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第7話 男湯に入れるのは男だけなんです。 +憂慮する日本政府

行きてえ。温泉じゃなくてもいいから、大浴場でお湯に浸かりたい。でもコロナに感染する危険性を犯せないから、行くに行けない。仕事柄、会食は禁止されているし、マスクなしで公共の場に出かけることも禁止だし……。


そんなわけで作品の中だけでも湯に浸かるという妄想も一部入った状態でお送りしています。

 さてここはスーパー銭湯『湯ったりこん』の浴室の中である。TS研究会のメンバー4人は、お腹についている袋、育児嚢の中を洗いあいっこしたり、研究目的のひとつであるお互いのおっぱいの洗いっこを終え、湯舟に浸かっていたのであった。


「はあ、他人に体を洗ってもらうのがあんなに気持ち良いものだったとは思いもしなかった」


 四人が入っているのはごく普通のお湯が張ってある湯舟である。まずは標準的なお湯から入るべきだと主張した坂東先輩の意見を汲んだということで、それ以外の理由は特にない。


「いやいや有恩君、体というよりも、育児嚢の中とおっぱいを洗ってもらうのが、と、言葉は正確に使ってください」


 有恩が漏らした言葉に反応する神賀。せっかく風呂に入ってリラックスしているのに、真面目過ぎる反応である。


「うーむ、確かに育児嚢もおっぱいも予想以上に気持ち良かったのは間違いないのだが、我輩が思うにそれ以外の部分もそこそこ気持ち良かったように思うんだがどうだろう?」


 立派すぎる巨乳を湯に浮かせながら、坂東先輩が会話に加わる。


「佐夢もそう思います。以前だったら女性は全身が性感帯って言ってましたけど、逆に今は男性は全身が性感帯ってことになっているんじゃないでしょうか?」


 尾歩都が湯舟の中を移動して、湯舟のへりから坂東先輩の正面へとやってきた。その尾歩都を見て、ちょっと坂東先輩の顔の赤みが増したのを、周りの3人は見逃さない。


(((さっきはよっぽど気持ち良かったんだな)))


「ま、それはネット上でも言われていたから、我輩もそうだろうなあとは思ってはいたのであるが、聞くと体験するのでは大違いだったな。やはり自分で触るよりも他人に触ってもらったほうが感度が何倍にもなってくるのはすごかった」


「ですよねえ。佐夢の手の動きに合わせてピクんピクんって体がけいれんするように動く坂東先輩ってかわいかったなあ」


 そう言いつつ、佐夢は右手が見えるようにお湯から出して、ゆっくりと波打つように指を動かしていく。


「こ、こら、尾歩都、年上をからかうのは良くないぞ。そ、それにだな、かわいいという言葉は、お前のようにロリというかショタというか、そういう外見ズバリの尾歩都のほうが似合っていると、我輩は思うぞ」


「そうですか♪ わーい、うれしいなあ」


 などと言いつつ尾歩都はすすッと坂東先輩に正面から近づいたのであるが、ほとんど体が触れ合うところまでくると、湯の中でくるりと体を半回転させた。そして湯舟のへりにもたれかかるように座っていた坂東先輩にもたれるように体をあずけたのだった。


 結果、坂東先輩は背後から尾歩都を抱きかかえるような体勢になる。


「ああ、尾歩都君、いったい何をしようとしているのですか? 差し支えなければ僕に教えて欲しいんですけどね」


 あまりにも予想外な尾歩都の動きに、神賀はTS研究会の現会長としての立場から問いただすのだった。


「おいおい、神賀。いいじゃねえか。どうやら坂東先輩も嫌がってはいない様子だし、あれはあれで良いものだ」


「そ、そうかなあ?」


 有恩と神賀の視線の先にあるもの。それは、尾歩都を後ろから抱え込まむようにしている坂東先輩と抱かれている尾歩都なのであるが、問題なのはふたりからどうも甘い雰囲気というか、Loveな感じなのだ。但し男同士の組み合わせであるが、BⅬではなく百合のようではある。


「TS(トランスセクシャル)したわけじゃないけど、外見が前の女のようになってるわけだろ。おっぱいもあるし体形も変わってるし、そんなふたりが絡み合う様子を観察しなくてどうする!」


 こぶしを作って力説する有恩。そう言われると、なんだかそうかもしれないと神賀も考え直して、坂東先輩と尾歩都がこれからどう絡み合っていくのかを観察しようという気持ちになってくる。


