの……、そんなに私を見られていかがされましたか?」


 と俺の視線に気付いたフォーリアが手で胸を隠しながら少し恥ずかしそうに聞いてきた。


 「あっ、いやぁ……。こう見るとフォーリアって本当に女の子だったんだなぁって……」


 俺は苦し紛れにそんな事を口にしてしまった。……そうフォーリアの地雷を……


 「……ほぅ。それはどういう意味ですか?ルナ様」


 とフォーリアは怖い笑みを浮かべながら脱いだ服の横に置いたレイピアに手をかけた。


 「ちょっ、まっ……!」


 「ふふふっ、ルナ様には一度私の事をしっかりと教えた方が良いのかもしれませんねぇ……」


 と全裸にレイピアを持つという何とも形容し難い姿でぬらりくらりと俺の方へと歩み寄って来る。


 「おおお落ち着こうよ。ね、フォーリアさん?」


 俺は後退りながらフォーリアとの距離を保つが、背後に川がある為直ぐに逃げ道がなくなってしまった。


 |(正に背水の陣だな、ハハッ……。もうなるようになれ!)


 俺は覚悟を決め、服を全てその場に脱ぎ捨て、川へと飛び込んだ。


▽▽▽

 「あ〜スッキリした!」


 川から上がって俺は伸びをしながらそう呟く。変な流れで水浴びをする事になったが、入ってみたら思いの外気持ち良く、リーシャ、フォーリア共々思いっきり楽しんでしまった。


 「お嬢様、ルナ様。こちらのタオルでお身体をお拭きください」


 といつの間にか着替えまで済ませていたフォーリアが、馬車から俺とリーシャの分のタオルを持ってくる。因みにフォーリアとは水浴びをしている間、私の身体をくすぐり回すことで和解した。……というかこっちの世界の女性は同性の身体を触るのが好きなのか?


 「ありがとう、フォーリア。……へくちっ」


 同じく川から上がったリーシャもフォーリアからタオルを受け取ったが、身体が冷えたのか、可愛らしいくしゃみをする。


 「流石に川から上がったばかりだと少し冷えるね……。それなら、えい!」


 と言って俺は指をパチンと鳴らす。すると指の先から小さい炎が飛び出し、河原にいい感じの焚き火が完成した。


 「それじゃ、こっちに来てみんなで暖まろ!」


 俺はそう言いながらタオルで身体を拭きつつ焚き火へ向かった。


 「凄〜い!ルナさん、炎系の魔法も使えるのね!?」


 とまた目をキラキラと輝かせながらリーシャも焚き火へ駆け寄ってくる。そして下着だけ着けてリーシャは焚き火の前に座り込み「暖か〜い」と暖を取り始めた。


 「?そういえば今の魔法を使った時変身してなかったけど、その姿でも魔法は使えるの?」


 とリーシャが焚き火に手をかざしながら尋ねてきた。


 「あ〜これね、ぶっちゃけ私の魔法って詠唱する必要はないんだ。さっきの炎は右手だけ簡略的に魔法使える用に調整したって感じ」


 とリーシャに説明する。そこにフォーリアも近づいてきて、


 「ならいつも変身する時や魔法使う時は詠唱しなければ良いのでは……と思いますが、詠唱するのも魔法少女って事なのですかね?」


 「あったり〜!フォーリアも魔法少女の事分かってきたじゃん!」


 フォーリアの微笑を浮かべながらの質問に俺は親指を立てて笑顔で答える。


 「まぁ、まだ数日ですが一緒に旅をしてきましたからね。それよりお嬢様、ルナ様、折角なので今日はこのままここで1泊しませんか?ちょうど火も起こしてくださいましたので、このままご飯を作ろうかと」


 とフォーリアが提案する。確かに長い間水浴びをしたせいか太陽も沈み始め、今から出発しても2〜3時間程で夜になり、進むのは危険になるだろう。なら、少し早いがここで野営の準備をするのはありかもしれない。


 「そうね。折角水浴びして身体を綺麗にしたんだから今日は休みましょ!」


 とリーシャもフォーリアの考えに賛成のようだ。俺もフォーリアに頷くと、


 「かしこまりました。それでは食事の準備をしますね」


 そう言ってフォーリアは食事の準備を始めた。俺とリーシャは身体を暖め終えたのでそれぞれ服を着、馬車に野営する為の道具を取りに向かった。


 「旅を始めて3日過ぎたけど、この3日間は新鮮な事が多すぎて楽しかったし、時間が過ぎるのもあっという間だったわ」


 「そうだね。こんな冒険みたいな旅はした事ないから、私も凄く楽しい」


 「改めてありがとねルナさん。私を連れてってくれて。きっとあのまま集落で生活していたらこんな経験出来なかったと思うの」


 「お礼を言うのは私の方だよ。この世界に来て右も左も分からない私に、リーシャもフォーリアも親切にしてくれて、一緒に旅をしてくれてるんだもん!」


 「ふふっ、こうやってずっと3人仲良く一緒にいたいね」


 「そうだね……、こうして3人ずっと」


 と話している内に馬車に着いた。俺とリーシャは必要な物を取り出しフォーリアの所に戻ろうとすると、


 「!?」


 とリーシャが突然背後を振り返った。


 「リーシャ、どうしたの?」


 リーシャの様子に何か異変があったのだと考え、俺は荷物を1回置き、念の為魔法少女へ変身する。フォーリアもこちらの様子に気付いたのか、レイピアを構えてこちらに向かってきた。


 「誰かが結界の中に入ったみたい」


 リーシャは族長から貰った杖を構えて森の中を見つめる。俺達の周りには水浴びを始めた時からリーシャが結界を張っている。この結界は俺達の姿を隠すだけでなく、他者が無意識に結界に近付けないよう細工がされているそうだ。にも関わらず何者かが結界に近づき、更に結界内に侵入してきたみたいだ。


 俺、リーシャ、フォーリアはそれぞれ森の方を見つめる。やがてガサガサと茂みをかき分ける音が聞こえ、やがて2人組みが姿を表した。


 「何者ですか!?」


 フォーリアがレイピアを2人組みに向けそう尋ねると……


 「ああ、スマンのじゃ。敵意はないから武器を下ろして欲しいのじゃ」


 と背の低い年寄り口調の女の子が話しかけてきた。


 「済まない、少し道に迷ってね。それで森を彷徨っていたら何やら魔力を感じたから、とりあえず魔力の源を追ってここに来た」


 と女の子に続けて上下真っ黒な衣服に赤のマント、そして左右の腰にそれぞれ剣と杖を備えた男が話し始めた。


 そしてこの2人組との出会いが俺達の今後に大きく関わってくるのは今の俺達には知る由もなかった。



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