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第10話 不可思議のキョウイ

永「で、何を見ているか、だっけ」

吉「あ、それです。死んでから最初に気になったやつです」

永「うむぅ。結論から言うと分かってない。さらに言うと、音が伝わる媒体もわかってないんだ」

吉「そうですか。まぁ、そうですよね」

永「落胆させてしまったね」

吉「解明するための実験とかは?」

永「そりゃしてるよ。僕は魄と光の関係を研究してるんだけど、同じテーマでやってた人のデータによると、日陰に暮らす人たちは魄体寿命が長くなる傾向があるんだ」

吉「ほう」

永「ここから考えられることは、日光が溶魄ヨウハクの速度を上げている、と言うことだね。もしその考察が正しいなら、どこかの波長帯の電磁波を吸収してることが考えられるから、視覚もそれを見ていると考えてもいいんじゃないかな。光が高次元空間まで広がっているか、とかいうのも考えないといけないんだけどね」

吉「伝播するものは光以外にもありますよね」

永「そうだね。重力波に注目して研究している人もいるよ。それで音が伝わってる可能性もあるみたい。でも、地球で初観測された日があったでしょ。でもその日は特に何かを感じたということも無かったからね。どうなんだろね」

吉「素粒子の方も何かありそうですよね」

永「ニュートリノとかは岐阜研究所がやってることだね。今はどのくらい進んだんだろう。スーパーカミオカンデに入っても魄は観測されなかったってことしか知らされてないや。僕らは人口の多さを利用して統計的な実験と仮説を立てた計算をしてるんだ。なんだか、研究っぽくなくてごめんね」


吉「いやいや、大事なことですよ。統計的に傾向を見て、実験設備で確かめるんですよね。ん-、溶魄...溶解平衡的なものもありそうですね。空間の魄が減って寿命が縮んだ、とかないですか?」

永「生物全体で魄密度が低下しているんだけど、その分を考慮してもそんなに変わってないね」

吉「平衡計算の仕方も気液系とは違うでしょうし難しいですよね」

永「そう、よくわからない。が正確な答えだね。でも、僕の研究から言えることは、長くこの世界に残りたいならあまり動かなくすればいい、ってことかな。すり抜けも、日光も避けて過ごすと長く留まれるよ」