「ねえ、坂東先輩」


 尾歩都は坂東先輩に後ろから抱きかかえられる形になっているので、顔を向けることなく、後ろに向けてしゃべりだす。


「な、なんだね。尾歩都」


 柄にもなくちょっと声が裏返っている坂東先輩は、『たぶん我輩の顔が赤くなっているだろうが、湯舟に浸かっているんだから、顔が赤くてもしかたがないよな』などとどうでもいい言い訳をしていたりする。普段の態度とは違って、意外とヘタレである。


「佐夢はねえ、せっかくこういう姿に肉体変化したんだから、坂東先輩みたいなおっぱいになりたいんですよ」


 そう言いつつ尾歩都は自分の体をぐっと坂東先輩に押し付ける。結果、尾歩都の背中には坂東先輩の立派なおっぱいが押し付けられる形になる。そう、押し付けたと思ったら押し付けられていたのである。不思議なことであるが、それが尾歩都のねらいであった。


「まあ、そうであろうな。自分の胸におっぱいが付いているのなら、どうせなら貧乳よりも巨乳のほうが良いであろうからな。……で、尾歩都は我輩におっぱいを揉んで欲しいのかね?」


 おっぱいは揉めば大きくなる。本当なのか嘘なのかは真偽が分かれるところであるが、揉めば大きくなるというのは、おっぱいが小さめの人にとっては信じたい迷信のひとつなのだ。


「おっぱいの大きな坂東先輩に揉んでもらえたら佐夢のおっぱいも大きくなるような気がするんですよ」


「そうか。では、揉ませてもらうぞ」


 少し声が震えているような気もするが、既にお互いにおっぱいがある男同士。何の遠慮があるものかということで、坂東先輩は尾歩都のまだ育ち切っていない小さなおっぱいを優しく揉んでいく。


 肉体が有袋人類へと変化してからは、男におっぱいがあるのは当たり前となった。自分でも揉んでみれば、強く揉みすぎたり乱暴に扱ったりすると痛いというのは、もう身に染みて理解していることなのだ。


「坂東先輩、う、うう、気持ちいいです。こ、これならおっぱいも大きくなりそうです」


 などと言いつつ喘ぎ声を出したりする尾歩都であるが、その喘ぎ声の何割が本物で、何割が演技なのであろうか? などということを横で見ている神賀や有恩は思っていたりする。


 しかし当初は冷静であった神賀と有恩も、徐々におかしな気分になってくる。


「おい、神賀。お前も俺の前に来いよ。おっぱい揉んで大きくしようぜ」


「いや、それぐらいで大きくなったら苦労はしませんよ」


「だからこれはTS研究会の研究課題のひとつなんだから、とりあえず俺たちもやっておかなくちゃだろ」


「うーん、まあ、育児嚢の中を洗いあいっこしたり、おっぱいを洗いあいっこしたからには、おっぱいの揉みあいっこもするべきですか。いいでしょう有恩君、僕のおっぱいを揉んで大きくしてみせてください」


 そして神賀は待ち構える有恩に後ろから抱かれるような体勢へと移動した。そして有恩も神賀の貧乳を揉み始めるのだった。


「大きなおっぱいもいいけど、小さなおっぱいもまたいいな。おっぱいのすべてが手の平の中に納まって一体化するというか、反発ではなくて吸い付かれる感じというか、大きなおっぱいとは違う魅力があるなあ」


「いや、有恩君、無理して貧乳をほめなくてもいいですよ」


「いやいやいやいや、本音だから。俺のおっぱいって大きいけど、神賀のおっぱいに比べるとなんかちょっと固いというか、柔らかさに欠けるというか、とにかくそんなだからッ!」


「うーん、それっておっぱいの中身というか、乳腺の密度がいっぱいってことなんでしょうかね。あ、ううん」


 神賀はおっぱいを揉まれながら、そして感じながらも自分の考察を口にする。このあたりがまだまだ快感に身を任せきれない昔の感覚が残っているところなのかもしれない。


 しかし胸からジワリと広がる快感に理性は抗しきれず、神賀は浅く荒い呼吸をするだけの存在へと変化していった。


 ちなみにこの状態を作り出したきっかけの尾歩都はというと……。


「あ、あ、あ、あん、あ、あ、あーッ」


 声を殺して小さく喘(あえ)ぐだけの理性は残しているようだ。


 そして広い浴室内の一角で、そんな光景を4人の男たちが作り出していたのだが、大半の男性客はその様子を見て見ぬふりをしていた。みんな気持ちは分かるからだ。さすがにもともとはみんな普通の男性であったので、『おっぱいには勝てない』ということをよく理解していたからだ。


