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第3話 有袋人類の男女における特徴とは。その1

 真夜中で語ることにならないよう、極力医学的というか動物学的に説明をしていこうという作者の努力を汲んでいただきたいと思うのです。

 日本の国生みをした男神おがみにより、日本人すべての種族転換が行われてから既に一週間が経っていた。というわけで、そろそろ国としての方針が決まりだし、末端である学校などにも必要な情報というか今後の方針などがおりてきた。


「さて、今日の授業は男女それぞれ別々に行う。男子は一組へ、女子は二組に移動するように」


 担任の先生はアラフィフのオジサンだったのだが、今ではけっこう若く見える姿へと変化していた。以前の女性のような容姿を表現するなら、30歳になったかならないか、無理すれば20代と言い張れなくもないような美人さんになっていた。


「有恩君、うちの担任って、あんなに若くて美人でしたかね? なんだか日々若くきれいになってるような気がするんですけど」


「うわさによると奥さんに色々と指導を受けて、ああなったらしいぞ。メイクやヘアやファッションについてだとか」


 TS研究会の二人は御有辺井高校の二年二組であるからして、一組へ移動しつつそんな話をしていた。


「もしかすると僕たちもメイクとかの勉強をしたほうがいいかもしれませんね。文芸部の女子達の中にそういった方面に詳しい人がいるといいんですが」


 ふむ、と考え出す神賀であった。既に以前の女子制服を妹から手に入れている神賀のその姿は、姿だけなら以前の美少女そのもの。いまさらメイクとか必要なのか? と、思える美少女っぷりなのだが、本人的には満足していないのであろうか。


「うーん、うちの高校、普段はメイク禁止だからな。誰かいたっけ」


「とりあえず放課後に部活で聞いてみましょう。庵手部長辺りなら、前は美人さんだったから学校外ではメイクとかしていたかもしれませんし」


「……美人的要素にめぐまれない人のほうがメイクには熱心なんじゃねえのか?」


 既に一組の教室へと入っているので、周りには男子生徒しかいない。そんな男子生徒たちには美人さんに見える学生や、かわいく見える学生、なんとなく大人っぽい学生、そして普通の見た目の学生、さらにはどっちかというと顔面偏差値がちょっと低いかなあと評価せざるを得ないような学生もいた。


 そんな色々なレベルの顔の男子生徒をぐるりと見渡してから、神賀はそっと有恩の耳に口を寄せて内緒話をするのだった。


「今の男子たちはまだそこまで意識が行っていませんけど、さっきの発言、セクハラと受け止められる可能性もありますから、注意したほうがいいですよ」


 するとなぜか有恩の体がピクンと小さく跳ねると、ふるふると小刻みに震えだしたのだが、神賀の内緒話が終わると共に、ふうと脱力した様子となった。


「……神賀、今のヤバい。耳元でこしょこしょとささやかれるとマジで気持ちいい」


「マジって、それ本当に本当ってことですか。冗談でなく」


「こんなことでふざけるわけないだろ。いやあ、今のはすごかった。神賀の声が耳元で聞こえたとたんに耳から脇腹のほうまで一直線に電気が走ったようになるだろ。そのあと、ピクピクピクピクって筋肉が動くたびに、気持ち良さが湧き出してくるというか」


「なるほど。有恩君の性感帯は耳にあるということですね。いや、耳にもあるというべきでしょうね」


「おい、そんな言い方するなよ。恥ずかしいだろ」


 美人さん顔を真面目な表情にしてつぶやく神賀と、以前のような女子的な態度でポカポカとそんなに力が入っていないような感じで神賀のおっぱいよりも上の胸の部分を叩く有恩。


 ポカポカと叩かれるたびに神賀の胸についたおっぱいが揺れる。そして叩く有恩のぽっちゃりした体形にふさわしいボリューミーなおっぱいもたゆんたゆんと揺れている。おっぱい二重奏である。


 ちなみに有恩はまだ以前の男子用の学生服を着ているが、ちょっと前を留めると胸が苦しいらしく、最近では学生服の上の部分のボタンは外していることが多かった。うむ、眼福と言ってよいであろう。


 神賀と有恩という男子生徒二人がかもしだす百合百合な雰囲気に、周りの他の男子生徒たちは座っている者も含めてギンギンに総勃ち状態……、なんてことはなく、皆、ぽややんとしたあたたかい雰囲気で二人を見つめていた。


 そう、『あたたかい雰囲気』である。けっして『なまあたたかい雰囲気』ではない。ここ重要である。


 むしろ勃ちはしなかったが、微妙にチンピクしていたのは有恩だけであったのだが、ここは彼の名誉の為にあえて詳しい言及は避けておく。ただ、有恩の顔は真っ赤であり、息が荒くなっていたことだけは記しておきたい。


