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第4話 月下動乱(5)

 「それにしても遅いね」


 夕飯を食べ終えても尚、集合場所であるここ月光花の洞窟にザクロ皇子、リンドウ、スミレの三人は現れなかった事にルナは不安を覚えた。


 「そうですね……、何かトラブルでもあったのでしょうか?」


 ルナと同様に異変に不安視するするフォーリアがその場から立ち上がり、周囲に彼らがいないか確かめる。しかし当然の事ながら、ルナ達以外の人影は見当たらなかった。


 「そういえばお昼寝する前、ここら辺一帯に結界を張るって言ってなかった?それでここに来れないって事はない?」


 ルナはミサの方を向きそう尋ねる。その質問にミサは、


 「結界自体はとっくに解いているのでそれは無いと思いますよ?フォーリアさん達が来るまでは起きてましたし、そこから結界を解いて私もお昼寝したので♪」


 「まぁ、かなりウトウトしていたが一応は起きてたぞ」


 とミサの発言をロゼが保証する。


 「ミサのことだから寝落ちしたと思ったけど、ロゼが言うならそうなんだね」


 「私の信用無さすぎでは!?」


 隣でわめくミサのことは無視し、ルナ達はこれからどうするかを考える。


 「ルリィを呼び出して空から一度辺りを探ってみるか?」


 「いや、それはやめた方がいいでしょう。いちおうまだこの国に先程の聖王国の連中がいる可能性もありますし、目立つ行動は避けるべきかと」


 とロゼの提案をフォーリアが止め、「まぁ空からは嫌でも目立つしな」とロゼは納得し、


 「…………それなら、ネリィ!」


 そう言うとロゼの左手の人差し指にはめられている黒い宝石の指輪が光だし、ロゼの前に黒獣馬(ユニコーン)のネリィが現れた。


 「最近知ったんだが、ネリィにはこんな特技もあるんだ……、ネリィ!黒煙」


 ロゼがそうネリィに命令すると、ネリィは身体から黒い煙の様な物を出し始め、やがてそれはネリィの身体全体を纏い、ネリィの姿を消してしまった。


 「あれ!?ネリィはどこにいったの?」


 「目の前にいるぜ。…………ネリィ、もういいぞ」


 ロゼがそう言うとルナの目の前にネリィは姿を現す。


 「これなら目立つこと無いし、ネリィのスピードなら広範囲でも短時間で探索できる」


 そう言ってロゼはネリィの背に乗り、


 「それじゃあ辺りをグルっと見てくるぜ」


 「待ってください!私も一緒に行きます」


 そう言ってフォーリアもネリィの背に跨る。


 「状況が分からない以上、単独で動くのは避けた方がいいでしょ?」


 「だな。助かるぜ!」


 フォーリアの言葉にロゼは頷きそう返す。


 「うん、じゃあ二人ともお願いね。…………それと」


 ルナはフォーリアとロゼ二人にそう言って、その二人を手助けしてくれるネリィの頭を撫で、


 「ネリィも二人のことおねが…………」


 「……………………ガブッ」


 「なんで!?」


 ネリィはそんなルナの手を噛み付いた。


▽▽▽

 フォーリアとロゼが未だに来ないザクロ皇子達の様子を探りに行き、月光花の洞窟にはルナ、ミサ、オニヒメ、オニキシ、ツバキの五人だけになる。


 「それにしても夜になれば雰囲気がだいぶ変わるんだね」


 ルナは自分の周囲に広がる景色を見てそう呟く。


 「ですね♪とても幻想的で素敵です♪」


 ルナの隣に立ち、同じように景色を眺めるミサもそう呟いた。


 ちょうど月がルナ達の頭上にあるのも相まって、月の光が辺り一面の花々に降り注ぎ、それがそれぞれの花が持つ綺麗な花びらを際立たせる。多種多様な花びらの色が淡く光り、その光景はまさに月光花…………、月の光りの花の相応しい名前だとルナは感心した。


 「…………久しぶりに来たけど、やっぱりここは夜の方が好き」


 いつの間にかルナの傍に来たツバキは、幻想的に輝く花畑を見ながらそう口にする。


 「普段はここに来ないの?」


 「…………夜はいつもお城の部屋にいなきゃいけないの。私の中にある力は夜になると活性化しちゃうから」


 ツバキは自身の胸に手をあてる。


 そして花畑を静かに見つめるツバキの表情に、ルナはどこか悲しみじみたものを感じた。


 「始祖である吸血鬼は夜になるとその力が強まると言われておる。その血を強く受け継いでおるのじゃから当然じゃ」


 「…………うん。私の国の吸血鬼伝説でもそう伝えられている」


 「そうみたいですね。…………昼間の時より今の方が吸血鬼ちゃんの魔力を強く感じます♪」


 「人の血を交えてる魔人でこれほどの魔力を有しておるのは、さすがあの伝説の吸血鬼の生まれ変わりじゃな」


 まだ相手の魔力量を感知出来ないルナには分からないが、ミサやオニヒメから見たら、純粋な魔族でないツバキの内に秘めた魔力量は凄まじいそうだ。


 「同じ魔人のフォーリアやロゼよりもやっぱり多いの?」


 「はっきり言ってレベチです♪」


 とルナの質問にミサはそう答える。


 「…………魔力っていうのがよく分からないけど、やっぱりこういう力の事?」


 そう言うとツバキの姿は()()()()()()()()()()()


 「ほほぉ、影移動が使えるのか!」


 その様子にオニヒメは驚いた表情を浮かべ、やがてツバキは今度はルナの影から頭だけ現す。


 「…………気付いたら影の中に入って、その中を移動出来るようになった。…………でも他には何も出来ない」


 そう言って再びルナの影の中に潜り、そして今度はオニヒメの影から飛び出した。


 「魔力はたくさんあるけど、その使い方がまだ分からないみたいですね♪…………いや、魔力がまだ身体に馴染んでなくて使えないが正しいかな?」


 とミサはツバキの体内の魔力を眺めるようにじっと見てそう答えた。


 「でも使える魔力が増えれば色んな事ができるじゃろ。それこそ伝説の吸血鬼が使ったとされるあの魔法も…………」


 とオニヒメが語るその時、


 「皆さん、話の途中ですが……」


 とオニキシが割って入ってきた。


 それに呼応してミサもある一点の方に視線を向け、


 「えぇ、どうやらお客様みたいです♪」


 とルナに教える。


 ザクロ皇子達が来たのか、それともフォーリア達が戻って来たのかとミサの見る方にルナも視線を向けると、


 「……………………スイセン?」


 ツバキがそう名を口にした人物は、ルナ達の知らない白衣の着た研究者のような人物だった。

 

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