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看板娘始めました  作者: 暗根
本編
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初詣

「んーあと10分で年越しやね」


リビングに座り込みながらそんなことを言う咲希。

時は年末。

あと10分で次の年である。


「あっという間だねえ。全然実感わかないけど。もう半年たったんだなぁって思うと感慨深いなぁ」


「今年は色々あったというかなんというか…色々で済ませていいのやら」


「本当にそうだよねぇ。あぁもう年末くらい何にも考えなくていいよねぇ」


「いいんじゃない?どうせ誰か来る予定とかもあるわけじゃ無いし」


「でも来年になったらお客さん来るんだよね。冬休みも終わりかぁ」


「まあせやね。すぐってことはないだろうけどさ」


「はぁまた大変になるのかぁ。最近ぬるま湯だったからなぁ。筋肉痛になるんだろうなぁ」


「最近出かけまくってたもんな」


「そうだねぇ、出かけてたかなぁ。まぁある意味毎日出かけてるけども…あ、ミカン無くなった」


「追加持ってくる?」


「お願いします。私はここにいるので」


「あいあい」


そのまま階下にみかんを持ちに行く咲希。

すぐに戻ってきてみかんを追加する。


「ほい、持ってきた」


「ありがとう。もうすぐ年明けだよ」


「5分切ったか」


「5分切ったよ。年越しそばも食べたし、お風呂も入ったし、もう年はいつでも越せるよ」


「やり残したことは無いか」


「やり残したこと…そう聞かれると何かある気もするけど、たぶん5分じゃきっと終わらないからいいや」


「まあ、だよな。じゃああとは除夜の鐘聞きながら年越えますかね」


「そうだねぇ」


そうこうしているうちにテレビ画面の除夜の鐘が108回目を鳴らし、時刻が0:00を指した。


「んーあけおめーことよろー」


「あけましておめでとう。今年もよろしくね」


「うんよろしく。はい新年」


「明けた気がしないなぁ。別に今年お餅とかも置いてないしなぁ。おせちなんてもってのほかだし。お正月感無いなぁ」


「家の中も外も普段通りだしな。門松とか置いてあるわけでもないし」


「気づいたらもう準備する時間無かったんです。悲しいね」


「まあ誰も気にしてないしいいやろ」


「来年はつけたいなでも」


「まあやるなら別に止めないけどね。さーて正月どうせ休みだし遊ぶべ」


「あ、私は朝から用事があるから、そろそろ寝ようかな」


「ん、何、初詣?」


「そうそう。この間神谷君から4人で行くって誘いがあったから行ってくるよ」


「ん、せやか。行ってら。あー俺もどっかで初詣行かないとなぁ」


「帰ってきたら一緒に行けばいいんじゃないかな?」


「ああ、まあ最悪近場の神社行けばいいもんな」


「そうそう。というか、しれっと高校生の中に混じる中身20代って文字にするとやばいよね」


「まあ確かに。事案の匂いを感じる」


「毎回毎回あれなんだよね。ふと冷静になった時に引率者になった気分になるんだよね」


「…え、7歳差?だよね?まあそりゃそうもなるか」


「悲しいことに彼らの目は私の保護者のように見まもる感じがたまにあるけどね」


「危なっかしく見えてんじゃないの。知らんけど」


「注意力散漫は昔からなのでどうしようもないですね」


「最近は空気でこけない?大丈夫?」


「大丈夫。空気ではこけないよ。足元が疎かになって、けっつまづくことはあるけども」


「えーっと、進歩、してるんだよねそれ?」


「空気でこけてないからセーフ」


そんな感じで会話をしていると、突然玄関のインターホンが押された音が鳴り響いた。

しかも一度ではなく何度も何度も繰り返し押されている。


「…え、誰こんな時間に」


「えぇ、誰だろう。ああ、でも何となく予想がついたかもしれない」


「いや、まあなんとなく思い当たるのが一人いるけども」


「どうせしばらくしたら大声上げながら階段上がってくると思うよ」


「一応鍵かけといたから大丈夫だと思いたい」


「じゃあ大丈夫か。ていうかうちって一応夜中鍵閉めてるんだね」


「一応ね一応。まあ入ろうと思えば多分窓とかから入れる気がするけど」


「強盗とかだったら余裕で入れる構造してるからね」


「ほんそれ。防犯性能の低さよ。…ていうか諦め悪いなまだ鳴ってる」


「出て上げればいいじゃん」


「…ちょっと行ってくる」


「行ってらっしゃい。私はみかんを食べてるよ」


「今日よく食べますねみかん」


「手と口が寂しいので」


「せやか。じゃあちょっと行ってくる」


そう言って咲希が降りて行って数分。

階段を駆け上がってきた咲希がそのまま部屋の方に直行した。

続いてもう一つ足音が上ってきて、美船が顔を出した。


「渚ちゃんも!初詣行こ!」


「美船ちゃんこんばんは。夜中から元気ですね」