 さて、そんな今の日本の銭湯や温泉の男湯ではよくある光景が展開されていたのであるが、その場を凍り付かせるような下種(げす)な声が響いたのであった。


「おお、兄ちゃんたち、ええ乳しとるやないかい」


「公共の場で乳くりあってるちゅうことは、俺たちも兄ちゃんたちの乳を揉んでも良いちゅうことやな」


 めちゃくちゃな論理展開で乱入してきたのは、筋肉質でガタイのいい二人組であった。


「ちょ、ここは男湯ですよ。女の人は女湯に行ってください」


 さっきまで気持ち良さに酔っていた神賀は、二人組の上半身を見てまだぼんやりする頭でそう判断すると苦情を言うのだった。


「ははは、おもしろいこと言う兄ちゃんやな。俺らのどこが女に見えるって? 俺らはれっきとした人間様の男じゃ。カンガルー人間の女男とは違うんじゃ」


「ほれ、見てみいワシらの立派なブツをな。ほうれ、ちゃんとぶらぶらしとるやろ。男が男湯に入って何か問題があるんか? ないやろ」


 二人組の男たちはその股間を隠すことなくぶらぶらとさせる。確かにその二人組は間違いなく男であった。有袋人類の女性であれば股間に出産管と呼ばれる管状の女性器が存在するのであるが、いわゆるタマタマは存在しない。管だけである。しかしこの二人組の股間には棒だけではなくタマタマもぶらぶらしていた。


 実は神様によって肉体変化させられたのは、日本国籍を持つ者だけであったのだ。つまりこの二人組の国籍は日本では無いということになる。日本に住んでいても日本国籍を持っていない者の体は以前同様に有胎盤類のホモサピエンス系の人類のままであった。


「じゃ、ワシらも兄ちゃんたちのおっぱいを揉ませてもらおうか。何、男が男の胸を揉むんじゃから、何の問題も無いしのう」


「おう、おっぱいの大きな兄ちゃん、ちょっと揉ませてもらうで」


「ははは、ワシもじゃ。そっちの兄ちゃんもぽっちゃりして大きなおっぱいをしとるじゃねえか。なかなか触り心地が良さそうじゃのう」


 そのまま二人組は左右に分かれてひとりは坂東先輩へ、もうひとりは有恩の隣へと移動した。そしてじゃまとなる神賀と尾歩都をドンと手で押しやってどかす。容赦なしだ。


 それから二人組はそれぞれ坂東先輩と有恩の肩から手をまわし、左右の手で両のおっぱいを掴むようにして揉み始めた。


「ちょ、痛い。やめろよなッ!」


「おい、我輩から離れろ。警察を呼ぶぞッ!」


 有恩に坂東先輩はそれぞれ抗議の声を上げるが、出来るのはそこまでだ。そもそも同じ男同士とはいえ、ホモサピエンス系の男と、有袋人類であるホモマルスピアリア系の男では、筋力に大きな違いがある。


 有袋人類の男性の筋力は以前の有胎盤人類の女性の筋力とほぼ同じであるか、むしろそれよりもやや劣る。体に占める体脂肪率は、25%から35%で、今までの女性たちよりは若干多めになっており、その分、筋肉が少ないようだ。


 ちなみに体についた脂肪は授乳する際のおっぱいの栄養となるものである。


 話を戻すと、坂東先輩と有恩は、筋力で二人組に対抗することが出来ない。つまりは声を上げることしか出来ないのだ。そして圧倒的な筋力の差を理解する有恩と坂東先輩は、体がすくんで逃げることも出来なくなってくる。


「この、先輩から離れろッ!」


 そんな状態の中、突然に大きな声を上げるのは尾歩都であった。二人組のうち坂東先輩の乳を揉んでいる男に向かって突っ込んでいく。


「何じゃましくさるんじゃいッ!」


 男は反射的に突っ込んできた尾歩都を跳(は)ね除(の)ける。


「きゃあっ!」


 すると尾歩都はお湯の中で足を滑らせたのか、よたよたとしつつ浴槽の壁があるほうへと倒れていき、盛大に顔を壁にぶつけたのだが、振り返ったその顔には口から流れ出た血が付いていた。


