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第6話 想像の深淵

 窓から飛び込んでくる朝日が眩しい。

 神仏会との抗争も終わり、被害と戦果の報告会が始まった。

 被害の報告に耳を立てると、腕や足を失った隊員が多いようだ。しかし集まっている人はみんな四肢が揃っていた。おそらく怪我で死ぬことは無く、魄の形を想像するだけで治るのだろう。腕1本分の魄を失い、それだけの寿命を失ったという報告だろう。その中に1つだけ魄散ハクサンの報告があった。報告会のあと、その班の3人は黙り込み、肩を落とし、結界の外へ出て行った。これから何をするのだろうか。葬式のようなことをするのだろうか。

 それにしても、あの乱戦で1人しかやられていないのか。いや、数は1人でも彼の友人、班員には大きなことだ。こんな風にお別れが日常になるのか。僕は耐えられるだろうか。

 戦果としては7人を魄散させたようだ。魄を奪うことに、人を切ることに躊躇タメライはないのだろうか。相手も自分たちと同じ悲しい思いをしているはずだ。相手にも、人を切ってでも貫きたい正義が互いにあるのだろうか。昨晩、三代さんが言っていた正義はこんなに重いものなのか。だとしたらかなり難しい。なんとなく生きてきたのにこんなことになるとは。そもそも、なぜ争っているのかをもっと詳しく知りたいな。

