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第6話 月下激闘(9)

 イーサンの魔導武器から放たれた二発の銃弾はオニキシの心臓目掛けて飛んでいく。普段のオニキシなら銃弾を避ける事は造作もない事であるが、


 「…………くっ!」


 重力負荷に身体が上手くついていかず銃弾を躱すはギリギリであった。


 「オラオラ!どうした強大鬼族(ハイオーガ)!」


 そしてそれを好機とみてイーサンは攻撃を畳み掛けていく。撃ち放たれて続ける銃弾をそれでもオニキシは避け続けて行くが、


 「ガッ……!」


 とうとう一発の銃弾がオニキシの肩を貫き、オニキシの右肩からドクドクと血が流れる。


 「ハハッ!ようやく当たったか!戦う前の威勢はどこにいったんだぁ!?」


 イーサンは愉快そうに大声で笑い攻撃の手を止め、その隙にオニキシは魔力を傷口へと流し込んで回復をする。


 「とと………。相変わらず魔族っていうのは回復力が高くてめんどくせぇなぁ」


 その様子を見てそうイーサンはボヤくが、再び攻撃に転じることはなかった。


 「どうした?攻撃してこないのか?」


 その様子をオニキシは不審に思う。


 「魔導解放は消耗が激しいんだよ。この好機は惜しいが、テメェが回復してる間に俺も少し休みたいと思ってな」


 「…………そうか」


 イーサンの言葉にオニキシは静かに目を閉じてそう呟き、


 「…………ならこの戦いを終わらせよう!!」


 既に回復を終えていたオニキシが今度は攻めに転ずる。イーサンが気を抜いている為か重力負荷は掛かっておらず、オニキシはあっという間にイーサンの目の前まで肉薄出来た。


 「おいおいおいおい!そりぁねぇだろ!?」


 完全に油断していたイーサンは慌てて魔導武器を構えようとするが、


 「遅い!!」


 イーサンが何かをする前にとオニキシは棍棒を真一文字に薙ぎ払い、イーサンの脇腹へと直撃する。


 「…………なーんてな」


 しかしイーサンは何事も無かったかのようにその場に立っている。オニキシの強大鬼族(ハイオーガ)による怪力の一撃、モロに直撃すれば胴体が吹き飛ぶ程の威力だ。当然オニキシは手加減などせず、この一撃で終わらせるつもりでいた。しかしイーサンはダメージを負った様子は一切ない。


 「あれあれあれ?今日一驚いた表情を浮かべてるな強大鬼族!!」


 そしてそんなオニキシを見てイーサンは大笑いし、


 「…………で?まさか渾身の一撃を防がれて終わり、だなんて考えてないよなぁ?」


 そうイーサンが告げた瞬間、


 「……………………!!」


 突如オニキシの棍棒からもの凄い衝撃がオニキシの身体全体へと伝わり、逆にオニキシが吹き飛ばされてしまった。


 「な……何が…………」


 オニキシはふらふらになりながらも何とか立ち上がる。ダメージはかなり強く、あばら骨が何本か折れているようだ。


 「馬鹿かお前?戦闘中に無防備になる訳ねぇだろうが!!」


 イーサンはそう笑いながら魔導武器を発砲する。撃たれた銃弾をオニキシは避ける事ができず、腹、脚と撃ち抜かれた。


 「何が起きたか教えてやるよ!!」


 イーサンはそう言うと着ている白衣に手をやり、


 「魔導防具・反射白衣(リフレクトコート)。その名の通り受けた衝撃を相手に返す、この俺が自ら手掛けた一級品の魔導防具だ」


 イーサンは誇らしげな顔でオニキシに丁寧に教える。


 「はぁ……はぁ……、敵にそんな情報教えて良いのか?」


 「別に構わねぇさ」


 オニキシの問にイーサンは即答する。


 「何度も言うが俺は科学者だ。研究し、作り上げたものを他人に見せたくなる性なのさ。それは相手が魔族でも変わらねぇ」


 イーサンは楽しそうにそう話す。オニキシはこのイーサンの話を信用出来ないが、ことこの魔導防具に関してはイーサンは嘘偽りなく話している。それがイーサンの科学者としての矜持でもあった。


 「おら!いつまでも休んでんじゃねぇぞ!強大鬼族(ハイオーガ)!!」


 話はこれで終わりと言わんばかりにイーサンは再び魔導武器での攻撃を仕掛ける。


 「チッ!」


 イーサンは銃弾を5発撃ち、それをオニキシは重い身体を動かして何とか避けようとするが、


 「なっ!?」


 オニキシへかかる重力負荷がさらに重くなり、オニキシは急所を避けるのに精一杯になってしまった。


 「惨めだな強大鬼族!!科学者だからって舐めてるからこんな事になるんだぜぇ!!」


 重力負荷によって避けられない攻撃を放つ魔導武器と受けた衝撃をそのまま跳ね返す魔導防具、攻守共にイーサンは優位に立っている。それをイーサンは自覚しているからこそオニキシを煽り、今までの恨みを晴らすべくじっくりといたぶろうと考えていた。


 …………そしてこれはイーサンの大きな間違いであった。


 ダメージを喰らいながらもそれでもオニキシは立ち上がる。その目にはまだ闘志は消えていなかった。


 「すいません、オニヒメ様…………師匠…………」 


 「あん?」


 突然謝りだしたオニキシにイーサンは戸惑う。


 「そしてイーサンといったか…………お前にも謝っておこう」


 「なんだぁ?舐めててすいませんでしたってか!?」


 イーサンの言葉にオニキシは何も返さない。代わりに静かに魔力を練り始める。


 「…………魔力進化(ダークエヴォル)


 その呟きと共にオニキシの身体を黒炎が包み込んだ。


 


 




 

 

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