吉「わかりました...気を付けようもないですが」

永「まぁね、でも最後の最後で効いてくるかもしれないから。魄を節約して生きるんだよ」

吉「ギリギリの戦いだと、そうですね。ほんの少しの差が効いてきそうですね。忠告ありがとうございます」

永「素直でいいね。そこの乾風アナゼは「なら気にしなくていいですね!」とか笑ってたが」

乾「気にしなくていいですよ。絶対。そんなに変わらないですから」

永「まぁ、そういう人もいる。何が正しいかだなんて分からないから、一応気にすることをオススメするよ」


永「あとは...、さっきの君の創魄ソウハクを手伝ったやつの説明かな?」

 僕の手に彼の手を重ねて、僕の手の枠をスっと伸ばした件の話だ。

吉「あ、そうですね。気になっていたことも忘れかけてましたが」

永「だと思ったけど、戦闘に生きるかもだからね、班長クラスなら知ってるけど。僕が感覚論じゃなく教えてあげよう。あの人たち「慣れろ」が口癖だからね」

吉「ありがたいです。ついさっきも三代さんにイジめられたので」

乾「いや、アレが褫魄隊の日常なんです。班長を恨まないでやってください」

吉「すみません、冗談ですよ」

乾「なら良いんですが、あの人も悪気はないですから。無邪気にいつも頑張ってるんです」

永「彼女はいい班員を持ったね。よし、じゃあ乾風アナゼ君も手伝ってくれるかい?」

乾「もちろんいいですよ」

永「じゃあ、吉末君、さっきと同じように手を広げて枠を作る想像をしてみて。僕は右手、乾風アナゼ君は左手でサポートしてみよう」


 2人が僕の横に立ち、手を重ねる。両手がジクジクと痛い。

吉「じゃあ、始めますね」

 僕はさっきと同じように枠を作り始める。一度作ったからさっきよりもスムーズに進む。

永「3.2.1.はい、でいくよ」

 乾風さんは永井さんと目を合わせてうなずく。

永「3..2..1..はい」

 …なにも起きない。

永「面白いでしょう。でも、僕だけがすると」

 スンッと伸びて枠が出来上がった。

吉「え?どういことです?」

永「これはね、僕が吉末くんの魄の動きの波を感じて、同位相の波を伝えることで形成を手伝ってるんだ。でも3人だと3人の波を合わせないといけないから簡単には出来ない」

吉「波?今まで出なかった単語ですね」

永「んー、そうだね。手を重ねてみようか」


 永井さんが手を重ねる。やっぱり痛い。

永「まぁ痛いよね。僕も痛い。でもね、その痛みの奥に何か感じない?」

吉「え?痛いだけですよ」

永「あ、忘れてた。じゃあ、僕がゆっくり創刀するね」

 永井さんが刀を創り始める。

永「何か感じない?」

吉「いや、特には感じないですね」

永「んー、おかしいな」

乾「僕もいいですか?」


 乾風さんと交代する。ふぅ、やっと手の痛みから解放された。

乾「んー、僕も難しいですね」

永「そうか、魄を使うことに慣れて慣れてやっとだからね。でも、今日は理論を教えるから、他の人よりは魄を扱う技術が向上するかもね」

乾「なんだか機嫌が良いですね」

永「僕も人に何か教えたくて教授をやってたからね。意欲的な生徒にはサービスしたくなるものさ」


 そう言って永井さんは、紙とペンを使って長々と説明をしてくれた。

 内容をまとめると、魄を動かすときにはその時に特有の波が発生するらしい。その波は意識が魄に作用するときに発生するものらしい。魄をどのような形にするか、どれだけ魄を込めるかなどで波は変わるらしい。この波を増幅させてやることで、さっきやったみたいに魄を動かして形成する速度を上げることができるようだ。

 逆を言えば、これを読むことができれば、相手に創刀させないことも可能になるから、それだけ対人戦では重要な要素で、本部長が結界内で最強と呼ばれる理由はここにあるのだ。