 立ち上がり、あたりを見回す。三代さんはいなかった。しかし、栄田さんと目が合った。班の人たちも近くにいる。

栄「おー、スエキチくん!生きてたか!良かった良かった」

吉「吉末です。死んでます」

栄「どっちでもいいよ。元気で良かった」

吉「名前は大事にしろって班長さんも言ってたじゃないですか」

里「その通りだ。吉末君、元気そうでよかった」

吉「あ、...班長さん。僕を送るために戦ってくれていたと聞きました。ありがとうございます」

里「里見だ。それも仕事だから礼はいらない。無事でよかった」

吉「神仏会の支部長に会って、たぶん危ない状況だったんですが、第二大隊の隊長?デカい人に助けてもらいました」

里「またアレが来てたのか。アレを止められるなら第二の隊長で間違いない。次に会ったらお礼を言うと良い」

吉「あの人やっぱり強いんですね」

里「そうだな。かなり強い。彼に敵うのは一握りだろう」

吉「本部長くらいですか?」

里「いや、本部長は相性がよくない。第四の隊長か、第五の中にもいるかもしれない。いずれにしても味方だ、あまり考えなくていい」

吉「第四?五?まであるんですか?」

里「おい栄田。なにも話していないのか」

栄「い、いやぁ、いろいろ話しましたよ。吉末君…覚えてない?」

吉「スエキチくんにでも話したんですか?少なくとも僕は聞いてませんね」

栄「ちょっ、吉末君、頼むよ、思い出してよ」

吉「この体になってから思い出すのがとても楽なんですがね。残念ながらそんな記憶はないですね」

栄「ちょ待って、班長、これは何かの間違いです」

里「ミニクイいぞ、「白」の文字がケガれる」

栄「はい…、すみません。忘れていました」

里「最初からそう言え」

そう叱ったと同時に、里見さんは「ゴツンッ」と栄田さんに拳骨ゲンコツを浴びせた。

栄「いってぇ!」


 ん?おかしい。接触したらどちらも痛いはずなのに、栄田さんだけ痛がっている。

里「栄田だけ痛がるのも不思議そうだな。すまない。まずはそうだな、全部知るには第四に行くのが早いか。入隊試験はいつでもいいからな」

栄「入隊後に連れて行く約束はしました」

里「あーそうか、そうだな。ここまで来てまた外に出すのも二度手間か。ぱぱっと試験を終よう。アレが来るくらい本気ってことは試験も余裕だろう」

吉「そういうのを見抜ける人がいるんですか?」

里「いや、できないはずなんだ。しかし何においても例外はある。見抜ける人もいるのだろう。この世界はあまり一貫性がない。そういう所にも慣れないとな」

吉「そういうものですか」

里「そういうものだ。さて、本部も落ち着いている。入隊試験を始められそうだ」

吉「里見さんが試験官なんですか?」

里「いや、違う。今回の担当は知らない。そうだな、本部長に聞くといい。教えてくれるだろう。私たちは隅田に戻るから見てやれないが。そうだな、頑張れよ」

木「え、班長も頑張れとか言うんすね」

里「当たり前だ、私も応援くらいする。さ、早く戻るぞ。バスの事故で対応に追われてるらしい」

柿「あちゃー、それは大変ですね」

木「大事故か、面倒すぎ。吉末の帰りまでここにいようぜ」

里「馬鹿を言うな。一月ヒトツキも持ち場を空けられるか」

栄「吉末君みたいな人ばかりだと願うしかないな。こっちが木村で、こっちが柿本、次は覚えてて。じゃ、また近いうちにな」

里「行くぞ。またな吉末君」

柿「さよなら。生きてたらまた会いましょう」

木「またな」

吉「ありがとうございました。また会いにいきます」

 里美さんは振り向かず手をあげ、柿本さんは会釈をし、木村さんは何もなく、栄田さんはこっちを向いてバイバイをした。なんとなく「いい班だな」と思った。木村さんは悪そうだけど、きっと底には思いやりがある。きっと。


 里見班を見送ったあと、本部長に目をやると数人と会議をしていた。

 僕はどうせ聞いているだろうと思い、その場で入隊試験について聞いてみた。

吉「本部長、試験はどのように始めるんでしょうか」

篁「お前なぁ、礼儀というものを知らないのか。全部聞いてるとは言ってもな、体は1つなんだ。こっちに来て並べ」

 本部長はそう言って戻って行った。

 会議をしていると思ったが、本部長は5人と同時に別々の話をしていた。並べ、というのは、ここに入れって意味か?

吉「喋ってもいいですか?」

篁「いいぞ」

吉「えーっと、入隊試験はどうなるのでしょうか」

篁「お前の担当は竹中タケナカだ。ちょっと待ってろ」

そう言うと本部長は一瞬で消え、数秒後にまた現れた。

篁「今呼んだから、竹中に付いて行け」

竹「君が吉末君かぁ。じゃあ、行こうか」

篁「期待の新人だ。竹中お前に任せる」

竹「りょーかいっ」

吉「よろしくお願いします」

竹「竹中です。こちらこそよろしく」


 竹中さんは長身でアラサーっぽい。ギリギリお兄さんと呼ばれるくらいの見た目だ。とてもゆっくりと、優しい口調で喋る。ゆるい感じがなんかいい。

竹「じゃあ、やってこっか」

吉「ここでですか?」

結界フロアの端まで歩き、他のフロアに試験会場があるのかな、と思ったら止まった。

竹「あぁ、場所はいらないから。じゃあ、最初はなんだっけ、あぁ、想像力から試してこうか」

吉「わかりました。何をすればいいですか?」

竹「そうだな、ペットとか飼ってたことある?」

吉「いや、ないですね」

竹「そうかぁ、じゃあ、好きな動物はいるか?」

吉「犬が好きですね」

竹「飼うなら何犬ナニケンがいい?」

吉「そうですね。柴犬ですかね」

竹「じゃあ、柴犬を作ってみようか」

吉「大きさは実寸大ですか?」

竹「まぁ、好きなように作って。それも想像力のうちだから」


 好きなように作って、なんて言われても魄で何かを作るのは初めてで、全然うまくできない。栄田さんは「想像力が大事」と言っていた。だが、どれだけ細かく想像しても何も起きない。何かが出てくる雰囲気すらない。デフォルメしても同じだった。

 竹中さんは窓の外を眺めて難しい顔をしており、質問を受け付けない雰囲気だ。

 参考にできるものはないか。そういえば、栄田さんが刀を取り出すのを見せてくれた。あの瞬間を思い出してみよう。刀を取り出すとき…刀の先から出てきていた…?3Dプリンターみたいなイメージか?腕の中に入っている刀が出てくるイメージか?

