表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
129/184

第5話 吸血鬼覚醒(7)

 「……とまぁ、これがこの国に伝承されている吸血鬼カーミュラと眷属サクラの話だ」


 リンドウはルナ達にカーミュラとサクラの出会いを話す。物語には続きがあるようだが、時間に余裕もないのでここで一回区切ったらしい。


 「確かにその話を聞いた感じだと、あのクソ吸血鬼オタク女はその月触の泉って場所に向かいそうですね♪」


 「……言い方悪すぎない?」


 「あは♪つい本音が♪」


 ミサの毒舌にルナがつっこむと、ミサは舌を出してそう言った。


 「ではとりあえず私達もその月触の泉に向かいましょうか?」


 フォーリアは濡れた身体と服をタオルで拭きながらルナに尋ねる。海に吹き飛ばされたフォーリアとロゼは、あの後無事に海から上がってきた。しかし当然全身がびしょ濡れだったので、ミサが部分的空間移動を使って自室からタオルをフォーリアとロゼの二人分持ってきてくれたのだ。


 「そうだね。とりあえず私達は月触の泉って場所に向かおう。…………後は」


 ルナはザクロ皇子へ視線を向ける。ザクロ皇子は先程のスミレに操られ、自ら妹であるツバキを刺してしまったことへの自責の念が拭いきれないようで、リンドウが伝承話を聞かせてくれた時から俯いていた。


 「…………申し訳ないが私とザクロは少し休んでから合流します」


 ザクロ皇子の様子を見てリンドウはそう判断したようだ。当然ルナ達もこんな状態のザクロ皇子を連れて行くわけにはいかない。しかし、


 「でも月触の泉っていうのはどこにあるんだ?俺達誰も場所を知らないよな?」


 ロゼの言う通り、そもそもルナ達はこの国に来てまだ数日である。小さい島国とはいえ当然この国の地理の事は知らないし、月触の泉なんて先程初めて聞いた名前であった。


 「それなら心配いりません。この男に案内させますので」


 そう言ってリンドウは一人ポツンと立っているスイセンを指差した。


 「…………へ?」


 突然自分が指名された事にスイセンは驚く。


 「り、リンドウ様!?」


 「月触の泉ならこの国の者なら場所を把握してます。お前も知ってるよな?」


 「それは……まぁ……」


 「ならこの男を案内役として連れて行って下さい」


 とリンドウはスイセンの答えを聞かずにルナ達にそう提案する。


 「私達は案内出来る人がいるなら嬉しいけど……」


 ルナもルナで何か申し訳なくスイセンをチラッと見る。見たところスイセンは戦いに全く慣れていないようだ。そんな男をあの凄まじい吸血鬼と妖刀アキギリを持つスミレの元に連れて行くのは少し可哀想な気がしてきた。


 「……ええと、私が行っても迷惑に……」


 「案内役を引き受けてくれれば、お前の聖王国との内通の件は不問にしてやる」


 「…………案内役を引き受けさせて頂きます」


 リンドウの言葉にスイセンは諦めたようにそうルナに告げる。


 「……ええと、ありがとう。スイセンさんの身はちゃんと守るからね」


 ルナは泣きそうな顔をしているスイセンに優しくそう告げた。


 その時だった、


 「!?ルナさん防御魔法を!」


 「!?魔法防壁(マジックシールド)!」


 突然ミサが叫び、それに合わせてルナはその場全員を覆うような魔法防壁を発動する。そして魔法防壁を張った直後、魔法防壁に多数の銃弾のような物が襲いかかった。


 「何事!?」


 いきなりの攻撃を防ぎ切り、ルナは銃弾の飛んで来た方向を見る。するとそこには、


 「おいバームス、防がれてるぞ」


 「次は仕留めますよ」


 「私も混ぜてください」


 武器を構えた三人の人間が立っていた。


 「っ!アイツら!」


 三人の姿を見て真っ先に反応したのはロゼであった。


 「ロゼ、アイツらは誰?」


 「俺達が相手した聖王国の連中だよ。さっきフォーリアと倒したと思ったんだけどな」 


 「あれが……」


 ロゼの説明を受け、ルナは目の前に現れたイーサン、バームス、ルーミスの三人を見る。ルナは初めて会うが、ロゼやフォーリアからスイセンを利用してツバキを聖王国へ連れて行こうとした連中と聞いている。リンドウの作戦でオニキシとフォーリアとロゼの三人でツバキに変装したオニヒメを奪い返し、その後ザクロ皇子を拉致したが、それもフォーリアとロゼによって失敗している。