吉「なるほど、ではなぜ僕は感じることが出来ないんでしょうか」

永「魄は意識で動かしているんだから、まだ魄を十分に動かせないうちは意識の扱いも十分じゃないんだ。意識が自由に操れるようになれば出来るようになるんじゃないかな」

吉「意識を自由に動かす?」

永「こればっかりは高次元の話で僕も上手く説明できないんだけど、例えば、刀の形を意識すれば、魄は刀の形になるでしょ?そういう意識を、モノとして捉えて、動かすんだ」

吉「意識をモノとして、ですか。でも今のでなんとなく分かった気がします」

永「良かった」


吉「じゃあ、全く関係ない質問を1ついいですか?」

永「いいよ。でもちょっと休憩しようか。僕らは身体的には疲れないけど、精神的に疲れるんだ」

吉「え、そうなんですか?」

永「もちろん、僕らは情報体で精神体だよ。癒しを求めるのもいい。隣の部屋で猫を愛でよう」



 そして僕らは10分ほど猫を愛でた。猫はこちらに気づかないけど、かわいい。

吉「そうだ、悪霊について聞こうと思ってたんです」

永「おお、猫は厄除けって言うし、その話は非常に面白いんだ。猫はね、悪霊には反応するんだ。それも危機に対する反応を」

吉「え、見えてるんですかね」

永「いや、そうじゃないと思われてる。悪霊は人を飲み込む存在だから、次元が少し歪んで、そのエネルギーが電磁波として出てるって説が有力だね」

吉「なんだかぽ(・)い(・)ですね。でも、悪霊についてもう少し教えてください」

永「そうだね、悪霊は意識のブラックホールのような扱いだね」

吉「ほう、ブラックホールですか」

永「そう、ブラックホール。魄も意識も同じ座標に飲み込んでるんだ。触ると飲み込まれるから、見かけても触らないでね」

吉「いやいや、近づかないですよ」

永「あれはね、ヤバいって直感でわかるからね。アレを祓うのも繊細な作業でね、飲み込まれないような祓い方が見つかったのも最近で、ここ30年くらいかな」

吉「それまでは、どうしてたんですか」

永「切るとアレは散るんだけど、そのあと残った特異点に飲み込まれるんだ。だから、1人は犠牲が出てた。飲み込まれた彼らは何処ドコにいったんでしょうね」

吉「怖い話ですね。今はどうしてるんですか?」

永「今はね、アレが意識を足掛かりにして魄を飲み込んでることが分かったから、切る瞬間に刀に持ってる意識を体に戻すんだ。魄だけで切ると、飲み込まれない」

吉「え?刀の強度とか、どうするんですか」

永「それは芯に残すんだ。触れなければいいからね」

吉「なんでもありですね」

永「なんでもありだよ」


吉「魄散から帰って来た人とかいるんですか?意識があればなんとかなりそうですが」

永「ん-、記録としてはある。それは結界の中っていう限られた条件下だけどね」

吉「本部長ですか」

永「そう、2代前の本部長がやってのけたらしい。数人の部下が意識の波を合わせながら一瞬だけど、やってのけたらしい。そのときの魄の消費が激しくて数カ月後には魄散しちゃったらしいけど」

吉「なんだか、すごいことやってますね」

永「それ以来の記録はないね。噂によると中央はなにかそういう技術を確立してるって噂だけど」

吉「中央?」

永「一応、僕らのトップは天皇だからね、そのあたり」

吉「初耳です」

乾「僕も初耳です」

永「あ、一般隊員には秘密だった...。ここだけの秘密にしてくれ。まじで俺が消されちゃうから」

乾「なんだか闇が深そうですね」

永「正直かなり深いね」


吉「こっちも宗教だから神仏会は潰されないんですね」

永「ん?どういうこと?」

吉「いや、戦力的には総攻撃で潰せるじゃないですか」

永「彼らの支部を見たことは?」

吉「ないですね」

永「なるほど、彼らを掃討しないのは戦力が足りないからだよ。彼らの支部は結界で守られていてね。まあその辺がヤバいから対立してるんだけど」

吉「そう言えば対立の理由は、魄を残そうとするから、だけじゃないですよね」

永「ああ、そこに気づいていたのは凄いね」

吉「褫魄隊も死んで魄体になった人を片っ端から切っている訳じゃないみたいですし」

永「そうだね、基本的にお葬式とか、数カ月なら仕事の良く先を見届けさせてあげてるね」

吉「なんか良心を持った活動を行っているみたいですから、神仏会ともうまくやれそうなんですが」

永「そうだね、その辺は建前と言えば建前で、ホントに彼らと対立する理由は彼らが永遠にこの世に留まろうとするからなんだ」

吉「永遠に、ですか」

永「そう。さっきチラッと言ったけど、彼らの支部には超分厚い結界が張ってあるんだ。それは寿命を迎えかけた魄体の人が集合したもので、神か仏を信じてる人だけが通れる構造なんだ」

吉「それはまた不思議ですね」

永「一度に何十人もが結界になるからね、ほんとに信心深いってなんなんだろうね」

吉「それは非人道な感じがしますが、結界としてこの世に留まり続けることができるって話ですか?」

永「結界になる人にはそう言うんだろうね。最後の審判をその姿で待とうとするんだろう。日本の仏教徒は自然であろうとするから、自然に消えさせろ、って意思で戦うんだからまともだね。神仏会にいる一神教徒が異常なだけなんだけど」