「おい、尾歩都君、血がッ!」


「大丈夫です神賀先輩。想定内です。ふふふ、狙い通り血が出ましたか。先輩、逃げますよッ!」


 尾歩都はあっけにとられる神賀の手を取ると、ずんずんと歩き、湯舟を出た。そしてふたりはそのまま服も着ずにバスタオルを体に巻くだけで脱衣所から出てフロントへと急ぐのであった。




「暴行および傷害の現行犯で逮捕します」


 さすがに血を流していた。とは言っても実際は口の中をちょっと切っただけである尾歩都であるが、よだれと混じって実際以上の出血があるように見える。そんな尾歩都が浴室内で暴行を受けたと訴えると、さすがにフロントの係員も無視できず、警察を呼ぶしかなかった。


 そして二人組の男たちは、まるで以前の婦人警官のような姿をした男性警察官の集団に取り囲まれて逮捕されたのであった。


 その場を逃げた神賀と尾歩都が警察を呼んでくるということを考えもせず、のんびりと坂東先輩と有恩の乳を揉んでいた二人組の男たちは、ある意味、頭の血のめぐりの悪かったということであろう。体の血のめぐりはお湯に浸かれば治るかもしれないが、頭の血のめぐりは湯に浸かった程度では治らなかったらしい。


 馬鹿は死ななきゃ治らない。昔からよく言われた話である。


「ふふふ、肉を切らせて骨を断つ。佐夢の頭脳勝ちですね」


 まだ育ち切っていない小さな胸をこれ見よがしに張って威張る尾歩都。それを見て、TS研究会の先輩たちは思うのだった。


「「「こいつだけは敵にまわさないようにしよう」」」




 そして日本政府のとあるところでは、今日も議論が迷走していた。


「以上のように有袋人類化した日本人と、以前のままの肉体をした日本国籍を持たない外国籍の永住者や旅行者等とのトラブルが多発しているとの報告が続々と集まってきています」


「銭湯や温泉における男湯と女湯か。確かに今まで通りのホモサピエンス系の人類を、我々のような有袋類であるホモマルスピアリア系の人類と同じに扱うわけにはいかないな」


「ああ、私だって今は乳がある身だ。温泉に浸かっていて、外国籍の以前のままの男が乱入して来たら嫌な気持ちになるし、恥ずかしくもなる。いや、むしろ気持ち悪い」


「しかし日本人と外国籍の人間を完全に分離して考えるというのは問題もはらんでいるぞ」


「ああその通りだ。両者を違うものとして扱っていると、やがて世界はこう判断するかもしれん。『日本人はいわゆる人類では無い』とな」


「まさにそれだ。いまはまだ公式にそういう話を言い出した国は無いが、懸念すべき情報が入っている。バチカンが『果たして今の日本人は人類と言えるのか?』という議論をしているそうだ」


「そ、それは一大事だぞ。バチカンがもしも日本人は人類では無いなどと声明を出したら……」


「安心しろ。日本人の中にもキリスト教徒はいる。そうであるなら日本人もまた神に創造された人間であるという議論にはなっているらしい。ま、あくまでも過激な信者たちを押さえる為のリーク情報だから、本当にこの内容で議論されているとは限らないがな」


「やはり世界は日本人は今までの人類とは違うという結論を出すという可能性が高い。と、判断して行動していくしかないか」


「最悪、鎖国してでも生き残れる道を探るしかない」


「それは分かるが、具体的にどうする? 食料にエネルギーはもちろん、その他の資源も輸入無くしては一切が立ち行かないのだぞ」


「食料と言えばふと思ったのだが、これから先、人口の増加率がものすごいことになるのではないのかね。出生数の増加が今までの数倍から十倍近くまで上がっていると聞いたのだが……」


「出生数に関してですが、それを押さえる政策を取ることは、例の神様の意思に明確に反することになりますので……」


「如何(いかん)ともし難(がたい)いということか」


「世界の様々な宗教の神と違って、日本の神様は実在が確認されているからな。神様の意思には逆らえんよ。それこそ逆らったらどういうことになることやら」


 日本政府における議論は今日も迷走を続けていた。

日本政府が憂慮する状況を書いて行くには、10年、20年といったスパンで物語を書いて行くしかないんだけど、高校のTS研究会や文芸部のメンバーが主な登場人物としている本作、普通に書いてたら、そういった状況を書き切ることなんかできるはずがない。


発動させちゃう? サザエさん時空を……。いや、プロット無しで書いてるから、まだ確定じゃないんだけどね。


それでは読んでいただき、ありがとうございました。


あ、そうそう、もしよかったら真夜中のほうもよろしく。

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