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第2話 胸におっぱいはあるけど、袋の中にも乳首はある。

 知ってましたか? 現実の有袋類の中にも、オスのほうにも袋が付いている種類がいることを。


 それは現地名でヤポック、またの名をミズオポッサムという水棲に適応した唯一の有袋類で、カワウソのような生態を持つそうです。


 ちなみにオスの袋は何に使われるかというと、タマタマを収納するのに使われるそうですよ。

「「「坂東先輩!」」」


 突然乱入してきた人物、それはTS研究会の前会長、三年生の坂東空徒ばんどう くうとであった。


「確かにこうなってしまえばTS研究会が今まで通りのまま存在することはできないだろう。しかしこの新しい体は男性だがおっぱいもあるし、外見上は今までの女性と大差ないから服装も変化する。しかも今後の社会的な役割も男女逆になるかもしれない。だったら新たなTS研究会を目指すべきではないのかね!!」


「坂東先輩、しかし今更TS、トランスセクシャルとか性転換とか言っても、今の新しい女子の姿ってアレですよ。僕としてはもう性転換とか女体化とか入れ替わりに憑依とか、まったく興味が無くなったというか、夢破れたというか、うまく言おうとするなら【萌え尽きた】というか、そんな感じなんですけど」


 神賀は視線をチラリと同じ教室の中にいる文芸部の女子たちに視線を向ける。


 文芸部部長で二年の庵手絹子あんて きぬこは、今となっては悔しくなるほど高身長でイケメン風な感じに変化している。3日前までは外見だけなら美人さんだっただけのことはあるのかもしれない。しかしそんな彼女の今のようなイケメン風な姿になりたいかという話にはならないのだ。


 同じく二年の小荒阿良子こあら あらこは、ややぽっちゃり系のかわいい感じだったのが、今では筋肉質でがっしりした感じになっている。とても現状の姿を相手に『萌え~』とかは言えない。むしろ暑苦しそうだ。もちろん入れ替わりしてみたいとかは一切思えない。


 一年の武宇羅美須美ぶうら みすみは、以前もモブ系の女子だったが、今でもフツメンで中肉中背のごく普通の【男子?】のような外見になっている。やはりまあ、そんな姿に変身したいとかは思わない。ただなんというか、現在、その膝の上には一年の男子生徒である御厨修武みず おさむが乗っかっていて、武宇羅は御厨を抱きかかえている。本人曰く極度の寒がりという理由で暖をとっているそうだ。


 一方の御厨の外見は、以前から男にしては妙な色気がある小柄な少年だったが、今では小柄ながらムチムチのエロかわいい系となっているので、男女逆になっていることを忘れることができるなら何となく羨ましいと思えなくものないが、抱きしめる武宇羅にも、抱きしめられる御厨のどちらにも変身したいとかは思えてこない。


「先輩、俺としても今の女子の姿に萌えるのはちょっと無理かと」


 うーむと考え込んだ末に、有恩は首を振りつつそう答えた。


「佐夢も、神賀会長に有恩先輩と同意見ですね。今さらああいった姿の女子に変身するような話には萌えられないし、この新しい体になってからは、過去のTS作品もなんだか佐夢達が求めているものとは違うような気がするんですよ。正直に言うならもう過去の作品には萌えられないというか、そんな感じですね」


 一年生ながら尾歩都もはっきりと前会長の坂東に意見した。若いって素晴らしい。


 後輩たち三人が、それぞれ過去のTS作品のようなものには萌えられなくなったという気持ちを表したのに対して、坂東は『ああ』と嘆く。


「ちちち、バカもの! 今から性転換しようと考えるからそうなる。既に我々はTSしたのだよ。トランススピーシーズ。種族転換をな」


「トランススピーシーズ?」


 その瞬間、神賀留宇太、有恩抜人、そして尾歩都佐夢の三人の目には戸惑いの色が生まれた。


「そう、トランススピーシーズ。有胎盤類のホモサピエンス系人類から、有袋類のホモマルスピアリア系人類への種族転換だ。しかも外見は見ての通りのな。それにだ。お前たち、……探索、したのかね。今までとは全く違った過去の女子的な体へと変身した自分の体を、お前たちはちゃんと探索したのかね?」


「確かにTS作品において新たに女子の体を得たならその体を探索するのは王道的展開ですが、坂東先輩、僕たち正確には男のままですよ。探索っていわれても……」


「神賀よ、お前、妹から女子の制服をゲットしておいたくせに、この三日間何をしていた? 鏡を前にして『これがボク?』とかしなかったのか」


 ああ嘆かわしいとばかりに少し肘を曲げた左腕を上にあげ、右手の甲を額に当てる坂東。役者やなと。


「しないわけないじゃないですか。妹と制服やそのほかの私服を交換して着てみた後は、ちゃんと定番の鏡を前にしての『これがボク?』ってしてみましたあ。でも、想像していたのよりも萌えなかったんですよ」