吉「なぜ仏教徒は独立しないんでしょう」

永「そりゃあ、教会は籠城するにはもってこいだからね」

吉「なるほど。で、神仏会の幹部は何してるんですか?」

永「結界の維持に努めてるよ」

吉「そうじゃなくて。永遠の魄体についてです」

永「きびしいねぇ。極秘なんだけど...ここまでも極秘に触れてるし、いいか」

吉「僕は喋りませんよ」


永「信用しない訳じゃないけど、一応契約をしておこうか」

吉「契約?」

永「これも極秘なんだけど、指を切ったでしょ?あそこで何か違和感なかった?」

吉「え、特には覚えてないですね。指が伸びたような気もしましたが」

永「そう、それだよ。魄の扱いに慣れれば、情報の無い魄に情報を書き込んで人の体に埋め込むこともできるようになる」

吉「マジですか。あのとき何を入れられたんでしょう」

永「裏切れないような暗示だね。暗示だから自分で気づくことはできない」

吉「洗脳みたいで怖いですね」

永「どこの組織もやってくることだけど、怖いよね」

吉「それが、永井さんもできるんですか」

永「できちゃうね。誰にも話せない代わりに、情報を知るって契約だ。それでいいなら話すよ」

吉「んー、経験はありますか?」

永「もちろん。初めては栄田君だ。2カ月くらい前に来て、内部の情報をどうしても知りたいって来たから、契約したんだ。それと、そこにいる乾風アナゼくんも君と同じように知りたがったから契約した」

乾「しましたね」

吉「だから栄田さんは僕に何も話してくれなかったんですね」

永「栄田君を知っているのか。どうだった何か喋った?」

吉「いや、褫魄隊にどういう大隊があるのかさえ話してくれませんでしたよ」

永「ありゃ、そんなにか。契約は後で直せないからね。君とはちょっと抑えて契約しよう」

乾「え、直せないんですか。不便だから緩めてもらおうと来たのに」

吉「え!優しさだと思ってたのに...」

乾「いや、ここまで送ったのはついでじゃないですよ。班長の失態だし、君を連れてくるのが主の用事です」

吉「冗談ですよ」

永「まぁまぁ、なんでもイイじゃないか。今から集中するからちょっと待ってて」


 永井さんは指先に小さな球を作り出し、目を閉じて集中しだす。

 変な事を言うと契約も変なものになりかねないから固唾を飲んで見守る。

 死ぬと慣用句も使いにくいな。死んでも使える慣用句って何があるだろうか。

 なんて考えていると、できたようだ。

永「よし、じゃ、これを飲んで」

 渡された粒を口に入れ、ゴクリと飲み込む。

永「じゃあ話すよ。彼らの裏の計画を」


永「彼らの目的は最後の審判だ」

吉「最後の審判ですか、さっきも言ってましたね」

永「この世の終わりに神が現れて、信者だけが天国に導かれるっていうやつだよ。彼らはそれを引き起こすために、結界として貯めた魄を取り込める人を探している。

 結界の魄には情報が含まれているから、結界から魄を取り込めるのは強靭な意思を持つ人だけなんだ。そうじゃないと自分が自分でなくなって崩壊して魄散するんだ」

吉「最後の審判と、魄を取り込む人が繋がらないんですが」

永「正しくは、神に会うために魄を吸収しきる器を探している。すべての魄を吸収しても意識を保ち、1か所に集めるような存在を。魄が無くなれば、新しい命は生まれないから、それがこの世の終焉だね。そのときに神を信じてる人たちだけが救われるって考えだ」

吉「それをして何か得をするんでしょうか」

永「神に会いたいんだろうね。自分の信じたものが正しかったと思いたいのかもしれない」

吉「すべての意思を吸収して生きるなんて、意思のある悪霊みたいな感じですね」

永「まさにそうだね。でも、魄体の吸収は別に悪じゃない。本部長だって代々魄を受け継いでるし、愛し合うことができれば魄同士の接触も痛くなくなるし、愛した人に魄を残して逝ける」

