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第6話 月下激闘(8)

 月光花の洞窟入口付近にて、強大鬼族(ハイオーガ)であり魔王軍幹部鬼神オニヒメの副官でもあるオニキシと聖王国聖科学会魔道武器開発チーム副所長のイーサンは互いの武器である棍棒と上級魔導武器を相手に向けつつ向き合っていた。


 「…………良いのか?」


 「あん?何がだ強大鬼族?」


 オニキシは左右をチラッと見る。姿は見えないがルナの副官二人と聖王国の上級魔導武器を持つ二人の武人ルーミスとバームスはここから少し離れた所で今も戦っているはずだ。


 「お前は見たところ戦い慣れしてないだろ。……言っておくが私はあの二人より強いぞ(・・・)


 オニキシは静かにそうイーサンに告げる。オニキシのこの言葉はハッタリなどでは当然ない。ロゼもフォーリアも潜在能力はかなりのものでありその力を少しづつ開花させてるようだが、現状の強さではオニキシの方が上回っている。しかしイーサンは兵士でもなく科学者。どう見てもルーミスとバームスより弱そうに見えた。


 「はっ!心配なら要らねぇさ」


 そんなオニキシの忠告など聞く耳を持たないといった様子でイーサンは鼻で笑う。


 「確かに俺はあの二人(バームス、ルーミス)ほど闘い慣れてはいねぇけどよぉ、どうして俺がそんな二人を差し置いてこの派遣隊のリーダーを務めてるか分かるか?」


 イーサンはニヤリと笑いながら淡く光っている(・・・・・・・)魔導武器を撫でる。


 「俺は聖科学会魔導武器開発チームの副所長だ。当然開発した魔導武器の性能を確かめる為にある程度の戦闘はした事ある。魔獣は勿論、魔族相手でも今まで難なく勝ってきた。…………それはコイツがあるからさ!」


 イーサンは魔導武器の銃口を上に挙げ、そのまま一発発砲する。


 「…………なんのつもりだ?」


 「なぁに、ただの景気づけだ」


 イーサンはケラケラと笑いながら再び銃口をオニキシに向ける。


 「じゃあとっと始めようぜ強大鬼族。俺はお前達にことごとく邪魔をされてイライラしてるんだ」


 「…………そんなのは知っとこと無いが……」


 オニキシは腰を落として魔力を高める。


 「早く終わらせたいのはコチラもだ!貴様を倒し、オニヒメ様の元へと合流する!!」


 オニキシは一気に踏み込んで高くジャンプし、イーサンの脳天目掛けて棍棒を振り下ろす。


 ドガーン!!


 「…………?」


 「とと……、危ねぇなおい!こんなの喰らったらペチャンコになっちまうだろうが!!」


 イーサンは素早く背後に逃れることで直撃を回避する。オニキシの振るった棍棒は地面に当たり、その衝撃で大きな音と共にでかい穴が出来た。


 しかしオニキシは今の攻撃にどこか違和感を覚える。


 (おかしい……) 


 オニキシは警戒心を高め注意深くイーサンを観察する。そして先程の攻撃における自身の着地点を改めて見て、


 (なぜ着地点がズレた?)


 オニキシは一撃で勝負を決める為にイーサンの脳天目掛けてジャンプした。躱された時は魔導解放による身体強化によるものだと思ったが、今自分が立っているのはさっきまでイーサンが立っていた位置から5()()()()()()()()()()()。当然オニキシがジャンプの計算を間違えるわけもない。…………となれば、


 ((イーサン)の何かしらの力で動きが鈍ったと考えるべきか)


 オニキシは棍棒を握る手の力を強め、イーサンを睨みつけるように注視する。


 「おいおいどうした?もう終わりか強大鬼族(ハイオーガ)!!」


 そんなオニキシを煽るようにイーサンは笑う。


 (…………もう一度試してみるか)


 そんな煽りなど微塵も気にせず、オニキシは再びイーサンに攻撃を仕掛ける。今度はジャンプはせずに一気に駆け寄ってイーサンの胴目掛けて棍棒をなぎ払おうとするが、


 「!?」


 「あらよっと!」


 この攻撃もイーサンには届かない。オニキシの棍棒をなぎ払う頃にはまたもイーサンはオニキシの攻撃範囲外に移動している。


 しかしこの一連の流れでオニキシは理解した。イーサンの動きも魔導解放によって多少早くなってはいるが、それよりも根本的な要因…………、


 「動きが鈍くなっている(・・・・・・・・・・)…………」


 オニキシは自身の身体を色々と動かして確認する。身体自体は問題なく動かせてはいるが、どこか重りをつけられてるような感覚があり、少しづつであるがそれが強くなっている気がする。


 「お?ようやく気付いたか強大鬼族」


 そんなオニキシの様子を見てイーサンは拍手をしながら語り出す。


 「それがこの魔導武器の魔導解放による力、重力負荷だ。ある一定の領域内の重力を操り、相手の動きを鈍らせることが出来る」


 「一体いつの間にそんな……」


 そこまで言ってオニキシは気付く。


 「空に向けて撃ったあの時か!」


 「ご名答!」


 イーサンは再び拍手をし、


 「この技の欠点は発動までに溜めの時間が少しかかる事なんだが…………、強大鬼族、テメェが俺の話に付き合ってくれたおかけで難なく発動出来たぜ」


 イーサンのこの重力負荷は魔導武器にエネルギーを溜め、そして発砲する事で発動する。イーサンはオニキシとの戦闘前の軽いトークでその時間を稼いでいたのだ。


 「悪いがこの戦場は既に俺のテリトリーだ!もうお前に勝ち目はないぜ」


 イーサンは不敵に笑い、魔導武器から銃弾を発砲した。

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