表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

雷光 ハンニバル・バルカ

作者: コーンフレーク

週末に日帰りタイムトラベルをする藤田和也と過去の人々の物語です。

今回は古代西洋が舞台です。



紀元前219年

カルタゴ・ノヴァ郊外



「貴様、何者だ。この都市の民の者ではないな。」


後にローマ最大の敵と揶揄される、雷光、ハンニバル・バルカは街外れの丘の上にいる青年に声をかけた。その青年は明らかに異質であった。見慣れぬ被り物、服装、片手に持っている鉄製と思われる何か、この時代の人間と全く違う。そして、腰に携えているローマ軍が好んで携帯している剣があった。


ハンニバルの掛け声と共に護衛達も剣を抜き、青年を半円形に囲む形で布陣した。


「素直に答えよ。ローマの者か。」


ハンニバルの自国カルタゴと戦争状態にある。

ローマ、後のローマ帝国である。この時代はまだ共和制ローマと名乗っている。

イベリア半島にあるローマの同盟都市をつい最近、ハンニバル攻略した為ローマの間者が情報収集のためここ、カルタゴ・ノヴァに潜入してくると踏んでいた。それ故、異質な存在には敏感なのだ。


「まさか、ローマの者じゃないよ。あと、その剣早くしまってくれないかな、こっちはそちらに害をもたらす存在ではないよ。」


囲まれているのに関わらずとても落ち着いた口調であった。ハンニバルはこの青年が我々と敵対しても自力で圧倒できる強者の自信に裏下けられた状況であるからこその態度だと直感で悟った。それに片手にしか持っていなかった鉄製道具を懐からもう一つ取り出していた。軽口だが、警戒度を一段高めたようだった。


それでもハンニバルはこの青年を捕らえて何かしらの情報を履かせるつもりであった。ローマと戦うため情報を欲していたからだ。


カルタゴは現在のチュニジアからアフリカ側の西地中海沿岸部を経てヨーロッパのイベリア半島に跨る領土を支配していた。


共和制ローマはイタリア半島、シチリア島、コルシカ島。第一次ポエニ戦争の勝利によって地中海の海上覇権はローマが握りつつあった。


海上での優位が確立できない以上、陸上戦闘に力を傾けるのは当然であった。作戦を考える上でローマの最新情報が欲しかったのだ。


「..ローマの者だな。」


「おいおい、ローマ出身じゃないって言っているでしょ。」


「もうよい、やれ!」


ハンニバルの掛け声で左右の護衛が飛び出そうとした瞬間、青年が左右に向けた物から何かが発射され、護衛が倒れた。5歩踏み込めば、剣が届く距離であったがその場から1歩も踏み込めず、2人の護衛は体を数秒波打ったのち動かなくなった。


一瞬のことで他の突撃しようとしていた護衛もそちらに目を奪われて、止まっていた。


「で、どうする?今度は死ぬぜ。」


今度は先ほどより一回り大きい鉄製の武器と思われる物をハンニバルに向けていた。

皆、理解していた。彼が持っているのは飛び道具であり、我々が弱者となっていることに。








あー、びっくりした。いかついおっさんが護衛ポイのも引き連れてくるから脇にそれて道を譲ってやったのに。


ハンニバルにいらぬ疑いを掛けられて面倒ごとに巻き込まれた青年こと、藤田和也は内心呆れつつあった。折角の休日の日帰りピクニックを邪魔された挙句、間者と疑われ人前で自衛手段であるテーザー銃を使用してしまった。


藤田和也は21世紀を生きる20代の社会人である。自宅の扉から行きたい過去の地へ行けることを発見して早2年。毎週末に日帰りピクニックで過去へタイプトラベルしていた。様々な検証の結果、大きな歴史的事案に干渉しなければ、史実は変わらない。その時代の料理、文化など触れてまわっていた。


最近は現代の主観からみても安全とは言い難い過去の地域を旅しているため、最低限の自衛装備は携帯していた。テーザー銃もその為であった。高圧電流を対象者に放つことで無力化するので護衛は気絶しているだけだ。


