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看板娘始めました  作者: 暗根
本編
83/177

似た者

「あ、やべっ。ごめん渚、この後予定あるから俺はそろそろこの辺で」


「あ、そうなんだ。分かった。またね」


「ああ、またな渚」


「うんまたね」


そう言って明人を見送ると、スマホを取り出して現在時刻を確認する渚。


「あ、丁度いい感じに映画が終わりそう。私もそろそろ移動しよっかな」


というわけで映画館の方に戻ろうとする渚。


「あれ?神谷君だよね」


映画館への道のりを歩いていると、少し離れたところに先ほど別れたはずの明人を見かけてそう呟く渚。


「あっちには映画館しか無いけど…んー私が知らないだけで何かあるのかな」


まあいっかと思いながら、とにかく映画館の方へと向かう。


「んーなんだか眼前にずっと神谷君がいるから、ストーカーしてるみたいでなんかやだな」


先ほど半ストーキングされていたとは知る由もない。


「かといってなぁ、抜かすのもなんか違うよなぁ…」


また顔を合わせたときに何故映画館に向かっているのか聞かれるとめんどくさそうだったので、抜かさないまま目的地へと向かう。


「んー…?おっかしいなぁ。神谷君がずっと前にいるなぁ。映画館、もうそこなんだけどなぁ」


そんなことをしながら歩いていたら、結局映画館前まで明人が眼前にいる状況のままである。

そのまま結局明人も映画館の中へと入って行った。


「あれ、もしかして…本当に本当に実は何か待ち合わせをしていたとか?」


明人を目で追いながら、存在ばれしたくないので反対の方へと向かう渚。


「あーまあでもなんか男の子の友達と来るとかなんとか言ってたようなそんなような話をさっきしたような気がするなぁ。今日だったんだ。わざわざ早く来てマメだなぁ神谷君」


そこでスマホを取り出して、メッセージを確認する渚。

まだ稜子からはメッセージは来ていない。


「あー…さっき言われたばっかだけどスマホ見るの癖なんだよなぁ。特に暇な時とか。うーん…でもなぁ、ナンパはされたくないなぁもう。どうやって暇つぶせばいいんだろう」


先ほどのナンパは結構怖かったのでもう御免である。

と、そこに稜子から通知が届いた。


『渚渚。映画終わった。というかもう終わる。次どこ』


『次は、ご飯かな。場所とかは考えてないだろうからちょっと探してきたよ』


そう送り返して、先ほど探してきた店のリンクをいくつか貼る渚。


『ありがと渚。どれか行ってみる』


『うんうん。頑張って。私は後ろで見守ってるから』


というわけでスマホから目を離して、映画館の入場口の方を見る渚。

ほどなくして稜子と啓介の両名が出てくるのが見えた。

そんな2人を目で追いながら、ほどよい距離感で後ろをついていく渚。

そこで一瞬周りを見渡して明人の姿を探す。

何故か右前あたりにまたもや明人がいた。


「私、神谷君のストーカーをしてるわけじゃないんだよね?」


とりあえず明人のことは置いておいて、2人のことを追おうと決める渚。

が、そうやって2人を追っていても、何故か明人が右前からいなくならない。


「なんで!?あれぇ?私は神谷君のストーカーしたいわけじゃないんですぅ。ほんとにストーカーしたいわけじゃないんです神様。なんでですかねぇ?」


明人のことは置いておくつもりだったが、流石にこうも視界の端に常にいるせいで、気になって仕方がない渚。

そろそろ正面の2人を追うどころじゃなくなってきた。


「どっかいってくれないかなぁ…ポジションが最悪だよ。あーというか2人どうなってるんだろう」


正面の2人は先ほど渚が提案した店ではない方へと明らかに向かっている。


「あれ、おかしいな。さっき私が教えてあげた方じゃ無いぞ?啓介君ちゃんと考えてきてたの?やるなぁ…」


そのまま2人は渚が提案したのではない店の中へと吸い込まれていった。

一方で右前方にずっといた明人は、店の前に立ちながら中をチラ見している。

正直相当怪しい。


「怪しいよ神谷君!あれは何してるの?え?本当に何してるの?」


店に入るつもりでいたのだが、そんな明人を見てしまってはどう接近していい物かという感じの渚。


「んーとりあえず、映画館じゃない方からお店に近づいて、さりげなーく挨拶して中に入ろう」


余計な詮索をされないようにわざわざ来る方向を変える渚。

そのまま店の前までやってくる。


「あれさっきぶりだね神谷君」


「うおわっ!?え、渚?」


「奇遇だね」


「そ、そうだな。奇遇だな」


「何してるの、お店はいらないの?」


「ん、あー…迷ってたとこ」


「あ、そうなんだ。私は喉が渇いてたからお店探してたんだよね」


「あ、そうなのか。ん、というか店探しはもういいのか?」


「とりあえず休憩かな。というわけで私は入ろっかな」


「えっ!あ、じゃ、じゃあ俺も一緒に入っていいか?」


その言葉を聞いた明人が何故か慌てた様子でそういう。


「えっ…?んーいいけど」


なんでそこで一緒に入るのかという感じで心の中でつぶやく渚。

想定外であった。

顔には出ていないが。

そのまま中に入って席に着く。

稜子と啓介も少し離れたところにいた。

そんなところで、通知音が渚のスマホに届いた。


『渚!何話したらいいか分かんない!』


「ごめん神谷君、ちょっと咲希姉から連絡来たらちょっと返してもいい?」


「ん、気にしないでくれ。あ、というか俺も連絡来たから返すわ」


「了解」


『さっき映画見たんでしょ。映画の話でも振りなよ』


『あ、あんまり覚えてない…』