「……神賀、もしかしてお前、一人だけで着替えてたんじゃないのか。ちゃんと服を交換した妹さんの前で着替えて、着替え終わった姿を鑑賞してもらったりしていないのか」


「あ、確かに着替えは一人でしてました」


 意表を突かれた感の神賀と、『やれやれ、これだからまったく未熟者は……』などと呟く坂東空徒前会長。


「あ、何となく俺、分かります。確かにTS作品の定番の中には、試着室の中では何とか普通に女子服に着替えることが出来た元男子のTS少女が、試着室の外で待っている友人や女の子の知り合いとかの前に姿をさらすのをものすごく恥ずかしいこととして描写しているものもあったような」


「そうなんだよ。良いところに気が付いたな。有恩よ。着替えシチュエーションは自分ひとりよりも他人が見ていたほうが恥ずかしさもアップ、萌え度もアップするというもんだ。神賀も分かったか?」


「なるほど、勉強になりました」


 実のところ神賀留宇太とその妹の神賀瑠々子(かんが るるこ)の間であった着替えシチュエーションでは、なかなかこの場では言いづらい出来事があったので、とりあえず神賀は坂東先輩に対して素直に返事を返すことにした。


 確かに言われてみればその通りであると気が付いたことでもあるし。


「それから、お前たち三人に聞きたいんだが……。普通に胸についているおっぱいは触ってみたか?」


 教室内の向こう側には文芸部本体の部員たちが何やら楽しそうに話し込んでいるのだが、彼女達に聞かれるとちょっとアレな話題なので、坂東先輩の声は自然と小さくなる。


「もちろん触りましたよ。でも、思ってたよりも気持ち良いものじゃなかったですね」


「うーん、俺も触った感じは、ちょっとは気持ち良かったけど、期待してたほどじゃなかったかな」


「佐夢も同じです。もう少し気持ち良いかと思ってたんですけど、ちょっと違うかなと思っちゃった」


 それぞれ答える神賀に有恩に尾歩都。しゅんとした表情になっている。


「まあ予想通りだな。実際に我輩も自分の胸を揉んだりしてみたが、確かにそんなに気持ち良くなかった。以前の普通の女性も、自分で触るよりも他人に触ってもらったほうが気持ちいいということもあるそうだからな。まあそこは今後の研究対象というやつだな、もしかすると種族の違いというやつかもしれんし」


「では坂東先輩、新生TS研究会の研究課題として、『お互いの胸の触りあいっこ』という項目をあげておきます。それにしてもTSと書いてトランススピーシーズと読むのは良いですね。生徒会や学校に提出する書類を書き直さなくて済みますから」


「うわ、神賀会長は色々と真面目だね。まあ会長らしいっちゃらしいけど。あ、俺は触りあうなら尾歩都とがいいな。神賀は触り方が真面目過ぎて揉むというより触診のようになっちゃいそうだし、坂東先輩は揉み方が強すぎそうでいけない」


「佐夢をご指名なら有恩先輩との触りあいっこをOKしますけど、最終的にはみんな交代して全員としたいですね。何かこう、相性とかあるかもしれませんし」


「なるほど。確かに相性と気持ち良さには大いに関係がありそうです。そこもちゃんと研究しなくてはですね」


「おいおい、神賀会長。お遊びでの触りあいっこで良いんじゃねえか? なにもTS研究会だからってそこまで真面目にやらなくてもいいんじゃね? 俺としてはもっとリラックスしてたほうが気持ちよくなりそうだと思うぞ」


「いやいや有恩君、こういうのはあくまでも研究という建前を崩さないのが大事なんですよ。学校側からとか、運え、ゲホゲホ……、とかからの指導が入ったりすると不味いですからね」


「ああ、やっぱり真夜中でしか語れないところに移るのは面倒ですよね。佐夢もそう思います」


「俺としては、時々はそっち方面に投稿する話があっても良いんじゃね? なんて思うけどな」


 なんだか会話がメタな発言へとなってきた。修正しなくては……。


「まあ、その辺の対応は現TS研究会の会長の神賀に任せるとして、話を戻すぞ。我輩たちの今の体には胸がある。そしてだ、我輩たちは今、有袋類から進化した有袋人類となった。有袋類と言えば何だ。お腹についた袋、育児嚢だ。その中にある乳首こそ、有袋類本来の乳首だろ? そこは触ったのか?」


「そういえば僕の場合は、胸についたおっぱいのほうに注目しすぎて、袋の中の乳首なんて気にもしていませんでした」


「そもそも男のほうに育児嚢やおっぱいが付いているってことの不条理さを問い詰めたいってところなんだけど、俺も袋の中の乳首をじっくりとは触ってなかったな。ただ、風呂で洗ったときにちょっとビクッとなったような……」


