来る
「ほいっ」
「あ、駄目だわ死んだ」
「ちょー雅彦ー!もう少し耐えろよなぁ」
「いや無理だって。むしろランポ、お前が早く死に過ぎだろどう見ても」
「掠ったら旅立つんだからどうしようもないだろ!?咲希ちゃんの火力高すぎるんだって!」
「だから火力落とすか聞いたんだけどね…まだやるー?」
「うらぁ!受けて立ったるわぁ!」
「えぇ…?そこは素直に火力下げてもらえれば…」
「なんか負けた気がするだろそれだと!」
「もう負けてんだよ!」
今日も今日とて咲希と雅彦とランポこと悠太の3人でオンゲー中である。
家を空けていたりしない限りはだいたい毎日やっているので、もう日課である。
「ああー駄目だぁ!無理やっぱ勝てねぇ!PVP慣れしすぎじゃねぇ咲希ちゃん!」
「タイマンとかなら散々やってたんでまぁ。大規模戦闘だとぼこぼこですけど」
「いやだめだパラも動きも足りねえ。雅彦ちゃんと回復入れてくれよ死ぬだろ」
「即死してたらどうしようもないだろ!?回復ってのは体力残ってないとできないんだぞ!」
「気合でよみがえらせろ!」
「無理を言うな!システム的に不可能だ!」
「とりあえずランポ突っ込みすぎ。わざわざ私の攻撃に突っ込んでくるんじゃそりゃ死ぬよ」
「めっちゃ防御盛ったし何とかなると思うじゃん!?」
「いや流石にフルコンボ入れられたら死ぬだろ…」
「コンボ途中で死んでるけどねランポ」
「くぅー!パラメータ格差がひどい!」
「当たり前だろ…何言ってんのランポ」
現在は悠太と雅彦と咲希が戦闘している状態である。
悠太と雅彦が組んでるようだが、咲希にボコられている。
パラメータ格差が酷いので仕方ないのだが。
「さーってと、私はそろそろやめようかなー…」
「あれ、咲希ちゃんめっちゃ早くない?どしたん?」
「んーそう?…ああーまあそうか普段に比べや早いか」
「あーもしかしてきてます?」
「ああうん、そうですね。来てます来てます。なんで早く寝とかないと明日間に合う気しないんで…」
「え?え?来てるって何が?ちょ、なんで雅彦はなんか知ってるの?え、2人で何の秘密共有してんだ!」
「え、ああ。客来てるからさっさと寝ないといけないだけ」
「へ?客?え、なんの?…へ?」
「変な想像するなよー。私の家、民宿兼ねてるから、お客来るんだよ普通に。で、偶々今来てるだけ」
「へ、民宿やってんの咲希ちゃん」
「そうだけど。まあ私の仕事それだし。てっきり知ってるかと思ってた」
「初耳だよ!ちょい雅彦知ってんなら教えろや!」
「いや、こういうの本人以外の口から話したら駄目なやつだろ?だから咲希さんが言わないならやめとこうと思ってさ」
「お前はどこで知ったんだおらぁ!」
「いや…前も言っただろ?仕事先なんだって。そもそも咲希さんのところが民宿だから色々仕事させてもらってんだからさ」
「まあ、そんな感じで雅彦さんとはそっち方面で付き合い結構あるからそりゃ知ってるよね」
「ちょー俺にも早く教えてくれよーそういうことさぁ」
「なんでさ、大して重要情報でもないっしょ?」
「いやだって民宿なんでしょ?ということは俺も実際に泊まりに行ける!」
突然泊まりに行くと言い出す悠太。
「え、は?お前何言ってんの?」
「いや雅彦よ。咲希ちゃんち民宿なんだから泊まりに行っても何ら問題ないだろ?俺は咲希ちゃんに実際に会える。咲希ちゃんちには金が落ちる。いいこと尽くしじゃないか」
「お前な。咲希さんのことも考えろよ。お前を受け入れる余裕があるわけ…」
そこまで雅彦が言いかけたところで、咲希が返事をする。
「んー…まあ空きはあるけど」
「よっしゃ!ほらな!」
「え、咲希さん大丈夫なんですか?」
「まあ今のところはすごい混んでるわけでは無いしねー。んーまあ予約って形なら受け付けてもいいよ」
まあ実際お客としてくる分にはお金増えるしいいよなと思ってそう言う咲希。
忙しくなってきたら流石に断っていたかもしれないが、
「お?マジ?え、あ、でもちょっと待って場所どこ?」
「ん、ああ、そうか。送るわ。ちょっと待って」
「ん、ありがと。へーここ住みなんだ咲希ちゃん」
「そゆこと。客としてくる分には構わんよ」
「遊びに行くのは?」
「私との親密度が足りないね」
「く、挨拶しまくれば上がりませんか!?」
「無理ですね。お金落としまくれば上がるかもよ」
「くっ、結局金かっ!」
「ま、商売だし?で、どうする?本当に来るなら予約扱いにしとくけど」
「行きたい行きたい。こんだけ遊んでんだしそこまで遠くも無いから一回くらい会っときたいし!」
「おい、ランポお前咲希さんに迷惑かけるなよ」
「かけねえよ!いくら女慣れしてないからってそこまで常識知らずじゃねえ!」
「んーというかどうせなら雅彦さん来ます?」
「え?俺ですか?」
「ええ、ええ、どうせオフ会みたいにするならいつものメンバーいた方がいい気がしますし。あ、お仕事あると思うんでお暇ならですけど」
「じゃあ、日付が大丈夫そうなら…お邪魔しようかな?」
「じゃあそういうことにしましょうか。あ、いつならいいです?」
「俺はいつでもいいぜー」
「仕事ないのランポ?」
一応悠太も社会人のはずなのでそう聞く咲希。
「大丈夫だ。今休職中だからな。あ、ニートじゃねえぞ!」
「そうなん。じゃあランポはいいとして、雅彦さんは?」
「そうですね。休日なら」
「じゃあ土日?来週土日とかでいいです?今週は今お客さんいるんで流石にゆっくり話せないと思うんで」
「じゃあ来週の土日にします?ランポもそれでいいか?」
「オッケーじゃあ来週な。え、直接ここ行けばいい?」
「ああうんそれで。着く前に連絡くれると嬉しい」
「おっけーい。じゃあ来週そっち行かせてもらうぜー!よっしゃあ!これで俺も女の子と友達になったって言える!」
「それでいいのかランポお前…」
「いいんだよ!じゃあよろしくな咲希ちゃん!」
「あいあい。まあ来るなら歓迎するけど問題行動しないでよ」
「しないから大丈夫だって!」
「心配だぞ…じゃあ、そういうことなら俺もお邪魔しちゃいますね。よろしくお願いします咲希さん」
「ええ、お待ちしてますねー。じゃあまた明日」
「またのー」
そう言って咲希は通信から外れてヘッドセットを外した。
「来週かぁ…ランポどんな奴なんだろ」
喋ってはいるものの初めて会うので一抹の不安が残る咲希であった。