 頭にハテナばかりが浮かんでくる。まずは、手の平から何かを出すところから始めてみよう。いや、手の平の魄を動かすことからか?

 右手の手の平を見る。手相まで生きていたときのままだ、たぶん。手相を変えてみようか。天下取りの相を作ろう。天下取りの相は頭脳線と感情線が繋がり、手の平を横切るようにできる手相だ。

 だが、僕の手相はどちらの線も交わらない方向に折れ曲がり伸びている。折れる前のところで切って、くっつくように並行移動して、途切れたところに手相を足せばいいか。

 せっかくだし頭脳線を伸ばそう。なんだか頭が良くなりそうだ。手相を切って移動するイメージをする。手のシワを切って移動か、なんだか滑稽だ。お、切り離せた。考えたように移動し、感情線にくっついた。できた空白を繋げるような手相を想像する。爪をグッと押し付けたような凹み方のイメージだ。もう少し浅く。こんなもんだろう。

 よしよし。なんだか賢くなった気がする。魄の動く感じが少しだけ分かった気がする。頭脳線をもっと伸ばす。どんどん賢くなるぞー。魄を自由に動かせて嬉しい。腕までグルグルと伸ばす。戻す。曲げてみる。自由に出来る。

手相は自由に動かせるようなった。

 じゃあ次は、手の平から魄を出すことだ。手相は動かせるから、手相をなんとか出してみよう。手の平に球を想像し、それに沿って動かすのはどうだろう。

 目を閉じる。手の平のクボみに重みを感じる、手の平に球が乗っているという自己暗示だ。手相が浮き上がり、動くのを感じる。球にくるくると巻き付け、3周したところで頂上に到達する。

 目を開ける。本当にそうなっていた。手の上に宙に浮かぶ頭脳線がある。手相占いをするとどんなことを言われるのだろう。

 この手相は凹みをイメージしたものだ。この状態だとなにが凹んでいるんだ?中に見えない魄があるのか?左手で押してみる。ぷにぷにしている。ぷにぷにするタビにどんどん柔らかくなる。続けていると、遂に頭脳線は手の平の上に崩れ落ちてしまった。

 ぷにぷにする度にぷにぷにのイメージができたのかもしれない。すべての性質がイメージに依存するなら、イメージの上書きでどんどん柔らかくなったと考えられる。

 大事なのはイメージだ。よし、と目をつぶる。さっきと同じ感覚でピンポン玉を作る。中に何かあるイメージをする。手の平から何かが移動する感覚がある。少しだけこそばゆい。我慢し、どんどん密度を上げていく。カチカチのピンポン玉、ゴルフボールを経て、鉄球までイメージが到達する。

 目を開ける。手の平の上に手相のある魄の球ができていた。

吉「できた!」

しまった。口に出してしまった。

竹「ん?それが…柴犬?」

吉「いやっ、まだ途中です。体から魄を出すことができて、ちょっと1人で盛り上がっちゃいました」

竹「そうか、できちゃったかぁ。じゃあ、教える必要はなさそうだな」

吉「え?教えてくれるんですか?」

竹「あー、根性を試してたんだが、できちゃったらもういいでしょ。そのまま柴犬作ってみて」

吉「せめてヒントくらい下さい」

竹「そうだなぁ、錬魄レンパクの仕方は人によるんだけど、外枠のイメージが重要かもなぁ」

吉「それだけですか?」

竹「ああ。それだけだ」


 つまりこの手相球の成功は、手相で枠のイメージができて、そこに魄が満ちていくイメージをしたから上手くいったのか?まだ手の上にある。これはどうやって体内に戻すんだ?体から離れたらどうなるのだろう。魄を、寿命を消費してしまうのだろうか。ちょっとやってみたい。けど怖いからやらない。