「こら、そこのふたり! じゃれあっていないで早く席に着きなさい」


 思いがけず良いものを見せてもらったという意識があるのだろうか。担任教師の声はセリフの内容に反して優しい声であった。


「「はーい」」


 外見がアラフィフのオジサンのままであったならともかく、今は実際の年齢からは信じられないほど若く見える美人さんからの叱責である。神賀と有恩のふたりは反発など覚えることなく、素直にその言葉に従って空いている席に着席した。


「さて、時間も少ないのでちゃっちゃと行きます。まずは私たちの体についての情報を分かっている範囲内でごく簡単に説明しましょう。なおこの情報は例の神様から天皇陛下のもとに届けられた本に書かれていた内容だそうです」


 そう言うと担任教師は情報が記されたプリントを配り、説明を開始した。


「有袋人類とは何かとかいう学術的な点については、おいおい男女共通の時間に説明するとして、今日は有袋人類の性差の部分。つまりは男女の違いや役割分担に的をしぼって説明しましょう」


「地球上の有袋類と違って、私たちが肉体変化した有袋人類は、女性が子供を産み、男性の腹についた袋、育児嚢の中である程度の大きさまで育てて、その後は袋から出して胸のおっぱいで育てるそうです」


「育児嚢の中には四つの乳首があり、子供が小さなうちは四人の赤ちゃんを同時に育てることも可能だそうですが、さすがに大きくなってくると袋の中が狭くなるので、仲間の他の男性の袋の中に子供を分けて育てることが出来るそうです。つまりはある夫婦の赤ちゃんを、兄弟や父親とかおじさんとかにあずけて哺乳し育ててもらうことが可能ということです」


「なお、袋の中の乳首に赤ちゃんが吸い付くと、育児嚢を持った有袋人類の男性である私たちの乳首からは自然と乳が出てくるようになっています。この点は地球の有袋類とは大きく違う点です」


「普通、地球上で知られていた有袋類の赤ちゃんは、いったん袋の中に入るとお母さんの乳首に吸い付き、袋から出てこれるような大きさになるまで乳首を離すことなく成長していきます」


「しかし私たちが変化した並行世界である異世界の有袋人類やその前の進化段階にある有袋霊長類の赤ちゃんは、あごの力が弱く、すぐに口から乳首を離してしまうという欠点を持っていました」


「通常の有袋類であれば、そんな欠点を持った赤ちゃんはすぐに栄養状態が悪化して死んでしまう確率が高くなるのですが、十分に器用な手を持った有袋霊長類は、乳首から赤ちゃんが口を離したと感じると、その器用な手で赤ちゃんを誘導し、再度乳首に吸い付かせることが出来ました」


「ここで重要なのは、通常の有袋類はあごの力が強くずっと乳首を(くわ)えたまま成長するので、頭蓋骨の発達を阻害するそうです。つまりお母さんのお腹の中で限界まで大きくなる有胎盤哺乳類に比べて、有袋類は脳が小さめになるという欠点を持っていました」


「しかし有袋霊長類は、赤ちゃんのあごの力が弱く乳首を口から離してしまうという欠点を器用な手でカバーすることが出来ました。定期的に赤ちゃんがあごの力を抜いて乳首からフリーになれる状態を作ることにより、頭蓋骨や脳の発育を阻害する要因をある程度排除し、有胎盤哺乳類なみの脳を育てることに成功したということです」


「そして有袋霊長類の段階ではメスが子供を産み、そのままメスが自分のお腹についた袋で子供を育てていくという状況だったのですが、有袋霊長類の中からきわめて変わり(だね)(しゅ)が進化してきました。それが有袋人類です」


「有袋人類は突然変異なのでしょうか、女性ではなく男性に育児嚢とか乳腺とかが発達しました。女性でも幼いうちは袋があることが認められるそうですが、成長とともに消えてなくなるとのことです。これは地球上で知られた従来の有袋類のオスと同じですね」


「さて、女性が子供を産み、男性が袋の中で育てる。しかも男性は自分の遺伝子を持った赤ちゃん以外の赤ちゃんも育てることが出来るのです。するとどんなことが起きるか、想像できますか? 神賀君、どうです?」


 ここで担任教師はいったん話を中断し、教室の中で一番熱心そうに説明を聞いていた神賀留宇太を指名した。まあ、以前の女子制服を着ていた神賀が教室内で目立っていたということもあるが。


「繁殖率の急激な増加、でしょうか?」


「はい、正解です。ありがとう神賀君。さて、一体の有袋霊長類が妊娠して出産するまで約一ヶ月。そして育児嚢の中で約数ヶ月赤ちゃんを育てることになりますが、その間、新しく妊娠出産することが出来ません」