『ああ、じゃあどのシーンが好きだったとか聞いてみれば?』


『分かったそうする』


そのまま横目で2人の様子を確認する渚。

稜子と啓介が同時に何かを言おうとしてお互いにどうぞどうぞしていた。

その様子を見て無言で机をたたく渚。

軽くではあるが。


「…渚?どうした?」


「え!あ!えへへ、ちょっと面白かったからつい」


「そ、そうか」


内心なんだあのカップル!とか思ってる渚。

だが口では言えない。

スマホをもう一度見る。


『ダメ!余計会話止まった!』


『じゃあメニュー表を見て、どういうものが好きとか嫌いとかそういう話したら?』


『分かった』


ちらと横を見ると、これまた何故か同タイミングでメニュー表に手を伸ばす2名。

渚は頭に疑問符を飛ばしていた。

もしやこれ下手にアドバイスしない方がいいのではと思い始めている渚である。

そのまま明人の方に目をやる渚。

明人はスマホを見ているわけでもなければ渚を見ているわけでもなかった。

ただ、明らかに視線の端で稜子と啓介の方を捉えていた。


「何見てるの?」


「…いやぁ、なんだろうな…」


「何か面白いものでもあった?」


「…あっいやそういうわけじゃない、けど」


「そっかぁ。成程?まあいいや」


そう言ってスマホにもう一度目を戻す渚。

メッセージは無い。

仕方ないので2人の方を見る渚。

なんかぎこちない感じだが、会話しているように見える。


「はぁー…」


「どうしたのため息なんかついて」


「ああいや、ちょっとほっとしたというかなんというか」


「ほっとした?何が?」


「見ていてもどかしいことが解決したんだ今」


「成程?」


そのままメニュー表に目を落とす渚。


「そういえば、神谷君は何頼むの?」


「ん…考えてなかった」


「私はこの紅茶を頼もっかなって思ってるけど」


「んーごめんちょっとメニュー貸してもらっていいか」


「いいよ。はい」


「…なんか疲れた。甘いの飲むか…」


「大丈夫?何があったの?話なら聞くけど」


「…見てるだけでどうにもできないことがね。ちょっとあってね」


「はぁ…」


「俺に何かあったわけじゃ無いんだけどさ。…俺は何をやっているのだろうかと」


「あぁーなんか分かるかもしれない。私たちにはどうにもできないのに、頑張らないといけないと思うことってあるんだよね。何にもできないのに」


「渚もあるのか?」


「まあそれなりには?」


「そうか…カフェオレでも頼むかな」


「じゃあ店員さん呼ぶよ」


「ああ」


そうしてしばらく飲みながら、隣の2人をチラ見しつつ、明人と会話する渚。

明人はどこか疲れた雰囲気を醸し出しながら、渚と会話していた。


「…じれってぇ」


「どうしたの?」


「…いやなかなか進まないなと」


「カフェオレが?飲み切れないの?」


「…あっいやそういうわけじゃない。飲む飲めるから」


「え、ああ、そうなんだ」


「そういえば、渚はさっきからちらちらどこ見てんの?」


「え、あー…そのーさ、あっちに稜子ちゃんと啓介君がいるよなーって」


「…あーほんとだなー」


「でしょー?あれってデートなのかな」


「さー…どうだろうなー」


物凄く棒読みな明人。


「あの2人見てるとさぁ。なんかもどかしいんだよね」


「…分かる」


「神谷君ってこの後時間ある?」


「一応あるけど?」


「あの2人の様子、ちょっと見て行かない?」


「…人様のデート見るのはどうかなと」


「まあ確かにそれもそっか」


「ただ、まあ、たまたま行く先被ってるなら仕方ないんじゃないかな」


「それもそうだね」


「たまたま偶然2人でいるとこ見かけて、偶々行った先にいる2人を見かける分には問題ないよな」


「問題ないとは思うけど凄い気にするね」


「それはまあ、ほら、建前って言うものがだな」


「あまりにも全部言っちゃうともう建前の意味ないと思うよ?」


「まあ、渚も同じことしようとしてるようだし。いいだろ」


「それを言われたらまあ…言い返せないけど」


そこで開き直ったように明人が言い放った。


「まあ、今更なんだけど。今日やってたことだし」


「え」


「いや、啓介に頼まれて…」


「えぇえええ!?」


「ちょ、渚声でかい!」


「ごめん」


「いやいいけど。稜子にばれるとまずいから…」


「あ、あのさ。神谷君。わ、私もさ、稜子ちゃんに頼まれてさ、今日一日中後ろで見守る係してるんだよね」


「はい!?」


「神谷君声が大きい!」


「あ、すまん」


「う、うん。大丈夫だと思う」


「え…えぇ…?渚も…?」


「うん。そうなんだ」


「…あのさ、さっきメッセージ返してたの」


「うん、咲希姉じゃなくて、稜子ちゃん」


「…だよね。だから同じようなタイミングで似たような行動を…」


「あぁ、そういうことだったんだ。なんかおかしいなって思ったんだよ」


「…あっ、ということは今日やたら渚を見かけたのは…」


「私が神谷君をずっと目の前に捉えてたのも…」


「…追ってる対象が一緒なんだもんな。そりゃ会うよな」


「会わないわけないよね。ていうかさ、つまりさ、あの2人って両思いだよね」


「…だよなぁ」


「「はぁあああ…」」


深いため息を同時に吐く2人であった。


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[一言] ネタバラシ、本人達の居ぬ場所で(笑)
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