吉「これ、どうやって戻すんですか?」

竹「握り潰してみて、同時に吸収するイメージでね」

吉「やってみます」


 指で包み込む。力を入れる。鉄が溶け、体に入って行くのをイメージする。吸収だ。どんどん体に入ってくる。出て行くときよりも気持ち悪い。

 手を開く。手相が元に戻っている。成功だ。

吉「できました。ありがとうございます」

竹「自転車と一緒で、慣れたら自由にできるから。たぶん柴犬もすぐにできるでしょ」

吉「やってみますね」


 柴犬か、そう言えば、じいちゃんばあちゃんの家にいたな。名前は確かブドウだったか。茶色いオスの柴犬だった。玄関で出迎えてくれたのが懐かしい。あいつはモフモフだった。とてもモフモフだった。

 大きさは手の平に乗るレベルにしよう。

足はまぁイイ感じにイメージできる。でもちょっと細いかな。これじゃネコ科だ。もっとモフモフさせてしまおう。よし、たぶん良い感じだ。体はもっとモフモフにしよう。まるまるとした柴犬だ。しっぽを生やして体は完成だ。

 あとは顔だ。ブドウの顔を思い出す。まんまるのモフモフだ。口は程よく前に出ていて、その先には鼻がある。ぴょこんと立った耳がまた愛らしい。クリクリの目がこちらを見つめる。かわいらしくて男前だ。

 ここに魄を注ぎ込む。イメージが崩れないように慎重に、少し硬くなるように。

 目を開く。手の平にはブドウが乗っていた。ブドウと言っても、もちろん柴犬だ。


吉「できました」

僕は自慢のブドウを竹中さんに見せる。

竹「色は?」

吉「へ?」

竹「色だよ、色」

吉「色?魄に色を付けれるんですか?」

竹「ほら」

 竹中さんは手の平にパッと黄色いキリンを作り出した。

 そう言えば周りのものすべてに色がついて見えている。竹中さんの着ている隊服もそうだ。魄の世界で色が見える。これはとても興味深い。可視光を見ているようだ。今見ているものも電磁波の一種で、目に入る電磁波の波長によって色が違って見えているのか?なんで今まで気づかなかったんだろう。また研究所に行ったときに聞いてみよう。

 とにかく、今はブドウに色を付けなくちゃいけない。

吉「色もイメージすれば付くんですか?」

竹「あー、そうだね。どういえばいいかなぁ。色が付く原理は生きてた頃と似てるかも。んー、ググっと力をこめて、変われって思うと変わるよ。今は白に近いけど、力を込めると色が変わるんだ。ひねる力とか、引っ張る力、圧力、加熱、電圧、あと何かあるかな、まぁその辺の、エネルギー、力を加えるイメージの組み合わせで魄粒子ハクリュウシ同士の結びつき方が変わって、色も変わるんだ。でもやっぱりイメージが重要で、今の吉末君の服には色がついているね、無意識の記憶情報で色が補完されているんだ。そうだなぁ、まずは色をイメージしながら色んな力を加えてみて」

吉「力を加えるって、ぶどう…犬が変形しないんですか?」

竹「ぶどう?あー、もっと、ミクロなイメージ。表面を形成する粒子をイメージして、その構造が、どんどんと変わって行くような」

吉「なるほど。やってみます」


 目を閉じ、ぶどうのふわふわで明るい茶色の背中の毛をイメージする。

 このふわふわを構成している分子のようなものの構造をイメージだけで変えるのか。僕は化学系の学科にいたから、毛を構成する粒子のイメージ自体は難しくない。アミノ酸が並んでいるのだろうか、まぁここは、だいたいでいいや。細かいことは関係ないだろう。

 本当の構造はどうなっているんだろう。高分子のように複雑な構造なのだろうか。いや、おそらく3次元の絡まり程度のものではないだろう。だからこそ色のイメージを先行させて色を付ける、ということになっているのだろう。

 今、ハクは白い。色の三原色のようなものが、タマシイの世界に存在しているのか?今は考えても仕方ない。茶色か…カラメルを作るみたいに、加熱をイメージしよう。加熱は分子に運動エネルギーを与えることと同義だ。表面のハクが分子レベルで振動することをイメージする。ここで与えるエネルギーも、おそらくハクの燃焼や核分裂のようなもので得ているのだろう。