それでも、先ほどハンニバルに向けたのは自動拳銃(ベレッタF92)であったことから、面倒ごとをこれ以上増やすのであれば証拠隠滅する気であった。


「手に持っている剣を遠くに投げろ。5秒以内だ。5秒後に処理する。」


和也の有無を言わせぬいいように、護衛はハンニバルとちらちらと目で確認する。先ほど

一瞬で倒れた同僚らの光景が頭に染みついているようだ。


「投げろ。」


ハンニバルは剣を遠くに投げた。残りの護衛らも遠くに剣を投げた。


「おいおい、そんな憎悪を持った目で見ないでくれよ。オタクらのお仲間さんは生きているぜ。こちとら、一応死なないようにテーザー銃使ったんだからな。あー、テーザー銃っていってもわからんか。まあ、お仲間さんはぴんぴんしていると思うよー。」


テーザー銃を使用しても死亡するケースはあるから、一概に安全とは言えないのも事実。それを思い出したから生きていると断定しないようにしたのだ。


「その方がローマの者でないとして、何しにここへ来たのだ。」


藤田は街から北に延びる街道から来た。そしてこの道を北に行けば、ローマに着く。

異質な恰好から自国民ではない。それにローマの同盟都市を攻略したハンニバルを知らんとなると益々怪しい。いくら情報伝達が遅いといっても護衛5人を引き連れている者に対して尊敬や敬意の視線が全くなかったことも感覚が鋭いハンニバルが引っかかっている点であった。だから、それほど疑ったのだ。


「ふーん、商売と観光だよ。」


なんか、こいつ疑うことが好きみたいだな。なんか気に入らないことがあると色々と絡んでくるめんどい奴かな。友達いないのか。おっさんぽいけど体つきは健康的だからもしかして老けて見えるだけで俺と同じぐらいのお年頃かなー。


藤田が思っていることはほぼ正解している。この時、ハンニバルは20台後半だからだ。


「そう言えば、貴様はどこから来たのだ。ローマからでないとしたら、まさかガリアから…。ガリア人ならば、我々が知らなくてもよいか…。」


「つーか、話かみ合ってねーし。はぁ、ガリア?あー、フランスのことね。まあ、そうだよ。俺はガリア人。もういい?」


先週はパリの大改造が見たくてナポレオン3世時代のパリにいたし、強ち間違えではないなー。あと、急にガリアとか言われても分からんよ。ローマ、ローマ五月蠅いし。もう、いい加減にほっといてくれないかな。


もう、今日は日曜日だから早めに切り上げないといけないから、街の散策は諦めて帰りますか。


「あー、俺今日はそろそろ、帰るわ。」


藤田がそう言い残しの物陰に入った瞬間、消えた。


「なに?」


ハンニバルらは消えたであろう付近を見渡したがなにもなかった。


「しかし、あ奴は帰ると言っていたぞ。」


「将軍、もしかしたら、付近に潜む物取りの類かもしれません。後日、付近を捜索いたしましょう。」


後日、ハンニバルらは付近を捜索したが何も成果は得られなかった。






都内某所


あー、昨日はよくわからん奴にいちゃもんつけられて大変だったぜ。絶対にお友達お断りのタイプだったわ。だめだ。気分が全くのらない。さっきから仕事も全然進んでいないし、午後から時間給とってリフレッシュのために温泉でもいこうかなー。


ほんと、月曜日ってすごく憂鬱な気分。あと5日働かなきゃならんとは。早く土日こないかなー。


フロアーにある休憩場で本日3杯目の缶コーヒーを片手にボーッとしているのは藤田である。お昼前の午前中だと言うのに長時間ここに居座っているのだ。偶にここへ来る社内の人間からはチラチラとみられていたりするのだが、お構いなしだった。


そんな極楽時間は長く続かない。大体、部下が呼びに来るからだ。こんな舐めた態度取っている藤田でも一応、部下はいるのだ。


「藤田さん、営業部の山口さんからお電話です。休憩場でゴロゴロしているから見つけ出して折り返してほしいとの伝言がありましたので、迎いにきました。」


「あー、それ今すぐ?」


「です。」


「もー、表情硬いよ田中君。」


「自分は伝えましたので。」


藤田の直属の部下である田中はそう言うとオフィスへ戻っていった。


「もしもし、藤田です。お疲れ様です。山口さん、部下の仕事を中断させてしまうので、呼びに来させる伝言は今度からNGでお願いします。それで、どうかしましたか。」


「「ああ、了解した。それで相談なのだが、昨年から稼働している海外の工場の件でトラブルが発生して国際部と取引先から突き上げをくらいそうだ。こちらで対策と改善はしたのだがどうも満足いかんらしい。なるべく上手く纏めたいのが現状だ。」」