 「……でも様子が先程とは違いますね」


 そんな三人を見てフォーリアはレイピアに手を置き警戒する。ロゼ達は苦戦すること無かったと言っていたが、先程の攻撃は不意打ちとはいえ結構な威力であった。


 「厄介だな。……アイツら魔導解放してるぞ」


 イーサンらの様子を見てオニキシは舌打ちをする。


 「魔導解放って?」


 「聖王国が開発する魔導武器。その魔導武器のエネルギーを自身の体内に流し込んで魔導武器と一時的に一体化するいわば魔導武器の切り札だ」


 ルナの質問にオニキシはそう答えた。するとそんなオニキシへイーサンは拍手をする。


 「へぇ〜、魔族の分際でよく知ってるじゃねぇか。ご名答、これは魔導武器の中でも上位魔導武器以上に実装されている最後の切り札、魔導解放だ。これでお前らをぶち殺してやるよ」


 そう言うとイーサンは拳銃を構え発砲する。しかし()()()()()()()


 「がっ!」


 そして次の瞬間、オニキシは何かの衝撃に撃たれたように吹き飛ばされた。


 「ハハッ、強大鬼族(ハイオーガ)のテメェには借りがあるからな!恨みまとめて返さてもらうぞ!」


 そう言ってイーサンは続け様に見えない銃弾を発砲し、オニキシは何とか防ごうと棍棒を構えるが、見えない銃弾はオニキシの全方位から襲いかかり、それらの攻撃をオニキシはまともに喰らってしまう。


 「オニキシ!!」


 その様子を見てルナは急いでオニキシの援護に回ろうとするが、


 「来るな!!」


 オニキシの声にルナは立ち止まる。


 「さっき話した通り今は時間に余裕が無い。ルナさん達は急いでツバキ達を追って下さい!」


 かなりのダメージを受けているはずだが、オニキシは立ち上がり棍棒をイーサンの方に向ける。


 「俺も付き合うぜオニキシさん」


 「私もお供します。彼らとは因縁もありますしね」


 ロゼとフォーリアはそう言うとオニキシの隣に立つ。


 「…………任せていいんじゃな?」


 「もちろんです、オニヒメ様」


 「………よし」


 オニキシの力強い返事を聞いてオニヒメは納得し、


 「いくぞルナ、ミサ!ワシらで吸血鬼を止める!」


 オニヒメはそう言ってルナを見る。


 ルナは静かに目を閉じて一呼吸をし、


 「フォーリア、ロゼ任せるよ。絶対無事に再開するからね!」


 「かしこまりました」


 「ルナもツバキの事頼んだぞ」


 「任せて!…………よし行こう!」


 そう言ってルナとオニヒメは走り出す。


 「はいはーい♪じゃあスイセンさんも行きますよ♪」


 「ちょっ!ちょっと!!」


 ミサはスイセンをお姫様抱っこしルナとオニヒメの後を追い走り出した。 


▽▽▽

 「意外と見逃してくれるんだな」


 ルナ達が立ち去るのを特に止めなかったイーサン達にロゼは少し驚いた。またリンドウもザクロ皇子を連れひとまず月光花の洞窟の中へと避難している。


 「聖王国の兵士、そして聖騎士ニルファー様の部下として負けたままではいられ無いんですよ」


 そう答えたのは双剣を構えているルーミスであった。


 「あぁ、我らにとって魔族に敗北することは許されない」


 そう答えるバームスは手に持つ魔導武器をフォーリアに向けて構える。


 「負けられないのは私達も同じです。ルナ様の側近としてお相手致します!」


 そんなバームスに向けてレイピアを構えるフォーリアは臨戦態勢をとる。


 「じゃあ始めようか!!」


 「オニヒメ様たちの邪魔はさせない!」


 イーサンとオニキシは真正面から睨み合う。


 こうして月光花の洞窟において、魔王軍に属するものと聖王国に属するもの、三者ずつによる最後の戦いが始まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