吉「え、本部長は確かにそう聞きましたけど。愛ですか。栄田さんが言ってたのはホントだったんですね」

永「栄田は愛の存在については喋ったのか。契約ミスかな?」

吉「栄田さんが重要と思わなかったんじゃないですか?」

永「それは考えられるね。まぁとにかく。信じあうことで吉末君も誰かに何かを残せるから。きっと何かを繋いでいくんだよ」

吉「愛って、信じあうことなんですか?」

永「いやぁ、それは分からん」

吉「なにも分かりませんね」

永「それでも諦めずに研究するしかない。いつか愛の証明が出来たら素敵じゃない?」

吉「ロマンチックですね」



吉「愛があれば合体とかもできるんですか?」

永「前例はない。けど、上手くやればできるだろう。でも意識2つで1つの体を使うなんて難しそうだね。やってみる?」

吉「いやですよ」

永「そりゃ僕も嫌だよ。崩壊しちゃうだろうし」

吉「さっきの神仏会の話だとそうでしょうね」

永「試したくはあるよね」

吉「寿命が尽きるときに試してください。まだ時間がもったいないです」

永「そうだね。そうするよ。あとは質問とかない?」


吉「んー。地球外生命体とかはどうなんですか?」

永「おお、良い質問だね。地球外生命体はほとんど確認されてないけど、確かにいる」

吉「え、いるんですか?」

永「んー。死んでから魄体が出てこない人が居るんだ」

吉「人型なんですか」

永「いや、分からない。魄ナシで生きているのかもしれないし、死んだと同時に魄散してるのかもしれない」

吉「死と同時に魄散してる説の方が有力そうですね」

永「あとは、田舎の方の記録では明らかに人じゃない2足歩行の生き物がいて、こっちをしっかり認識してくるから戦ったって記録がある」

吉「まじですか。そっちを先に話してくださいよ。田舎ってどの辺ですか?」

永「奥多摩とか富士の樹海とか北岳の方とかだね」

吉「そんなところで褫魄隊は何してたんですか」

永「そりゃ自殺者とか探して成仏させないとね」

吉「ああ、大事なお仕事ですね」

永「まぁ、その宇宙人かもしれないものは強くはなかったみたい。宇宙人?高次元生命体?は地球じゃ上手く活動できないのかもしれない。空気中の魄との溶解平衡のようなものが崩れているのか、重力が強いのか弱いのか。難しいね」

吉「宇宙人じゃなくて自殺した人が悪霊化して変異してる可能性は?」

永「まぁ、それも考えられるね」

吉「宇宙船は見つかってないんですよね?」

永「そうだね、地球には島流しされたのかも。もし宇宙船が見つかれば科学界は大躍進だろうね。あ、そうだ。宇宙船といえば、ワームホールなんだけど。この体ならワームホールを移動できる可能性があるよね」

吉「宇宙人がその方法を取っている可能性は十分にありますね。体から魄が自由に出入りできるなら、ですが」

永「僕らは体が死なないと魄が抜けないからね」

吉「生きてる人たちは魄の存在も知りませんし」

永「そこは大きな障害だね」


吉「生きてる人たちに自分たちの存在を知らせないんですか?」

永「その議論は長いことされたけどね、魄の存在は今のところ秘匿されることになった」

吉「何か理由はあるんですか?」

永「大きな理由は、死んでからも人生が続くって分かったら自殺する人が増える可能性が大きいことだね。逆に安心して暮らせるかもしれないけど、こっちの世界の方が物騒だったりするからね。時を待つことになっている。それがいつになるかは分からないけどね。

その点は宗教組織とも協議して条約を結んで、世界でも約束されている。昔知らせようとした人もいたけど、みんな切られたらしい。そうすれば幽霊が出たってことで済まされる」

吉「幽霊が出たで済むんですね」

永「済んじゃうんだよね。あと、いろんな部族でシャーマン的な文化が残っているのは、はるか昔に魄体となった人が協力してたって言われてる。彼らは、自分たちは人生からリタイヤしたから出しゃばってはいけないっていう心を持っていたんだ」

吉「いいですね、そういうの」

永「なんだかカッコイイよね」

吉「人は簡単に死後の存在を信じないんですね」

永「そりゃ簡単には信じられないだろう」



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