第3話 吸血鬼救出作戦(11)
「取り乱してしまい申し訳ありません……」
「いえ……、コチラのアホの子が悪いので…………」
「ちょっ、誰がアホの子ですか♪」
スミレ含む三人にミサはもう一度姿消しの魔法をかけ、ルナ達は互いの情報を交換し合う。
「じゃあやっぱりリンドウさんが言ってた手助けしてくれる人って……」
「はい、先程リンドウと合流してコチラに来るよう言われました。今は聖王国の使者と交渉を行ってる筈です」
「なら今のところは予定通りみたいですね♪」
「…………詳しく聞いても良いですか?」
ルナ達はスミレにリンドウが考えた作戦を伝える。
「…………なるほど。あの方が魔王軍幹部の一人、鬼神オニヒメだったのですね」
スミレはどこか納得した様な表情を浮かべる。
「……オニヒメちゃんの事知ってるんですね♪」
「噂程度ですけどね……。それで身代わりの方は上手くいきそうなのですか?」
「リンドウさんが言うには、聖王国にはツバキちゃんの特徴は伝わってるだろうけど、見たことある人はいない筈だから、強い魔力を纏って外見さえ見繕えば誤魔化せるだろうって。私もツバキちゃんに一回会ったけど、オニヒメの変装は似ていたと思うから、大丈夫じゃないかな」
「それなら安心です。…………では私達も、」
「うん。ツバキちゃんを助け出しましょう」
「じゃあ行くとしますか♪」
そのミサの言葉と共に、ルナ、ミサ、スミレは一気に研究所近くまで駆け寄る。
どうやってこっそりと正面から入ろうかとルナは考えたが、スミレが裏口がある事を教えてくれ、ルナ達は正面からぐるっと回って裏手に回る。
そしてスミレの言う裏口は直ぐに見つかり、周囲に人もいないので侵入しようと裏口のドアを開けようとするが、内側から鍵が掛かっているようで、開けることは出来なかった。
そこでミサが「お任せ下さい♪」と言って、先程使った魔法を用いて入口の内側へと視界と腕を空間移動させ、鍵を開けてルナとスミレを中へと招き入れた。
「私を引っ張りあげた時も驚きましたが、改めて便利な魔法なのですね」
「そうですね。きっと昨日お城に潜入した時も、この魔法を使ったんじゃないかな」
「そうですよ♪今使ってる姿消しの魔法と空間移動魔法を使えば、大抵の場所には潜入できるので♪」
「……ミサ殿が味方で良かったと思います」
「とりあえず中には入れたから、後はツバキちゃんを見つけるだけだね。……因みにスミレさん、ツバキちゃんの居場所に心当たりは?」
ルナの問にスミレは首を横に振る。
「まぁしょうがないか……。どうする?手分けして探す?」
「いえ、離れるのは得策じゃないですね♪」
ルナの提案にミサはすぐ反対する。そしてミサは周囲をキョロキョロ見渡し、
「私に考えがあるので付いて来て下さい♪」
と言ってルナ達の先頭に立って歩き出した。
ルナとスミレはミサの後を追いながら、周囲に気付かれぬよう慎重に歩いて行く。
そしてミサはある部屋の前で立ち止まると、
「ここがちょうどいいですね♪」
と言うとなんの警戒もせず普通にドアを開け、その部屋へと入っていく。
その行動に驚いたルナとスミレも慌てて部屋の中に入り、
「ちょっと!いきなり開けて大丈夫なの!?」
「大丈夫です♪ちゃんと中に誰もいないのを確認してますので♪」
とミサは目を紅く光らせながらそう言い、
「じゃあここから探しますね♪」
と魔力を練り始める。それに合わせミサの足下には魔法陣が浮かび上がる。どうやらコレが見つからない様に、誰もいない部屋を探して中に入ったようだ。
「この魔法でツバキ様を探すのですか?」
「違いますよ♪」
不思議そうにミサの様子を眺めてそんな質問をしたスミレに、ミサはキョロキョロと辺りを見渡す仕草をしながらそう返した。
「今私は視界を空間的に繋げてこの研究所内を見て回ってます。それで吸血鬼ちゃんを発見出来ればいいですが、聖王国の使者がこの国に来たからには、恐らくどこか見つからない様な場所に身を隠してるでしょう。だから……」
そこまで言ってミサはある所で視線を止め、
「見つけました♪」
そう呟いてニヤリと笑い、先程スミレを自分の元へ引き寄せた時みたく、腕を何か手繰り寄せる様に動かし、
「そーれ♪」
と言って、一人の研究員らしき男を目の前に空間移動させた。
「えっ?えっ!?」
突如別の部屋に連れてこられた事に驚いてる男は、辺りをキョロキョロと見渡す。そしてルナ達に気付き、
「ど、どうしてここに!?」
と尻を床につけながら壁に寄りかかって男はそう叫んだ。
そしてその男を黙らす為か、
ダンッ
とミサは男の顔のすぐ横の壁に蹴りを入れ、
「騒ぎを起こしたくないので、死にたくなければ静かにして下さい♪」
といつの間にか悪魔の角を生やして、ミサは研究員の男にそう呟く。
男は恐怖のあまりにコクコクと頷き、それに満足したミサは足をどかして男の髪を掴み、男の耳元に顔を近づけて、
「ねぇ……、吸血鬼さんはどこに隠しているんですか?」
と囁く。
研究員は吸血鬼というワードに「!?どこでそれを?」と冷や汗を垂らしながら驚くが、
「細かい事は気にしないで、早く教えて下さい♪」
と研究員の喉に尖った爪先を当て再度囁く。
「わ……、私が先程居た部屋の床にある隠し階段を降りた先の部屋です」
と声を震わせながらそう答え、
「そうですか、ありがとうございます♪」
と言って研究員の頭を軽く突く。すると研究員は意識を失ってその場に倒れ込んだ。
「それじゃあ、吸血鬼ちゃんの居場所も判明したので、お迎えに行きますか♪」
と満面の笑みを浮かべてミサはルナ達にそう言った。
そしてその光景を間近で見ていたルナとスミレは、
「「ドSだ…………」」
と呟いた。