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第3話 吸血鬼救出作戦(4)

 「本当にこんな田舎臭い島国に、吸血鬼の生まれ変わりがいるんですか?」


 パタパタと手で仰ぎながら、白衣を身に纏った男が近くにいる部下に声を掛ける。


 「ハッ、内通者からはその様に報告を受けております」


 「…………んで?何人かは先触れでこの国に来たんでしょ?その時に見かけなかったの?」


 「アスカは"吸血鬼などこの国にいない"、の一点張りでして……、自由に動き回る時間も与えられず、追い返されてしまいました」


 先程とは別の部下が白衣の男の質問に答える。白衣の男はそれを聞いて、「チッ、使えねぇな」と吐き捨て、手に持つレーダーの様な機械に目をやった。


 「…………だがまぁ、確かにこの国には強い魔力の持ち主がいるみてぇだ。流石にここからじゃあ、遠すぎて詳しくは分からねぇがな」


 機械に映る強い赤の信号を見ながら、白衣の男は笑う。


 そして後ろで待機している二人の兵士の方を向き、


 「一応その吸血鬼と戦闘になったら頼りにしていいんだよな?」


 と尋ねる。


 さしてその問いに、


 「お任せを、その為に俺達も派遣されたんです」


 「我らの主、聖騎士ニルファー様の名に恥じぬ働きをお見せしましょう」


 と銃を持つ男と双剣を持つ女が自信に満ちた表情でそう答えた。


 その二人の返事に満足そうに白衣の男は頷き、


 「それじゃあ乗り込むとするか!」


 そう言って白衣をバサッと広げ、アスカの城へと歩き始めた。


▽▽▽

 「それじゃあツバキ様、今日も宜しくお願い致します」


 「………………………………うん」


 聖王国の派遣隊が城に向かって進み始めた頃、そんな事を知らないスイセンはいつもの様に、ツバキの身体を使い研究を進めようとしていた。


 「それではいつも通り麻酔から…………」


 「スイセン様!!」


 研究を始めようと、手に持つ注射をツバキに刺そうとした瞬間、突如研究室に入ってきた一人の部下の声によって中断されてしまう。


 「…………なんですか?」


 中断させられたことに少し不機嫌になるスイセンは、研究室に来た部下を軽く睨みながら尋ねる。


 「そ、それが……、聖王国からの使者が城に向かって進行中とのことです!」


 「…………そうですか」


 部下からの報告にスイセンは静かにそう答える。しかし内心では、


 (おぉ!思ったより早いお迎えじゃないですか!)


 と嬉しさと喜びが込上がっていた。


 しかし当然、スイセンが聖科学会と繋がっていることを、他の研究員は知らない。なのでスイセンは、この研究所の所長として取るべき行動を取る姿勢を見せる事にする。


 「……それで、今回来た聖王国の使者は、どれ程の規模なのですか?」


 「えーと……、物見の報せでは、白衣を着た男を中心にその部下と思われるのが5人程、そして銃を持った男と双剣を携えた女が率いている兵士が100人程です」


 「兵士100人?」


 部下からの報告にスイセンは眉をひそめる。


 (迎え……としては兵士の数が多いですね)


 スイセンは事前に、自身の身柄と今後も研究に必要不可欠なツバキの身の安全を聖科学会に保証してもらっている。


 (なら、この兵士の数は一体……)


 「あの……、スイセン様?」


 黙り込んで考えにふけっていたスイセンに部下が声を掛ける。


 「あぁ……、すいません。とりあえず、ツバキ様はこの研究所の地下部屋に一旦隠れてもらいましょう」


 そう言うとスイセンはツバキに付いている拘束具を外し、ベットから起き上がらせる。


 「ツバキ様、申し訳ございませんが、今日の研究は中止しますので、コチラへ来て頂けますか?」


 「……うん、分かった」


 ツバキはそう返事をしてベットから降り、スイセンの隣に立つ。


 「ではそこの二人でツバキ様を隠し部屋にお連れして下さい」


 「「ハッ」」


 指名された部下の二人は返事をするとツバキを連れて部屋へと出て行った。


 「さて…………、私も少し離れるので後は頼みます」


 スイセンは残りの部下にそう告げて部屋を出る。


 (とりあえず状況を確かめる為にも、あちらと合流しますか)


 そう考え、スイセンは目立たない様に研究所の裏口へと歩き始めた。


▽▽▽

 「何やらバタバタしているな……」


 研究所から少し離れた位置で監視をしていたスミレは、中の異変に気付きそう呟く。


 普段この時間は研究に熱中している為、研究所の出入りはほぼ皆無なのだが、先程慌てた様に研究所に数人入っていき、そこから人の出入りが目立つ様になってきた。


 「何か研究中にトラブルがあったのでしょうか?」


 スミレの近くで一緒に監視していた部下の一人が尋ねてくる。


 「…………それはあまり考えたくないな」


 研究中のトラブル……、それは研究に協力しているというツバキの身に何か起きたかもしれない、という事も考えられるのだ。


 「…………突入しますか?」


 別の部下もスミレと同じ可能性を考えてか、少し焦ったようにスミレに尋ねる。


 「…………いや、もう少し様子を見ま…………」


 スミレは言葉を途中で言い止め、研究所からこっそり出てきた男に目をやる。


 「…………あれはスイセンか?」


 研究所の裏口からフードを被った男が辺りをキョロキョロ見渡しつつ、町の外へと歩き始めた。


 「ヤツが研究中に外に出るなど不自然だな……。私はスイセンを追いかける、一人はザクロ様にこの事の報告を、残りは引き続き監視を頼みます!」


 スミレは部下にそう指示を出すと、スイセンとの距離を保ちつつ、バレないように尾行を開始した。



 

 


  

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