 目を開ける。そこには黒焦げのブドウがあった。


竹「あー、黒柴だった?」

吉「いや、茶色です」

竹「あー、さっき茶色から黒に徐々に変わって行ったから、今度は目を開けてやってみて」

吉「この黒柴は白に戻るんですか?」

竹「戻るよ。説明は面倒なんだけど、学者が考えてる理論では変形や変色に消費する魄は少ない、らしい。変形や変色に使われるエネルギーは、ほぼ保存されているとかなんとか。正直詳しいことは僕もわかってない」

吉「はぁ…また研究所に行って聞いてみます」

竹「そうしてくれると助かる。文系には頭の痛い話だった…。とにかく、白く戻すにはさっきと反対の操作をイメージして、白くなれ!って感じで頑張ってみて」

吉「なんか、雑ですね」

竹「まぁ、感覚の世界だから、その感覚を掴むまで練習するしかないよ」

吉「はぁ、感覚の世界ですか。定量する方法もないですもんね」

竹「そういうことだ」


 目を開けたまま白をイメージする。真っ白を。

 いや、白から茶色を経由して黒になった、ってことは白まで戻さなくてもいいのでは?あ、白に戻す感覚を掴むためか、とりあえず白に戻そう。

 白米、大福、ホワイトボード、どれも白だが魄の色とは違う気がする。まず色の事は置いといて、これが状態変化のようなものであると考える。いまは熱して蒸気になっているような感じ。冷やして氷にするんだ。熱を奪うイメージをする。

 だんだんと色が落ちていく。茶色を経由して白に戻る。色のイメージはさほどしていないのに。これはいつ起きた変化なんだ?ホワイトボードをイメージしたときではない、色のイメージだけではダメだ。熱のイメージだけでいいのか?

吉「これってエネルギーのイメージだけでも良いんですか?」

竹「いや、それだと灰色か黒にしかならないはずだ」

 もう一度、今度は熱のイメージだけで。ブドウを焦がすイメージをする。熱を加えるとどんどん灰色から黒へ変色していく。

 なぜだ?

竹「んー?しっかり茶色をイメージしないと」


 投入するエネルギー量でスカラー量を決めて、色のイメージでベクトルの方向を決める感じか?この仮説が正しいなら、きっと色平面の外側は全て黒、中心が白という感じだろう。いや待て、色には様々な要素がある、ひょっとして透明度や彩度、明度、も調節できるんじゃないか?そうなると複雑な色空間になる。よし、仮説は検証してみるに限る。

 まずは透明度かな。今はおそらく透明度0だ。無色透明の透明度を100としよう。まずは50くらいのを目指してみようかな。


 竹中さん、すみません。実験に付き合わせちゃいます。好奇心に勝てなさそうです。

 少しの罪悪感を心の中で謝って紛らわせる。

吉「すみません。ちょっといろいろ試してみたいんですが、いいですか?」

竹「まぁ、時間は無限じゃないが…いいぞ。いろいろ試さないと慣れないからな」

吉「ありがとうございます」

竹「…いや待て、その笑顔、ヤバい理系のやつじゃないか」


 まずい。笑顔が漏れてしまった。こうなると流れは決まっている。止められて、また今度だ。

竹「深淵を覗くとき」

吉「深淵もまたこちらをのぞいているのだ」

竹「そうだ。タマシイの不思議に囚われる人は少なくない。だが今は、試験の途中だ」

吉「あー、そういえばそうでした」

竹「そうなんだよ。まぁ第四に行くのは勝手にしてくれて構わない。でもとりあえず入隊試験に合格してくれ」

吉「すみません」


 そのあと、ベクトル理論をイメージし、実践するとブドウは茶色になった。お腹の白も、鼻先の黒も熱のイメージだけだから簡単だ。正解を見つけたように感じ、とても嬉しい。だが、他の色を試していないため、まだ正しいとは言えない。イメージがしやすくなっただけかもしれない。

 他の色や要素についてもいろいろ試してみたいが、それはまた今度だ。

 次は運動神経、戦闘センスを見られるテストだ。


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