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第6話 月下激闘(16)

 「「はぁ……はぁ……」」


 「…………あら、あんなに意気込んでいた割には大した事ないのね」


 息を切らすルナとオニヒメを見ながらツバキは笑いながら髪をなびかせる。


 ミサがスミレを連れ去った後、ルナとオニヒメはツバキと対峙したがツバキは二人相手でも苦しげな表情を一切見せず、むしろ余裕な態度をとっていた。


 「まだまだ……」


 「…………まだやるの?」


 ステッキを構え直すルナをツバキは鬱陶しそうに見る。それでもルナは構わず魔力弾(ショット)を撃ち放つが、ツバキは軽々しくそれらを避けていった。


 「ちょっと影に潜るのはズルくない?」


 いくら攻撃しても影に潜られては当てようがないのでルナは軽く文句を言うが、


 「…………戦いにずるいとかないでしょ?」


 そんなルナの文句もツバキは嘲笑う。


 「なら隙を突くのも悪く思うでないぞ!」


 そんな隙だらけのツバキの背後をとったオニヒメは小刀で斬りかかるが、


 「…………こんなの隙でもなんでもないわよ」


 ツバキは振り返る事もせず右手に持つ刀を背に回しオニヒメの攻撃を受け止めた。


 「チッ……!」


 攻撃を防がれたらオニヒメは追撃をせず、ツバキと距離をとってルナの隣へと戻った。


 「弱ったの……、思ってたより遥かに強いぞ」


 「うん。まるで聖騎士を相手にしてる気分だよ」


 オニヒメの漏らした弱音にルナも苦笑いする。それほど今目の前にいる吸血鬼としての力を覚醒させたツバキの力は凄まじかった。


 「ルナよ!影に潜らせる暇を与えないよう同時に接近戦で攻め込むのじゃ!」


 「了解!…………武装変換(ステッキチェンジ)!」


 オニヒメに呼応してルナは武器(ステッキ)を双剣に変え、同時にツバキの左右からオニヒメと攻撃を仕掛ける。


 「………………………………」


 左からルナの双剣による激しい攻撃、右からはオニヒメの小刀による素早い連撃を受けつつも、ツバキは涼しい顔でそれらの攻撃を受け止めていく。両サイドから攻撃に合わせてツバキは右手に持つ刀とは別に、影から生み出した刀を左手に持ち、二本の刀を使いこなしていく。


 「…………鬱陶しいわ」


 そしてルナとオニヒメの攻撃を同時に受け止めたと同時に、ツバキの影から幾本もの棘が現れてそれがルナとオニヒメの二人を襲った。


 「…………ぐっ!」


 「…………ッ!」


 ツバキとの間にいきなり現れた影の棘によりルナとオニヒメの攻撃の手は止められる。更に影の棘は鋭さも強く、ルナは左腕をオニヒメは右脚を貫かれた。


 それぞれ貫かれた箇所から血を流しつつ、再びルナとオニヒメはツバキから距離をとった。


 「…………これでもう諦めてくれるかしら?」


 ダメージを負った二人を見てツバキは静かにそう呟く。影により生み出された刀と棘を影に戻したのを見るとツバキからルナ達を襲う意志は無いようだ。


 そんな様子を見たルナは、


 「…………フフ」


 静かに、しかし嬉しそうに笑った(・・・)


 「…………何が可笑しいの?」


 そんなルナを見てツバキは苛立った様子を見せる。


 「いや……、やっぱりツバキちゃんはツバキちゃんだなって……」


 「…………何が言いたいのかしら?」


 「ツバキちゃんはやっぱり優しい子だよ」


 「…………………………」


 ルナの言葉にツバキは黙り込む。


 ルナは双剣を下ろして通常のステッキに戻し、ツバキの目を見て話始めた。


 「今の攻撃だってそう、ツバキちゃんがその気になれば私達を殺せたよね?でも私達の腕と脚を攻撃した……。これ以上戦いたくないからじゃないの?」


 「…………そんなことっ!」


 ツバキが初めてルナ達に動揺を見せる。


 「初めて海で会った時、見ず知らずの私を助けてくれたツバキちゃんだもん。根っこの優しさまでは変わらないんだよ」


 ルナは傷を負った腕を抑えつつもゆっくりとツバキの方へ歩き出す。


 「今は混乱して、絶望に呑み込まれてるけど……」


 ルナが近づくのに合わせてツバキは後ずさる。


 「だからね、もう一度言うよ」


 ルナは立ち止まり、痛みを堪えて笑顔で両手を前に広げる。


 「ツバキちゃんを助けに来たよ。ツバキちゃんの絶望は全部私にぶつけて。…………私がそれを受け止めるから」


          ドクンッ


 ルナの言葉にツバキの心の奥底が反応する。そして、


 「……………………え?」


 気付けばツバキの目から涙が流れていた。


 (…………うん。やっぱりまだ完全に自我を失ったわけじゃないんだ)


 その様子を見てルナは安堵する。そしてステッキを構え直し、


 「さぁ!ツバキちゃんの想いを私にぶつけて!!」


 ルナはツバキにそう叫んだ。


 「…………う」


 ルナの言葉を受けツバキは身体を震わせる。


 「…………言わせておけば、………………なっ!」


 それはまるで葛藤している様にも見えた。絶望の渦の中にある僅かに残ったツバキの気持ち……、それが絶望に抗おうとしている。


 「…………ッく、…………まて…………」


 ツバキの身体の震えがより強くなり、そして………、


 「…………助けて、…………お姉ちゃん……」


 それはほんの数秒だった。ツバキの意識が絶望から抜け出し表に出る。しかしすぐ後にどす黒い魔力がツバキから溢れ出し、ツバキの身体を覆い被さる。


 それでも、


 「私に任せて!!」


 ツバキの想いをルナは受け取った。そして暴走したツバキを受け止める為、ルナは魔力を練り上げる。

  

 

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