「そりゃもう今から初詣行く気まんまんだし?あ、というかあけましておめでとう!今年もよろしく!」


「あけましておめでとうございます。今年も咲希姉をよろしくお願いします」


「任された。それでそれで、咲希は初詣連れてくけど渚ちゃん来ない?」


「明日用事とか無かったら行きたかったんですけど、私も朝から初詣に誘われているので、今日は寝ようかなって思ってます」


「あー先越された!そっかーでもそれなら仕方ないね…じゃあ咲希借りてくね!」


「どうぞどうぞ、連れてってください」


そこに一応外に出かける格好に着替えた咲希が顔を出す。


「ごめん渚。というわけでちょっと今から出てくる。帰り朝方になると思う」


「分かった。行ってらっしゃい。あとお休み」


「ああ、行ってくる。お休み」


いきなり現れた美船に初詣にさらわれた咲希であった。


□□□□□□


「もーというか咲希またいつもの格好じゃん。この前みたいにお洒落してよお洒落」


車に乗り込んだ咲希にそんなことを言う美船。

実際今日の咲希はいつも通りの格好にダウンジャケット着ただけのまさにいつもの格好である。


「今日に限ってだけは言われたくねえ!いきなり連れ出されて格好に気を使ってる暇あるか!?というか連れ出すなら連絡しろっての!何回言えば分かるんだおい!?初詣行くとか聞いてねえぞ!?」


「もー新年になったら初詣!もう決まってるじゃんかー」


「決まってねえよ!行くにしても12時過ぎてすぐ行きはしなかったよ私は!寝て起きてから行く気だったよ!」


車の中で頭抱える咲希。

もはやいつものことになりつつあるが。


「おい美船。咲希さんに連絡してなかったのか?」


「んーしてなかった!」


「おい!あぁー…すいません咲希さん。こんななら俺から連絡投げとけばよかったですね」


「大丈夫です。もう諦めてます。大人しく連行されるんで…ただ分かってるなら教えて欲しかったですけどね!」


「仕方ないよ咲希。この話言い出したの1時間前だもん」


サラッとそんなことを言い出す美船。


「その時連絡くれよ!まだましだったよ!」


「ふっふっふ…私がそんなことを覚えていると思っているのか!」


「いや連れ去る気があるなら言っといてよ!」


「出る2分くらい前に突然白砂家の2人連れてくって言いだしたんですよねこいつ…俺は初耳だったんですけど、てっきり連絡くらい入れてるもんだと…」


「…すいません。雅彦さん、連絡入れるの無理ですよね。それ。全面的に美船のせいじゃねえかよ!その気があるならはよ言えや!」


「だってぇ!どうせ行くなら咲希たちとも一緒に行きたいなって家出るとこくらいで思ったんだもん!」


大月家から白砂家まで車だと10分かからない。

そりゃ先に連絡なんてできるはずもなかった。

というか仮にそこでしたところで遅い感じしかない。


「行き当たりばったりかよ!勘弁してくれ…」


「でもなんだかんだ来てくれるよね咲希」


「…まあ初詣自体は行く気あったから。ただこんな早いのは想定外だけど」


「じゃあいいよね!」


「よくねえ!いい加減連絡癖つけろや!」


「ええ!そこは流してよぉ!」


「嫌!」


流してはくれなかった咲希であった。


□□□□□□


そのまま車に揺られること数時間。

結構な距離を運転してようやく目的地周辺にたどりついた3名。


「すいません。いっつも足をしてもらって」


「気にしないでください。…それにしても渋滞すごいな」


「ふぁあああ…ねえまだー?そろそろ眠いぃ…」


「お前も多少は気づかいしろよ。というか寝るな。誘った張本人お前やろがい」


「いや流石に大きな神社周辺だけあって人半端じゃないなぁ…もう少しちゃんと予定立てて来るべきだったかもなぁ…」


「毎年みえてるんです?」


「いや、初ですね。普段は近所で済ませちゃうんで。今回は美船が急に行きたい言い出したんで…急遽」


「やっぱりですか」


「ちょ、やっぱりって何さー」


「いやなんかこういうとこに行きたいってやるの美船しかおらんやん。雅彦さんそういうタイプに見えんし」


「あ、分かります?」


「分かります。美船に振り回されてる感じが私と一緒ですもん」


「だってさぁ兄貴も咲希も連れ出さないと家の中か近所しか行かないんだもん!勿体ない!」


「連れてくの俺なんだけどな?」


「まあそこはほら、いつものことじゃん!」


「全く調子いいな…俺はお正月は家でゴロゴロしてたい派なんだけどな…」


「あー分かります。家でぬくぬくゲームですよねぇ」


「ですよねぇ」


「もー2人とも引きこもってないで外出ようよー!せっかく近場に色々あるのにー!」


「車で片道数時間って近いのか…?とにかく駐車場探さないと」


結局駐車場を探して長いこと渋滞の中をさまようことになった3名であった。


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