「やっぱりお腹の袋の中の乳首も、自分で触るよりも他人が触ってもらうほうが気持ちいいんでしょうか?」


 神賀に有恩、そして尾歩都が服の上からお腹の袋の辺りをちょっと撫でている。


「ふーむ。まあどうせここでは女子の目もあるし袋の中の乳首も触れないだろうからそのことは置いといて、俺はみんなの腹の袋そのものを見てみたいんだけどな。あ、もちろん入口だけだぞ」


「あ、それは佐夢も見てみたい。本当にみんなのお腹に袋があるのかどうか」


「ま、我輩も興味がなくも無い。育児嚢の形状に個体差があるのかどうか知りたいからな」


 有恩に尾歩都に坂東前会長はさっそく服をめくって腹を出そうとし始めた。しかし神賀がそれを止めた。


「ちょっと待ってください。腹の袋を見せ合うのは良いですけど、女子連中からは見られないようにしたほうが良いですよ」


「ふむ、理由を教えてくれるかね」


「簡単に言うと今の有袋人類化した女子は、今の男の腹についている袋に性的な興奮を覚えるらしいんです。ちなみにこれはうちの妹から聞いた情報です」


「さっきの着替えシチュエーションの際の話で、神賀が妹さんと一緒ではなく、ひとりで着替えたというのはそれが理由か……」


「ええ、そうなんですよ。先輩。詳しいことはここでは話せませんので、いづれまた真夜中にでもお話ししますので」


 ペコリと頭を下げる神賀留宇太TS研究会会長。宣伝は上手いが、作者がまだ書いてもいない話を宣伝されても困ってしまうぞ。と。


「じゃあちょっと皆で壁側を向いて、腹を見せ合おうぜ」


「あ、何だったら佐夢がこうやって壁を作りましょうか」


 というわけで仲良く腹の袋を見せ合うTS研究会の男子連中であった。まあ、いくら授業が終わった後の部活中の時間とはいえ、今、おっぱいや乳首を触りあうのは不味い。それはまた後のお楽しみということにしておいたほうが良いであろう。ということである。


 それにしてもこいつら、姿かたちが大きく変わったことに対してショックを受けてはいないのだろうかと読者諸兄は思われるかもしれない。しかしそこは神様の精神操作というか、神様に肉体変化させられたのならしょうがないと現状を受け入れる日本人的な達観のたまものである。


 そしてそれは女子たちも同じであった。




「ねえ、あっちのほうで男子連中が何かコソコソとしてるけど、何してるのかしらね? ボクたちに見られちゃまずいことしてるってことかな?」


 今後でも萌えられそうな作品とはどんなモノになるのだろうか? という高尚なテーマにて会話をしていた文芸部員の女子三名プラス抱きかかえられている男子ひとりであったが、文芸部部長の庵手絹子あんて きぬこは文芸部内に兼部して所属するTS研究会の男子たちの動きが気になってその会話をいったん止めた。


 ちなみに女子三人は主にサイズ的な理由と見た目の問題もあって女子制服を着てはいない。ジャージとかカジュアルな私服とかである。


「私にはよく聞こえなかったけど、お腹の袋がどうとか、見せ合うとかどうとか言ってたような」


 小荒阿良子こあら あらこ、地獄耳である。


「うーん、お腹の腹の見せ合いっこか……。あたしも見てみたいな。あたしたちが本当に有袋類になってるかどうか証拠をこの目で見てみたい。ねえ、御厨君、お腹の袋を見せてくれる?」


 寒がりを自称する武宇羅美須美(ぶうら みすみ)は、自分が抱きかかえている御厨修武みず おさむに問いかける。


「お腹の袋、見たいの? うーん、美須美ちゃんが見たいのなら、まあお腹の袋くらいなら見せてもいいかな」


 その後、御厨が何の躊躇も戸惑いもなくあっさりと学生服をめくってお腹の袋を女子達に見せた。つまりまあ神賀が知っていたことを御厨は知らなかったということらしい。


 とたん、女子三人は妙に心臓の高ぶりを受け、股間の何かが脈打つような血流を感じて息が荒くなり……。ということがあったらしいのだが、今日はここまで。

 さすがに現実の有袋類で、オスが哺乳して育児するような種類はいません。


 でも魚類の中にはオスの育児嚢の中にメスが卵を産み付けて、オスが出産するというタツノオトシゴという種類もいますし、フィクションの中ならオスに袋が付いていて哺乳も育児もするっていう有袋類がいてもいいよね。


 という発想です。そんな有袋類、萌えるよね。だれか他の人で同じような設定で書いてくれないかな。やっぱり無理かな。自分で書くしかないか。

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