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第6話 月下激闘(17)

 「ワシは暴走した吸血鬼の魔力を制御出来んぞ?」


 スイセンと別れ、ツバキとスミレのいる月触の泉へ向かう道中、オニヒメはそうルナに伝える。


 「同じ鬼族のオニヒメでも難しいの?」


 歩きながら横にいるオニヒメにルナは尋ねる。その質問にオニヒメは難しい顔をして、


 「同じ鬼族と言っても魔力の質が根本的に違うからのぉ……。暴走した吸血鬼の魔力を制御する方法が分からんのじゃ」


 オニヒメはお手上げといった感じで両手を挙げてそう答える。


 「まぁ魔力の暴走はそう起きる事でもないですからね♪」


 「そうなの?」


 「はい♪そもそも暴走させられる程の魔力を有している魔族なんて極一部ですよ?それこそ本来魔王軍の幹部クラスの魔力の持ち主が絶望に呑み込まれた際に起きるものです。……まぁルナちゃんは直近でご自身とお仲間さんが暴走したので暴走がよくある事だと勘違いしても仕方ないですけどね♪」


 ミサの説明を受け、前のエルフの集落で起きた自分とリーシャの魔力暴走がイレギュラーな出来事であったことをルナは再認識する。そして自身は魔力の暴走をリーシャに助けて貰ったので、今回のツバキの暴走も何かしらの方法があると勝手に思っていたのだ。


 「まぁ、じゃからといって暴走を止める手段が無いわけでは無いのじゃが…………」


 そう言うオニヒメの表情は少し曇っている。


 「ですね♪魔力を吐き出してもらえばいいんですから♪」


 オニヒメの考えをミサは理解しているようだ。


 「吐き出させる?」


 ピンとこないルナはオニヒメとミサを交互に見渡す。それにミサはいつもの軽い感じで説明をし始めた。


 「簡単に言うと、吸血鬼ちゃんの暴走している魔力を全て使い切ってもらうんです。暴走している魔力を空にしちゃえば暴走は治まりますよ♪」


 ミサの説明を聞きルナは納得する。


 (そうか、暴走の元さえ消えればツバキちゃんを元に戻せるんだ)


 呆気なく解決方法が分かりルナは安心するが、


 「といっても簡単な話じゃないんじゃがな……」


 とオニヒメは難しい顔をしてそう答える。


 「…………と言うと?」


 「まず相手は鬼族の頂点である吸血鬼じゃ。始祖に比べれば弱いとはいえ、それでも内に秘めている魔力量は凄まじいじゃろう。それを空にするとなれば、かなりの手間になる筈じゃ」


 「そうか……、私とオニヒメでそれを耐えなきゃいけないんだね」


 オニヒメに言われてルナはその難しさを理解する。ツバキの覚醒し暴走した力はルナも月光花の洞窟で目撃している。そのツバキ相手に魔力を全て使い果たせつつ、こちらはそれを全て受け止めなければならない。それにルナは極力ツバキの事を傷つけたくないと思っている。どう考えても普通に戦うより難しい。


 「それもそうなんじゃが、問題はその後じゃ」


 「その後?」


 オニヒメの言葉にルナは首を傾げる。


 「??お主も魔族なら分かるじゃろ?」


 「??」


 ルナが不思議がっているのをオニヒメも不思議に思ったのか目をぱちくりさせてルナを見つめてくる。しかしルナはこの世界に魔法少女として転生してまだ日が浅い。その為魔族の事も自身の魔力の事もよく分かっていなかった。


 そんな二人の様子を見て、


 「魔王様が仰った通り、ルナちゃんはあまり魔族の事を知らないんですね♪」


 とミサは少し驚いた様子を見せつつも、同じ転生者である魔王ヒナギの副官としてルナの境遇もある程度聞いていたようで、ルナがオニヒメの言っている意味を理解していないのも納得しているようだ。


 「ルナちゃん、魔族にとって魔力とは生命エネルギーの一部なんです。分かり易く例えるなら身体中を循環する血液と似たようなものと思ってください」


 とミサはルナに魔力について説明をする。そしてそれを聞いてルナはある結論に至り、


 「えっ……、って事は魔力が0になれば……」


 「はい…………」


 ルナの言葉を受け、ミサはルナの考えは合っていると言わんばかりの表情をし、


 「()()()()()()()()()()()()()()()


 とそう残酷に告げた。


 「そんな…………」


 考えたとはいえ、やはりミサの言葉を聞きルナはショックと動揺で言葉を失ってしまう。


 「本来魔力は暴走してしまったら最期、己の魔力を使い果たすまで暴走し、そのまま死にゆくものなのじゃ。稀に暴走した魔力をコントロールする者もいるが、それをあの娘に期待するのは無謀じゃの」


 ミサに続け、オニヒメも暴走した者の末路をルナに言って聞かせる。


 「なのでルナちゃんとお仲間のエルフちゃんは異例中の異例なんですよ?きっと何か特別な魔力を有しているのでしょう」


 「ならどうしたら…………」


 「うむ………………」


 ルナの言葉にオニヒメは何も答えられない。戦う前からして手詰まりの状態にルナは焦るが、


 「だからこそルナちゃんの出番なんですよ♪」


 とそんな気落ちしているルナとオニヒメにミサは明るい声でそう言った。


 「え?」


 「どういう事じゃ?」


 ミサの言葉にピンと来ないルナとオニヒメは同時に首を傾げる。


 「オニヒメちゃんも話には聞いてるでしょ?エルフの集落での戦いを♪その時のルナちゃん達の戦いを♪」


 「…………!その手があったか!」


 合点のいったオニヒメは驚いたようにルナを見る。


 「え?え?どういう事?」


 話についていけないルナはミサに答えを求める。


 「ルナちゃんがあの戦いで得た特異性ですよ♪」


 「……………………あっ!」


 ここまで言われてルナはようやく理解する。


 「吸血鬼ちゃんの暴走した魔力をギリギリまで消費させて、空になる寸前にルナちゃんの魔力付与(マジックギフト)で吸血鬼ちゃんに魔力を与えるんです♪そうすれば暴走した魔力を上書きしつつ、暴走を止められる筈です♪」


 ミサの言葉を聞きルナは胸が熱くなるのを感じた。


 (私とリーシャの力でツバキちゃんを助けられる!)


 「恐らくこの世界で今、吸血鬼ちゃんを救えるのはルナちゃんだけですよ♪」


 そんなミサの言葉を受け、ルナは己の中にある熱い想いを感じ、そしてツバキ達のいる場所へと再び向かいだした。

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