「あー、いいですよ。山口さんの頼みですから。午後から半日有給するつもりでしたし、午後から営業部の会議室でも行けばいいですか?」


「「ハハハ、君らしい自由な感じだね。君の上司の情報部の田中課長には僕から言っておくよ。営業部に来てくれたら、どれだけ頼もしいことやら。」」


「了解です。では午後から。」


主任にしてもらったから最初の内は手を貸しますか。まあ、残業多いって噂の営業部なんかにいきたくないよ。


藤田と親しげに話していた話し相手は社内で多くの役員を輩出した営業部の課長だ。元は情報部の係長をしていたが藤田の手助けもあって出世コースともいえる営業部の課長に最近昇進したのだ。


藤田もその恩恵を受け、兼ねてから希望していた定時帰りが毎日可能と言っても過言ではない情報部の主任へと昇進していた。役員、部長、課長、係長、主任、グループリーダーの順が藤田の勤めている会社の役職だ。もちろんグループリーダーから順に昇進していくことになる。


20代後半から30代の年代で主任になることが多い。藤田は27歳で主任のため同期の中でも一つ抜けている。それでも、あまり出世が望めない情報部の為、多くの人は気にしていない。


あっ、去年から稼働しているチェコかポーランドのどっちかだよな。出張確実な気がする…。

今週末は日帰りピクニック出来んかも………..。


この現地出張こそ藤田が他者よりも何倍も勝る。

こいつは、十ヶ国語ほどの言語を操る。日帰りピクニックをしても能力が付与される訳でもないから言語には困る。だから、当時の世界共通語を勉強し、身に着けていたのだ。現地で見て聞いて体感しているから文化や風土にも詳しく、歴史も詳しい。なぜ、そんな法律があるのか制度があるのかなどほぼ理解しているから、交渉事にはめっぽう強いのであった。


過去を体験して理由から知っているから、できる技だ。





カルタゴ・ノヴァ某所


「将軍、やはり国境付近で迎撃しても我が国が勝利できる可能性は残念ながら低いと考えられます。やはり、ローマは侵攻ルートが2つある点が問題です。我々がイベリア半島側の侵攻を撃退してもイタリア半島南端からシチリア島を経て直接アフリカの本拠地に侵攻すると考えます。こちら側には同時に2点を防衛するだけの戦力に不安があります。」


奇妙な青年を探したがあの日から全く情報が得られなかったので保留とし、部下たちと対ローマへの作戦を考えていた。


部下が地図を指さしながら説明する。ハンニバルはその意見が正しいと思っていたが、消極的な守りの策だと少し納得いかなかった。ハンニバルとしては守るよりも攻めたかった。守っていても得られるものは人々を守れた満足感しか得られないと思っていた。

幼きころからローマは敵と教えられてきたハンニバル。やはり、攻撃の策が欲しいと考えていた。


「なるほど、ではこちら絶えず攻勢を仕掛けたらならば、戦闘地域はローマ領内になり、我が国の危険も下がるのではないか。」


「お言葉ですが、ローマへの侵攻ルート即ち、ローマが我が国への侵攻ルート傘っております。制海権が無いに等しい我が国は侵攻ルートが限定されています。」


イベリア半島にいるハンニバルがローマへ侵攻するルートは地中海側沿岸部に沿って北上していくしかないのだ。そしてイタリア半島の入り口は限定される。大陸との付け根の部分は標高4000ⅿ級の山々が連なるアルプス山脈があるから、迂回ルートは不可能に近い。

やはり、沿岸部を北上していくしかないのだ。


「難しいな。」


たった一言のだが、ハンニバルの言葉はすべてを語っていた。圧倒的なふりな自国。何かが必要であった。


思い付きで書いたので短編にしました。

反響が良かったら続きを書くかもしれないです。そこは気分なので…。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