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第3話 吸血鬼救出作戦(7)

 「身柄を確保(・・)する?」


 イーサンの言い放った言葉にスイセンは戸惑う。


 「あぁ、俺は未だに信じてないが、害は無いとはいえ、かつて世界を滅ぼしかけた伝説の吸血鬼の生まれ変わりだろ?そんな危険分子を俺達聖王国は放置はできねぇってわけだ」


 とイーサンはスイセンに近づきながらそう語り、スイセンの目の前まで来ると、イーサンはスイセンの肩に手を置き、


 「だからよぉ……、本当にその吸血鬼の生まれ変わりっていうのがいるなら大人しく引き渡せや。コッチできちんと処分してやるからよ」


 と耳元でそう囁いた。


 その囁きにスイセンはなんとも言えない不安と恐怖を与えられ、


 「じ……事前の約束では、私と吸血鬼の身柄は保護(・・)してくれる筈では……」


 スイセンは身体と声を震わせながらも、何とかイーサンにそう尋ねる事が出来た。


 そしてそんなスイセンの問いにも、イーサンはただただつまらそうに、


 「分かんねぇかな……、そもそもお前みたいな田舎の研究者なんて俺達は要らないし、吸血鬼なんて化け物が仮に居たら、即刻殺すに決まってるじゃねぇか」


 「そ……そんな……」


 イーサンの言葉に余程ショックを受けたのか、スイセンはその場に膝から崩れ落ちてしまう。


 そんなスイセンに、イーサンは蔑むような視線と嘲笑うかのような笑みを浮かべ、


 「とりあえず、お前は大人しく吸血鬼の最期を見届けておけ。…………くれぐれも俺達の邪魔をするなよ」


 と言い放ち、これで話は終わりだと言うみたいにイーサンは白衣を着直す。


 「いやはや、我が国の者が大変失礼な真似をして、深く謝罪申し上げます」


 「チッ…………今度は誰だ?」


 スイセンとの話を終わらせ、再度出発しようとした矢先にまた別の男が現れた事に、イーサンは舌打ちをする。


 「これは挨拶が遅れて申し訳ない。お初にお目にかかります、私はこの国の政務を担当しておりますリンドウと申します」


 と挨拶をしてリンドウは頭を深く下げる。


 「リ……、リンドウ様?」


 突如現れた、アスカの文官の中でも最年少にして一番優秀と噂されているリンドウが、聖王国の使者と密会をしている前に現れた事に、スイセンは驚きと動揺を隠せないでいる。


 「死にたくなければ私に話を合わせろ」


 リンドウは頭を下げながら、イーサンらに声が聞こえないよう小声でそうスイセンに伝える。


 「…………で?文官さんが何の用だ?また前回みたいに吸血鬼なんていないって言って俺達を追い返しにでも来たか?」


 とイーサンは笑いながらリンドウに尋ねる。


 その質問にリンドウも同じく笑い(・・・・・・・)


 「…………いえ、そちらに()()()()()()()()()()()()()


 と返事をした。


 「…………あ?」


 リンドウの言ってることが理解出来ずイーサンが固まっていると、


 ピコーンピコーンピコーンピコーンピコーン


 イーサンの手に持つレーダーがけたたましい音ともに強い反応を示した。


 そしてガサガサという音と共に、森の中の木々と草木を掻き分けながら、銀髪赤眼の少女(・・・・・・・)が現れた。


▽▽▽


 〜約二時間前〜


 「それじゃあ行こうか」


 ルナはそう皆に言って、馬車から降りて城の入口向けて歩き出す。


 「大きくはないですが、近くで見ると迫力のあるお城ですね」


 ルナの隣に立つフォーリアがアスカの城を見上げながら、そんな感想を口にする。 


 「この国の中枢だろうからね……。あっ、ザクロ皇子が待ってるよ」


 正面にはルナ達の到着を待っていたのであろうか、ザクロが城の入口前に立っている。そしてザクロの皇子の隣に見知らぬ青年も立っていた。


 (ザクロ皇子の隣にいるのは誰だろう?見た目的にはこの国の役人みたいだけど)


 ザクロの隣にいる青年を気にしながらルナ達は入口の方へ歩いて行く。


 「御足労頂き感謝する」


 ルナ達が入口に着くと直ぐに、ザクロはそう言って頭を下げ、隣にいる青年も同様に頭を下げる。


 そして二人が頭をあげると、ザクロの隣に立っていた青年が一歩前に出て、


 「お初にお目にかかります。私はこの国で政務を担当している文官のリンドウと申します。此度は、我らの救援に来て頂いたこと、誠に感謝しております」


 とリンドウは丁寧に挨拶をし、再び頭を下げる。


 「リンドウは私が最も信頼している男であり、この国で一番頭の良い役人だ」


 ザクロはリンドウを余程信頼しているのか、皇子としては見せないリラックスした態度で隣に立っている。


 そんなザクロの言葉に「照れるからそんな褒めるな」と頭を上げたリンドウはザクロを軽く小突く。


 そしてルナ達を見渡して、


 「わざわざお城まで来て頂いたのに申し訳ないが、貴方達に早速協力してもらいたい事があります」


 と真面目な表情に切り替えてそう口にする。


 「私達に出来ることなら何でも言ってください」


 リンドウの言葉にルナも真剣な表情でそう返す。


 元々ルナ達はザクロ皇子と協力して、ツバキを助ける為にここに来ている。今更協力を断る理由なんて無かった。


 「助かる。…………では早速だが」


 そう言ってリンドウはニヤリと笑い、


 「聖王国の連中を騙し、ツバキ様をお救いする。その為に、貴方様にツバキ様の身代わり(・・・・・・・・・)を演じて欲しい」


 とオニヒメを見つめてそう言った。

 

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