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看板娘始めました  作者: 暗根
本編
85/177

外面

「さーてパソコンつけるかぁ」


風呂上がって部屋に戻った咲希。

いつもの如くパソコンを付けようとしたところ、隣の部屋から叫び声とバンバンと何かぶったたく音が聞こえた。


「うぃ!?え、何?」


咲希の隣の部屋は渚の部屋しかないので多分渚が何かやっている。

とりあえず渚の部屋の前まで行ってノックしてみた。


「おーい渚。大丈夫、なんか叫び声聞こえたけど」


「え、何、咲希姉?何?」


「いや何じゃないが。むしろ何やってんの」


扉が開いて渚が顔を出した。


「…どうかした?顔死んでるけど」


「えーもうさぁ、聞いてよ」


その言葉を聞いて長くなることを咲希は覚悟した。

こういう感じで始まる時に短く終わった試しが無いからである。


「何、何があった」


「私さぁ、頑張って作ってきた渚ちゃん像が壊れたんだよね」


「…渚ちゃん像何?」


「だからぁ、私は白砂渚でしょ今。それでさぁ、頑張ってさぁ、それっぽく過ごしてきたんだよぉ。なのにさぁ!なのにさぁ!今日で色々剥がれちゃったんだよぉ!どうしよう!」


手を横にパタパタしながらそんなことを言う渚。

どうやら今日の明人との会話を思い出していたらしい。


「いやどうしようって…別にいいんじゃないの?何がいかんのそれ」


「だからぁ!私は今は女の子でしょ?だからぁ!前みたいな言葉遣いはいけないと思うんだよぉ社会的に。なのにさぁ、ちょっと気が抜けちゃってさぁ、前みたいな喋り方とか下ネタとか言っちゃってさぁ。なんか変な誤解いっぱい生んじゃったんだけどどうすればいいんだろう」


「変な誤解ってなんぞ?」


「私がレズ疑惑」


それを聞いてあーって顔になる咲希。

ある種性別の垣根を飛び越えている関係で避けられない疑惑ではある。


「あー…はいはい。まあそうなるわね。中身的に恋愛対象女だし。少なくともだったし」


「今は別に女の子好きじゃ無いけどね」


「まあでも過去の事実的には確かにレズになってもおかしくない」


「あと下ネタが話せるタイプだって思われた」


「それ誤解でも何でもなくないか。事実だろ」


「渚は喋らないの下ネタは」


「いやお前大好きじゃん下ネタ」


「あれはもう過去のもので今は違うんです」


「とっさに出るってことは今も好きじゃん」


「んー…嫌いじゃ無いけどさぁ、やっぱり渚が言うのは良くないと思うんだよ」


「でもどう行動しようがそれが今の渚になるだけではないのか」


「咲希姉、覚えてる?最初。私の部屋の中身さ、最初叫びながら見せたでしょ。これでもかってくらいメルヘンチックなガーリーファッションしか無かった部屋だよ?そんなさぁものがさぁ、大好きな女の子がさぁ、下ネタ大好きレズ女なわけないじゃん!偏見だけど!」


渚の部屋は最初からモノクロを主にした部屋だったわけでは無い。

これは渚が自分の趣味に合わせて部屋をそうしたせいである。


「偏見でしかねえ。いや、いるっしょそういうの」


「でも私の渚ではない」


「いや、元がどうであれ今の渚はまた別もんじゃんね。いいじゃんそれはそれで」


「いやだよ…だって、昔があるのにそれを無視して生きたらさぁ、何か駄目な気がするじゃん」


「それ俺の前で言う?かつての友達だったらしい奴相手に誰って言い放った奴に言う?」


なんか普通に受け入れられたなーと頭の片隅で思う咲希。


「だからこそだよ。正直記憶が一緒なだけでさ、自分が昔の覚えてる自分かも分からないのに…不安にならないの?」


それに対して咲希は顔色一つ変えずに返した。


「全く。だって結局俺は俺だし、見た目変わったけど。考え方が俺なんだもん俺じゃん。意識俺だからもう俺じゃん」


「なるほどー…やっぱり私偶に咲希姉が羨ましくなるよ」


「何がよ」


「自分が自分だって言えることが。私は正直今自分が誰なのか分からないよ。梛なのか渚なのか」


「んー…いやまあ謎だけどそこは。でもいいじゃんどっちもってことで。俺は私でもあるてきな感じでいかんの?」


「正直よく分からないや。私は梛なのか渚なのかいっつもどっちなのか分からないまま生きてるから。私は私なのかもしれないし、私は俺なのかもしれない。考えれば考えるほど分からなくなってくるかな」


「まあそこは自分で結局どう認識するかって問題だから俺はなんともですけど。まあでも外面のお前と中のお前の雰囲気は違うよね。前からだけど」


「私はさ、もう渚なんだよ外面は。最初から話を合わせるためにずっと嘘ついてるし、だから今更それを変える気にもならないし、変えるのも怖いよ。だからなのかな。最近内面の自分が自分なのか、外の渚が自分なのかほんとに分からなくなる」


「そりゃ中身がお前ちゃうん」


「そうだよね。うん、そうだよね…ああでも、やっぱり渚は下ネタも言わないし、女の子としか恋愛ができない子ではないと思うんだよね…ああぁあぁあ!」


そこまで話して急にまた悶えて叫びだす渚。

唐突である。


「ちょ、叫ぶなうるせえ!距離!距離考えて!」


「だってさぁ!嘘までついて作って来たんだよ外面!なのにさぁ!気が抜けて内面が出てきやがったせいでさぁ!全部台無しだよ!もおおぉおお!」


「いいじゃん素で付き合えば解決するじゃん丁度いいし」


「もうお気楽だな咲希姉は!人間関係はこの後もずっと続いていくのに、この失敗は許されないよ!」


「そりゃあ、そんなとこで変な気張りかたしたくないもん俺。嘘つきまくって外面作るのしんどくね?」


「やってる時は大丈夫だよ。ただ、一人になった時に正直しんどくなることはあるかな。ま、今では若干後悔してるよ。もう遅いけど」


「…まあ、そうやって思ってんなら突っ込まないけどこれ以上。余計なアドバイス入れて変になられても困るし。ただ、うるさいから静かに悶えて」


「分かった。静かに悶える。聞いてくれてありがとう。お休み」


「お休み。悶えるのもいいがちゃんと寝ろよ」


「今言ってすっきりしたから寝れそう。それじゃまた明日」


「また明日。お休み」


「お休み」


そう言って渚は扉を閉めた。



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― 新着の感想 ―
[一言] 元の住所は覚えてるのかな?戸籍などどうなってるのか見に行ったらどう思うのかなぁ?
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