第3話 吸血鬼救出作戦(12)
「ここですね♪」
先程の研究員から聞いた場所に来たルナ達は手分けして隠し階段を探し、ミサが違和感のある床に気付いて見つける事に成功した。
「しかしなんと言うか…………」
スミレは苦笑いを浮かべ、
「やはりミサ殿は敵にしたくないですね……」
部屋中に転がっている意識を無くした研究員達を見てそう呟いた。
この部屋に着いた瞬間に、ミサは部屋の中にいた10人程の研究員を瞬く間に気絶させている。
その手際の良さにルナも、
「ミサってほんと、凄い子なのかアホの子なのか分からなくなるよ……」
と心の声を漏らしていた。
ミサは見つけた違和感のある床を外すと、そこには地下へと続く階段が出てきた。
「それじゃあ行きましょう♪」
とミサは階段をスキップしながら降りていき、それにルナとスミレは苦笑いを浮かべながら後に続く。
階段自体はさほど長くなく、割と直ぐに地下へと辿り着いた。
「ツバキちゃんはどこにいるのかな?」
地下の通路は薄暗く、ルナは辺りをグルっと見渡すが部屋らしきものは見つけられない。
「とりあえず進んでみよう」
幸いな事に地下通路は一本道のようなので、捜索するのには苦労しなさそうだ。
ルナ達は一応灯りをつけず、ゆっくりと地下通路を進んでいく。
やがてルナ達は地下通路の突き当たりへと辿り着き、一つの部屋の入口前に立つ。
「ここ以外に部屋らしき物は見当たらなかったから、コレが隠し部屋かな」
「先程ミサ殿が脅した研究員が嘘を言ったとは思えませんし、ここで間違いないと思います。…………開けてみますか?」
スミレの言葉にルナとミサは頷く。
二人の反応にスミレも頷き返し、スミレはノックをした後、扉に付いていた鍵を外して扉を開ける。
「……………………スミレ?」
「ツバキ様!よくぞご無事で!!」
「………………??」
部屋の中では隅のベットに腰を掛けているツバキが、突然現れたスミレ達をジッと見ており、
「…………あっ、昨日海にいたお姉ちゃん達だ」
スミレの後ろに立っていたルナとミサにもツバキは気付いたようで、ひょっこりと顔を横にして、ルナの顔を覗き込む。
「昨日ぶりだね。……ツバキちゃん、君を迎えに来たよ」
「…………迎え?」
ルナの言葉の意味が理解出来ないのか、ツバキは首を傾げながら、
「…………ツバキ、今日の研究は?」
「研究の事はもういいんですよ……。もう終わったんで」
「………………???」
スミレの言葉を聞いてもツバキは未だ自分の状況が分からないようだ。
「…………………………………………!」
ツバキは少し考え込み、やがて一つの結論に辿り着いたのか、手をポンッと叩きどこか納得のいった表情を浮かべて立ち上がり、
「…………それじゃあ行こう」
とルナ達にそう告げる。
「えーと……、どちらにでしょうか?」
今度はルナ達がツバキの言ってる事が理解出来ず、スミレがツバキに尋ねた。
その問いもツバキは不思議に思ったようで、
「………?私を聖王国に連れていくんじゃないの?」
さも当然と言いたげな口調でツバキはそう言った。
「えっ…………、何でそう思ったの?」
ツバキの口から出た言葉にルナは驚き、そう思った理由を尋ねる。
「…………聖王国って私の中にある力を狙ってるんでしょ?」
「う、うーんと……、少し違うかな」
聖王国はツバキの吸血鬼の力を欲しているのではなく、排除しようとしている。ツバキの考えは微妙にズレている事に気づいたルナは、ツバキの目をジッと見て、
「ツバキちゃん。聖王国はとっても危ない国なの。だから間違っても向こうに行こうだなんて考えないで」
自分と大事な仲間の身に起きたことを思い出しながら、ルナは真剣な口調でそう言い聞かせる。
しかしそんなルナの言葉を聞いたツバキは首を横に振り、
「…………でも聖王国の事でお兄ちゃんは困ってるんでしょ?…………私が聖王国に行って、それでお兄ちゃんの助けになるなら、私はそれでいいの」
とツバキは悲しそうな目をしつつも、覚悟の籠った強い口調でそう言った。
ツバキのような小さい女の子が、これほどの覚悟をしていた事にルナは言葉を失ってしまう。
スミレも同じなのか、ルナと同様に驚いて口を閉じている。
そしてそんな空気の中、
「あはっ♪吸血鬼ちゃんはブラコン………いたっ!」
変な事を口走らうとしたミサの頭をルナが叩いた。
「とりあえずいつまでもここに居てはしょうがないので、ここから出て吸血鬼ちゃんをお兄様の所に連れて行きましょう♪」
頭を擦りながらミサはそう提案する。
「それもそうだね……。スミレさん、月光花の洞窟って場所分かる?リンドウさんにそこで合流するように言われてるんだけど」
「はい、そこなら案内できます」
「じゃあお願い!とりあえずツバキちゃん、私達を信じて付いて来てくれる?」
「…………うん、分かった。最期にお兄ちゃんに会えるんだね」
ルナの言葉にツバキは頷き、そう言ってベットから立ち上がった。
そしてそんなツバキに、
「絶対に最期になんてさせないからね」
とルナは力強くそうツバキに伝える。