「しかし男性側に育児嚢がある有袋人類はどうでしょう。女性が一ヶ月の妊娠期間を経て男性の育児嚢の中に赤ちゃんを産み落とすと、すぐに次の妊娠をすることが出来ますので、理論的には一年で12人の赤ちゃんを産むことが出来ますし、もしも双子が居ればそれ以上ということになりますね。なお有袋人類の女性には子宮が二つあるそうです。はは、妊娠し放題ですね」


「そんなに赤ちゃんを産んで大丈夫かという話ですが、残念ながら有袋類は有袋人類も含めて、まだ小さな赤ちゃんの生存率は実は高くありません。生存率の低さを出産の数でカバーするという戦略です。その中でも特に有袋人類は男性に育児嚢がついていて、群れを作って集団で生活し、年代を越えて子育てをしていましたので、繁殖力は並行世界の異世界でも大型の生き物としてはずば抜けたものがありました」


「なお、並行世界である異世界でも、以前の私たちのような有胎盤哺乳類であるホモサピエンス系の人類も居たのですが、その世界では有胎盤系の人類は有袋類系の人類との生存競争に負けて絶滅してしまったということです。しかし詳しい話は政府のほうからまだ情報公開が成されていませんので、これについては後日に説明できれば良いなと思ってます」


「さて、ここまでの話は理解できましたか? まあ全部理解できなくても、今の私たちの有袋人類は女性が子供を産み、男性がそのお腹にある育児嚢で育てる。男性は誰の赤ちゃんでも自分の育児嚢で育てることが出来る。その二点を理解していればOKです」


 そこまでは真面目な雰囲気で説明していた担任教師であったが、どこかいたずらを仕掛けるような笑顔を浮かべると、次の説明を始めだした。


「次に、男女別々に教室を分けた理由に関わることですが、まずは黙って静かに次の動画を見てください」


 そして担任教師が機械を操作すると教室の前方にプロジェクターから投影された動画が映し出されたのだが、なんとそれはAVのちょうど濡れ場のシーンであった。せいぜい2~3分の動画であったが、その間、教室内は異様な雰囲気に包まれた。最初は『おお』という驚き、そしてしばらくして『アレ?』というとまどい。そして最後には『いったいどういうわけだ。これは!?』という困惑が教室内を包んだのであった。


「皆さんに質問です。このエッチな動画を見ても全く反応しなかった、つまりは勃たなかった人は手をあげてください。ほら、恥ずかしがらずに。ちなみに先生は全く勃ちませんでしたよ」


 教室内では担任教師の告白に背中を押され、ひとりふたりを手が上がり、やがては教室内の全員の手が上がることとなった。


「皆さんも肉体が変化してから既に一週間ですから既に気が付いている人もいたかもしれませんが、私たちが新しく肉体変化したこの有袋人類の男性の体は、視覚情報から性的な興奮を得るということがありません。以前の女性のように、今の私たち有袋人類の男性はその体への直接的な刺激、つまりは愛撫により性的な興奮を覚えます」


 教室内の空気がざわッとした。みんな今まで苦労して集めて隠しフォルダの中に収納していたエッチな動画とか画像とかが無意味なものへと変化してしまったことを理解したからであった。


「逆に有袋人類となった女性のほうは、君たち男性の裸とか、おっぱいが膨らんだようすとか、育児嚢の入口を見て興奮するようです。ちなみに最も興奮するのは育児嚢の入口だそうですので、皆さんは女性たちの前でむやみにお腹を見せるのは絶対に避けてください」


「ある意味、お腹の袋を異性に見せるというのは、以前のままの女性が自分の生の性器を男性に直接見せる行為に等しいそうですので、十分に気を付けてください。さもないと……」


 ここで担任教師はぐるりと教室中の男子生徒の顔を見渡し、ニヤリと笑うとこう言った。


「レイプされて赤ちゃんを産み付けられても知りませんよ」


 男子生徒諸君、その状況を想像して背中がゾゾッとしたのであった。


「それでは次に有袋人類の男女がそれぞれ興奮するとどういった肉体的変化があり、どのような形で性交が行われて、そして出産に至るのか、真面目に、医学的に説明します」


 まだまだ担任教師の説明は続く。

 現実の進化史において有袋霊長類という種族は存在しません。完全に作者の勝手な設定です。まあ、今後、そういった化石とか出てくるかもしれませんが、確率はほぼ0(ゼロ)でしょうね。


 さらに言うなら有袋人類については勝手な設定というレベルを超えて、勝手な妄想レベルとなっています。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 新たなる生態! まさかの視覚情報では興奮せず! [一言] まぁ一年中興奮できる種の方がオカシイノヤモ。
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